第2撃 私たちの日常!?(後編)
気がついたら私は車の中にいた。
さっき見たリムジンの中なのだろう。
車内はすごく広くて、いい匂いがする。
そう、さっき食べたクレープのような……
「ってお前らあああぁぁぁ!」
「あれミナ、目覚めたんだな!良かったーー」
「本当心配したよー顔面からコンクリートに激突したからね」
「お前らクレープ貪りながらよくそんなこと言えるな」
「あ、これ?なんかさっき黒ずくめの人が持ってきてくれたんだよ!これはシナモンアップルだよ!」
「メグ…だから太るよ」
「だまれえぇぇ!」
「とにかく2人に怪我とかなくてなによりだよ。でもさ、クレープに毒とか睡眠薬とか盛られる可能性を考えなかったのかね君たちは?」
「「……」」
「…呆れたよまったく」
「ていうかミナって本当にトンファー持ち歩いてたのね」
「護身用に一応ね」
「なんであれ投げちゃったんだよ。投げなければミナだけでも逃げ切れたんじゃないのか?」
「いや私あの時脚掴まれてたからさ…ていうか投げたけど当たらなかったんでしょ?」
「いやちゃんと命中して3人とも気絶してたよ」
「あれって近くでみると人間って分かるけど遠くからだとなんかロボットにも見えるよなあ」
「あ、それ分かる。でもさ、なんで捕まっちゃったのよ」
「ミナが心配で様子見に近寄ったら捕まっちゃった」
「僕は止めようとしたんだけどね。2人が捕まったのを見てミナの真似してトンファー振り回してみたけど捕まっちゃったんだ」
「ほうほう。で、トンファーは?」
「なんか…割れちゃった」
「嘘でしょ」
「お茶目な僕を許して」
「3日くらい考えさせてくれ」
…これからどうやって身を守ればいいんだろうか。不安だ。
「…離して!離してよ!!」
リムジンのドアが開き、マリが車内に押し込まれた。
「マリ捕まったのね」
「最後の希望だったのにな」
「いやこれ鬼ごっこじゃないから。制限時間内に1人でも逃げ切れたら勝ちとかじゃないから」
「マリ…せっかく逃がしてあげたのに」
「いや、ミナごめん…さすがに敵が多くて逃げきれなかったの」
まあ、あの人数いたら仕方ないか。
それより私たちはこれからどうなるのだろうか?
リムジンが走り出して、窓から見える景色がどんどん変わっていく。
普通誘拐するときって景色とか見せないものじゃないのか…?これなら、自力で家に帰ることだって出来るし。
リムジンは10分程度である施設の前に着き、停まった。
ここ、国の命令で数ヶ月前に建てられたけど、用途は未だに公開されてないっていう謎の施設だった気がする。
「とりあえずお入りください」
黒ずくめの男に言われた。この人頭にたんこぶ出来てるけど、大方私のせいなんだろう。
「失礼します」
モカが先頭に立ってドアを開けた。
ドアを開けると、そこには白衣を身にまとった長身の男性がいた。
「君たちか!君たちが僕の理想としていた人材なんだね!いやあすごく会いたかったよ!!」
そう言いながら私の肩をバンバン叩いてくる。なんで私ばっかり、みんな平等に叩けばいいのに。
正直、男性は苦手だ。こいつは超がつくほどフレンドリーだが、男性であるがゆえにウザいとしか思えない。
「とりあえず上がって!お菓子を用意してあるから!」
「えっマジお菓子!?ちょっ、ミナ早く早く!」
「メグ…もう太れ貴様ぁ!」
「で、僕たちを誘拐した理由ってなんなんですか?」
メグがお菓子を物色しながら聞く。私知ってるぞ。絶対しょっぱいお菓子探してるんだろう。
残念だったなあ、私は全部のお菓子をすでに把握済みだが、しょっぱいお菓子はなかったぞ。
あってもおしゃぶり昆布くらいだ。せめてそれでも食って…
「なっ!?」
「いやーマイソルト持ってきておいて本当良かったよ。お前さ、名前知らないけども人にお菓子出すなら甘いのとしょっぱいのは7:3が黄金比率だから覚えとけよなこの七三分け」
えっ何この子馬鹿なの?何でもありなの何マイソルトって。
「これは七三分けじゃないんだよ、でも前髪長くするとそう見えるのかね」
「いやどうみても七三分けですけど」
マリ、ナイスツッコミだ。もう私ツッコミ疲れたから代わってもらってもいいかな。
「とりあえず誘拐された理由を教えてもらえますかね?」
モカ、さすがは私たちのまとめ役だ。すごく頼りになる。私も知りたかったけどこの男と話すのが嫌で黙ってたんだよ。
「誘拐…か。手荒な真似をしてしまって申し訳なかった。これから先は君たちに危害を加えることはないから安心してくれ」
「まあびっくりはしたけど、僕たち別に怪我とかしてないからね」
お前は私のトンファーぶっ壊したけどな。
「これから君たちにはゲームをしてもらいたいんだ。敵を倒してレベルを上げるみたいな、よくあるやつ」
「それってミナとメグ得意だよね?」
「もちろん!僕にとってミナはゲーム内の相棒だからね」
「激しく同意」
「でもこれは、ただのゲームじゃないんだよね」
「…というと?」
「宇宙からの侵略があるかもしれないってニュースが発表されてるはずなんだが」
「見たことありますね」
モカ、情報が早いな。それって今日のお昼…学校が終わったときに出たニュースで、まだ3時間くらいしかたってない。
しかも世論的にはデマ説が有力で、殆ど信用されてないけど。
「可能性はすごく低いんだ。でも、いざという時のために対策は練りたい。その時、どんな人材が入るか分からないだろう」
「なるほど、だから女子高生が対象なんですね。」
「女子高生って戦闘力としてのレベルは低いよね。あなたは私たちのこと理想の人材って言った。つまりあなたは」
「メグ!マリの口にお菓子詰めて!」
「了解!」
「なっ!?ミナ、助け…ふごっ!」
なんだ…言わせておけばいいのに。こいつマジウザい。ニヤニヤしやがって。なにが楽しいんだ?
「とりあえず研究室に案内するよ」
「私たちを実験台にするために…ふごっ!」
「確かにデータはとるけど、君たちに危害を加えることはないから安心して」
奴と目があったが、すぐに逸らす。ああ、早く帰りたいな。