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イチゴが幼女になっていた

「おはようございまーす」

「おう、今日はありがとね」

「いえいえ」


 スタッフルームに入ると、店長がいた。

 ありがとうと言っているのは、俺が代わりのシフトに入った事に対してだろう。

 しかし、この時間帯はほとんど入った事無いんだよなぁ。


「今日はレジを見つつ、とりあえずドリンクの補充をよろしく」

「はい、分かりました」


 良かった、ドリンクの補充だ。

 ドリンクは朝見た通り、幼女化しない。

 陳列の際に幼女になられていると、凄い困る。

 実際どうなるか分からないが。




 店内に戻ると、人がさっきより多かった。

 いや、幼女も多いが単純に客が増えていた。

 時間は昼頃。

 この辺りの事務所に勤めている人達が、お弁当や飲み物を買いに来る時間帯だ。

 とりあえずレジを捌く。

 ドリンクの補充はそれからだ。


「いらっしゃいませー。袋はお使いになられますか?」

「ん? あぁお願いします」

「ポイントカードは……」

「ほい」

「あ、ありがとうございまーす」


 今日最初の客は女性だった。

 服装からしてOLさんだろう。


 さて、問題はここからだ。

 目の前にペットボトルはある。

 それはピッと処理する。

 やり慣れた作業だ。


 問題はお前らだ幼女たちよ。

 俺の目の前に、2人の幼女がいる。

 正直、何の料理なのか皆目検討もつかない。

 そして今から俺は、彼女たちのバーコードを通さなければならない。

 幼女のバーコード。どこにあるんだよ!


「むぅ……」

「どうしました?」

「いえすいません、実はまだ慣れてないもので」


 いや、スーパー勤務自体は慣れてるよ?

 研修期間なんていつ受けたっけぐらい経ったよ?

 でもさ、幼女のバーコードなんて慣れてる訳ないじゃない?

 ええい、恥はかき捨てる。いっそ聞こう。


「……おいお前ら、バーコードどこにあるんだ?」

「バーコードってなにー?」

「あれだよ、怪我した時に貼る奴」

「あーなるほどー」


 それは絆創膏だろうアホどもめ。

 くそ、幼女どもに頼った俺が馬鹿だった。

 ええい、幼女だと思って触るのを止めていたけどこの際仕方ない。

 全身触らせて貰う!


「きゃー!」

「えっちー」

「や、優しくしてね……」


 あった! こっちのショートヘアは顎の下!

 んでこっちの短いツインテールはうなじだ!


「〇〇〇円になりまーす」


 ふぅ……良かった。

 おっと危ない、レジ袋を付けないと。

 ……レジ袋のサイズ何だ?

 いや、確か電車の中の幼女はちゃんと収納されていた。

 普通のサイズでいいだろ。


「ありがとうございましたー」


 疲れた……。

 これが後何時間も続くのか……。





「いらっしゃいませー」


 4人目のレジを打つ時だった。

 俺は違和感に気づいた。


(あれ、このおばさんの買った物。幼女になってない……?)


 ご婦人が買おうとしていたのは、野菜や肉、魚類。それと牛乳だった。

 いわゆる調理前の素材だ。

 これらは、幼女になっていない……?


(そうか!)


 もしかして、幼女化には法則がある?

 食べる物でも、幼女になるのとならないのがいる。

 ならば調べれば、幼女化しない食べ物も見つかるんじゃないのか?

 いざ調査だ。




 昼の波が去った。

 ドリンクを陳列しつつ、店内の様子を見る。

 店内はどこもかしこも幼女だらけだ。

 しかし、どうやら幼女は大人しく1つの場所に留まったりはしないらしい。

 これが俺を混乱させていた。


 例えばカップラーメン売り場。

 ここは幼女たちのおままごとの場になっていた。

 しかし、ここにはカップラーメンの幼女はいない。


 次に魚売り場。

 ここにも「おさかなさーん」とか言ってる幼女はいるが、これも魚幼女じゃない。

 しかし魚幼女がいない訳ではない。

 刺身幼女や、天ぷら幼女等はいるようだ。

 魚売り場の隣の惣菜コーナーで、天ぷら同士で雑談してたし。


「ねーねー、君も天ぷらなのー?」

「そうだよー」

「わーい」

「あたしアジの天ぷらだよー」

「ふーん、私はカラフトシシャモだよ!」


 からふと?

 普通のししゃもじゃないのか?


「あたし知ってるー! ほんとはカペリンって違う魚なんでしょー」

「ち、違うもん! カペリンだけど、カラフトシシャモって表記してもいいんだもん!」

「ずるーい!」

「それにカペリンって名前可愛いじゃん!」

「あ、確かにー」


 ……こいつら、頭いいのかアホなのかどっちなんだ。

 ま、まぁ。とにかくある仮説が生まれた。

 『すぐに食べられる食べ物は幼女になる』というものだ。

 

 分かりやすい例は果物か。

 果物は、大体がそのままでは食べる事が出来ない。

 リンゴやバナナは剥かなければならない。

 スイカやメロンは切らなければならない。

 これらは野菜という意見もあるが一旦置いておこう。


 しかし、果物が全て幼女になっていない訳ではない。例外もいるらしい。

 イチゴやブルーベリーなんかは、容器から出して洗えばすぐに食べられる。

 現にイチゴ幼女やブルーベリー幼女はそこいらを走り回っている。


 ドリンクの陳列を進めつつ、段ボールを処理する。

 ……イチゴ幼女って、イチゴパンツなのかな?

 ちょっと確かめてみよう。


「おーい、そこのお前。ちょっと来い」

「あたし?」

「そうそう」

「やだぁー! えっちな事をする気でしょ!」

「おう、そうだよ」


 イチゴ幼女がこっちに来た。

 素直な奴だ。

 ちょっと失礼。


「あー! いい大人がイチゴちゃんのパンツめくったー!」

「セクハラだー!」

「はんざいしゃー!」


 何と言われようと構わん。

 ちなみに、イチゴ幼女のパンツは緑色だった。

 これ多分アレだ。ヘタの部分だ。

 なんか妙に納得が行ってしまって、それはそれで悔しい。




「さてと……」


 ドリンクの陳列が終わった。

 だが、俺の前に新たなる問題が生まれていた。


 ドリンクの陳列は、単純に飲み物だけではない。

 同系列という事で、プリンやケーキ類も陳列を任される。

 ……こいつら誰が誰だか分からねえ!

 というか、幼女の陳列って何だよ!

 やったことねぇよ!

 これどうしよう。


「幼女ども、ちょっと来い」

「はぁーい!」

「お前ら、1人ずつ名前言ってけ」

「えー」

「私たちの区別がつかないのー?」

「ひっどーい!」

「ろりこんのくせにー!」


 ロリコンでは無いわ!

 ……こほん。怒っても仕方ない。

 俺は業務を全うするだけだ。

 というか、こいつら幼女なんだよな?

 人間の言葉が分かるとしたら……。


「そうだ。お前ら、自分で自分の陳列場所に入れ」

「え? いいの?」

「おう、当たり前だ」


 幼女はわーいと各々自分の落ち着く場所に移動して行った。

 もしかして、幼女の陳列って凄い楽なのか!?

 だとしたら凄い得したかも!

 作業効率凄い上がるぞ!




 なおこの後、陳列が滅茶苦茶だと店長に怒られた。

 やはり幼女を信じた俺が馬鹿だった。

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