8月4日
ファンの風に乗って香ってくる、甘い香りに酔いながら、
あの頃の面影が残る、その横顔を眺めていると、
ふとあの時の思い出が蘇る。
今思うと、少し照れくさくて、恥ずかしい思い出。
懐かしい顔ぶれに紛れて、名前だけは忘れられなかった人と、数十年ぶりの再会。
顔は覚えていなかったのに、少し言葉を交わしただけで、あなただと分かった。
「ホント、あの頃は馬鹿なことばっかりやってたよね。」
あなたは笑う。
そう、あの時、あなたの前だとつい馬鹿なことばっかりやってまった。
どうでもいいことで強がったり、なんでもないことで怒ったりもした。
あなたの気を引きたくて、何でもいいから話をしたくて、
いつもそれとなく、あなたが私を見ているか、探していた様な気がする。
「ホント、あの頃から全然変わらないよね。」
あなたは笑う。
そんなことはないよ。俺はきっと変わったよ。
ただ、ちょっと心が昔に戻っただけ。
どんなに時間が過ぎていても、まるで昨日も会っていた様な感覚になってしまうこと。
きっとこれが、人を好きになるということなんだと思った。
「私は歳をとっちゃったよー」
あなたは笑う。
・・・俺、同級生なんですけど?
でも、あなたが自分の子供の話をしている時の優しい表情を見ていると、
確かにすごく時間が流れてしまった気がするよ。
外は凄く暑かった。
今日がアイツの命日でなければ、どんなにもいい日だったろうね。