表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

おにぎりが幼女になっていた

 同じ境遇の仲間がいた。

 なんて心強いのだろうか。

 いや、そうじゃない。彼女は困ってるはずだ。

 現状を聞かないと。

 チラッと店長を見る。俺たちの会話は聞いてなさそうだ。

 聞き耳は立ててるかもしれないから、ちょっとトーンは下げる。


「えっと、食事は?」

『全然食べられないです。凄い純粋な眼差しでこっちを見るんです』


 若干泣きそうな声をしている。

 気持ちは分かる。凄い分かる。


「ご飯はいつ食べた?」

『昨日の夜食です……朝には食べ物が全部女の子になってたので』

「ちなみに何を食べたんだ?」

『コンビニで買った、ネギ塩豚カルビ弁当です……』


 予想以上に重いの食ってるな。

 夜中にそんなの食べると太るぞ。

 いや、今はそんな事を言っている場合じゃない。


「とにかくバイトが終ったら、こっちから連絡するから」

『わ、分かりました』


 ついでにインスタントラーメンについても教えておく

 空腹が満たされる程ではないが、無いよりはマシだ。

 あと、絶対にバラバラにしてから食べないように言っておく。

 インスタントラーメンの麺を砕いたら、別の駄菓子になっちゃうからな。

 それはそれで幼女化しそうだ。




 電話を切る。

 いやぁ、流香ちゃんがねぇ。

 俺も中々しんどいが、彼女の方が大変だろう。

 まぁでも申し訳ないが、自分1人の問題じゃないと知ってホッとしてる一面もある。


「あ、電話終わったかい?」

「はい」


 あぁ、店長に聞かれちゃったかな。

 いやこの顔は違う。面白い事を聞いたって顔だ。


「何? これからデート?」

「いや違いますけど、何でですか?」

「後で連絡するとか言ってたし」

「そんな度胸、俺に無いですよ」


 面倒臭いので適当にあしらう。

 そろそろ休憩も終わるし、店内に逃げよう。

 なんか最近お見合いで失敗したらしく、何かと面倒臭いし。




「じゃあ、よろしくねー」

「はーい」


 レジのおばちゃんと交代する。

 この時間はお客さんもそんなに来ないので、レジの人が休憩に入る。

 その間に俺はしばらくレジ番をしている訳だ。


 普段はレジの裏にあるタバコの補充をするが、もう終わってるな。

 今日は比較的お客さんが少なかったし、おばちゃんたちがもう終わらせたのだろう。

 レジの金額が合ってるかの計算もやったらしいし、レジ袋もあんまり減ってないし。

 うーんどうしよう。暇だなぁ。

 まぁ良い事なんだけど。


「きゃはははは」

「うひゃひゃひゃひゃ」


 何か変な客が来た。2人で来た。

 いや客じゃねぇ、幼女だ。

 完全に酔っぱらっている。


「おう兄ちゃん、元気しとるかー」

「何だこのおっさん……」


 若干古風な服装をしている幼女が、俺にハァーっと息を吹きかけた。

 くっせぇ。酒くせぇ。

 幼女なのかこいつ。


「あーらお兄さん。私たちとお話しませーん?」

「いや、ほんと勘弁してください」

「ふーん。硬いのねぇ。アッチの方もかしら」

「ぎゃーっはっはっは」

「うひゃーーっひゃひゃ」


 そう言った方の幼女は、やや甘い臭いがした。

 完全に奇声を上げてるが。

 何だこれ、凄い面倒臭い。

 2人の幼女は笑い声をあげながら、アイスコーナーにちょっかいをかけに行った。

 やめてやれよ、あそこの連中はそういうの慣れてないんだから。


「大丈夫でした?」

「ん? あぁ、もっと厄介な客もいっぱいいるしな。へーきへーき」


 レジからぴょこっと他の幼女が顔を出した。

 この子誰だろう。


「あたし、カルパスなのよん」

「そりゃどうも。店員です。あの2人は?」

「粕漬けちゃんと、ウィスキーボンボンちゃんなの」

「あぁ……」


 なるほど、両方お酒を多めに使った料理なのか。

 彼女たちも大変だなぁ。


「お兄ちゃん、誰が誰なのか分からないのん?」

「そうなんですよ、困ったもので」

「皆が皆、特徴あるよん! ゆっくり観察するといいよん!」


 そういうと、カルパスの幼女がどこかへ走って行った。

 皆が皆、特徴がある?

 そうなのかな。ちょっと観察してみるか。


 見回す感じでは、前々分からない。

 しかし、よくよく見ると幼女ごとになんだか髪型が似通ってる気がする。

 例えばあの一団。皆ピッグテールというのだろうか。

 ツインテールの短い版みたいな髪型をしている。

 ただ、それぞれ長さや色、髪飾りなんかに違いを感じる。


 そしてこっちの団体。

 長さに差異はあるが、皆前髪パッツンだ。

 もしかして、彼女たちは共通の何かがあるのか?


「ちょっと、君こっち来て来て」

「ん?」

「そうそう君君」

「なにー?」


 前髪パッツングループの1人を呼び寄せた。

 赤い髪留めをしている。


「君、何の食べ物?」

「おにぎりー! 梅干しだよ!」


 彼女はカジュアルなシャツを着ていたが、確かに洋服のデザインが若干和風だ。

 髪留めが赤いのも、梅干しだからだろうか。


「じゃあさ、あそこにいる子は皆おにぎり?」

「そうだよー!」


 おぉ、分かった!

 これは大きな進歩だ。

 幼女ごとに確かに特徴がある。

 前髪ぱっつんはおにぎり。

 じゃああっちのピッグテイル? の団体は何だろう。


「じゃあさ、あの子達は誰?」

「さんどいっち!」


 サンドイッチがピッグテイルなのか。

 あれ、じゃああっちにいるツインテールは何だ?


「あの子は?」

「食パンちゃんだよ」

「おぉ」


 凄い、点と点が線になっていく。

 食パンはツインテール。そしてサンドイッチはピッグテールなのか。

 短めのツインテールという子もいるが。

 そして何故彼女たちの髪型は短いのか。


 憶測だが、もしかしたらパンの耳が関係するのではないだろうか。

 この店で売っているサンドイッチは、パンの耳が切り取られている。

 そして、食パンにはパンの耳がある。

 だからパンの耳が切り取られると、彼女たちの髪も短くなるのか。


 彼女たちの団体にいる、やや別の髪型の子達。

 あれは、コッペパンを使ったパン料理の幼女なのだろう。

 焼きそばパンや、卵ロールと言った辺りだ。

 ほうほう、なんか凄い良い事に気づけた気がする。


「ありがとう、梅干しちゃん」

「いえいえー」


 言われてみれば、簡単な事だったな。

 ただ、それぞれに結構な個性があるので気づくのに遅れてしまった。


「じゃあ、皆とお話してくるー」

「おう、悪かったな」

「ばいばーい」


 手を振る梅干しおにぎり幼女に手を振り返す。

 これは、店中の幼女たちの特徴をメモして行った方が良いかもしれない。

 とりあえずおにぎり集団の様子を見る。


「ただいまー」

「お帰りー梅干しちゃん」

「あのお兄ちゃんに、髪型の事聞かれちゃったよー」

「おーナンパ?」


 梅干し幼女が顔を赤らめる。

 違うけど、まぁ訂正しに行くのも面倒臭い。


「でも髪型かー」

「そろそろイメチェンってのするのいいかもねー」

「いめちぇん?」

「髪型変えるのー」

「おー」

「よーし、変えよー!」


 幼女たちが髪型を変える話で盛り上がり始めた。

 ちなみに、今の髪型は既に今月に入ってから2回髪型を変えた後らしい。

 俺はそっと考えるのを止めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ