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異国の食べ物も幼女になる


 肉は少し食べられた。

 しかし満腹というには程遠い。

 お腹に感じる空腹感を、麦茶で誤魔化す。


 豚しゃぶちゃんは、常温である程度冷めるのを待ってからそっと冷蔵庫にしまわれた。

 所詮は出汁の入った鍋と肉と豚しゃぶ用のタレだ。

 ぐつぐつ煮えたぎった鍋を冷やしてしまえば、豚しゃぶは食べ物ではなくなり、幼女に戻るのではないだろうか。

 そういう推理でやってみてはいるが自信はない。

 だが、一度幼女化してしまった物を冷やせば元に戻るかという検証にはちょうどいい。


 その間に、流香ちゃんは別の料理を始めた。

 卵焼きを作ってみているらしいが、はてさて。

 普通の卵焼き幼女が出来るだけな気がするが。


「きゃあっ!」

「ど、どうした!」


 キッチンに向かったら、幼女がいた。

 うん、卵焼き幼女だな。

 失敗してしまったんだろう。

 黄色いTシャツを着ている。


「塩と砂糖を間違えて作ってみたんですけど……」

「あぁ……」


 卵焼きは塩も砂糖も行けるからな。

 どっちでも成功判定になっちゃったんだろう。


「普段は砂糖で作ってるんですけど、これでもかってぐらい塩を入れてもダメでした」

「塩っからいぜー!」

「良く見たら背中にCEOの文字が入ってるな」


 結構CEOの文字が黒く太く書かれている。

 相当多くの塩を入れたんだろう。

 なのに料理判定されてしまった。

 幼女化しないあの定食屋は、どんだけマズいんだ。


 その時、流香ちゃんの家の電話が鳴り始めた。

 パタパタと電話を取りに行く流香ちゃん。

 「お母さん? 大丈夫なの?」みたいな声が聞こえて来るので、相手はすぐ分かった。


 卵焼き幼女をどうすっかなーと考えていると、ふとある物に目が止まった。

 冷蔵庫だ。普通の冷蔵庫の他に、もう1つ小さめの冷蔵庫がある。

 こんな端っこになんで。

 何か入ってるんだろうか。

 ガバッと開けてみる。


「っ!?」

「うわ、すまん!」


 中で幼女が着替えてた。

 金髪でいかにも洋ロリと言った感じの幼女が、もそもそと着替えていた。

 前は見えなかったが、背中の白さが半端なかった。


 少し待ってから冷蔵庫のドアをノックする。

 控えめなノックが帰って来た。

 ガチャリと開けると、非常に蒼く透き通った目の幼女がこちらをじっと見ていた。


「ごめんな、まさか着替え中とは思わなくて」


 幼女はちょっと不思議そうな顔をしていたが、なんとなく俺が謝っている事は分かるらしい。

 大丈夫大丈夫みたいなジェスチャーをしている。


「で、君は何の食べ物なんだ?」

「……?」


 また不思議そうな顔をされてしまった。

 食べ物じゃないってことはないと思うんだが。

 いや、まさか流香ちゃんが監禁してるとかは無いと思うんだが。


「先輩、お母さんあと2,3日ぐらいで退院できるそうです」

「おぉ、良かったな」


 ふと俺が冷蔵庫を開けているのに気づく流香ちゃん。

 謎の幼女の存在に気づくと、にへーとした笑顔で幼女に手を振っていた。

 幼女も一応手を振り返してたから、拉致監禁の類ではないらしい。


「すいません、その子今から使うのでまな板の上に移動させてくれませんか?」

「分かった。よっと」


 金髪幼女を抱き上げて、そのままゆっくりとまな板の上に乗せる。

 これでいいのかな。


「で、この子は誰なんだ?」

「生ハムちゃんです。ボンジュール!」

「……Buona sera」

「おおう、イタリア語だ!」


 そりゃ俺が話しかけても反応しない訳だ。

 そうか、本場の食材だとその地域の言葉になるのか。

 日本向けに作られた食べ物は、どうやら日本語を話すらしいが。

 確かに、本場の食材ってウチのスーパーには無いなぁ。


 流香ちゃんは何かのメモを生ハム幼女に見せた。

 生ハム幼女は少しゴソゴソと動くと、冷蔵庫に戻ろうとした。

 持ち上げて冷蔵庫まで運んでやる。

 まな板には、何故か本当の生ハムがスライスされた状態で残った。

 ……なんで?


「どうも、この生ハムはブロックの状態でもそのまま食べられるってのが特徴らしいんですよ」

「へー」

「スライスされると、今度は食べ物でなく食材扱いになるみたいです」


 なんか納得いかないが、まぁいいか。考えるのは流香ちゃんに任せた。

 生ハム幼女を冷蔵庫に押し込んでやる。

 ……あれ? 何かある。

 布?

 あ、これパンツだ。


「お前の?」


 幼女に言ってみるが、フルフルと首を横に振っていた。

 じゃあなんでここに。


「ダメッ!」

「うおっ」


 流香ちゃんにパンツを奪われた。

 凄い顔を真っ赤にしてる。


「これ、私のです……」

「ご、ごめんよ」


 なんか風呂上りに冷蔵庫で冷やしたパンツを履くのが好きなんだとか。

 という事は、今持っていたパンツは明日履く用のパンツなのかな。

 ……水色か。





「先輩ーダメでしたー」

「でしたー」


 流香ちゃんが、新たな幼女を連れてリビングに来た。

 やはり駄目だったか。


 今回の作戦は、ピザだ。

 ピザ生地にチーズだけ乗せて焼き、後で具材を乗っけて食べる。

 しかし、ピザ生地にチーズを乗せて焼いた時点で食べ物判定されてしまったらしい。

 生ハムは諦めて、もうピザに乗せてしまったそうだ。

 完全に今はピザ状態だな。

 それにしても……。


「でかいな」

「犯罪臭がしますね」

「んー?」


 ネット上では、太った人の事をピザとか言う事がある。

 何と言うか、この幼女はその太ってる要素が全部胸に行ったってぐらい巨乳だ。

 ロリ巨乳って奴だ。

 確かにちょっと犯罪臭がする。


「私少し休んで来ますね」

「あぁ、分かった」


 料理を作って疲れた流香ちゃんは、一度自分の部屋に戻った。

 今のところ、豚しゃぶ以外は全滅だ。

 あれ、そういや卵焼き幼女はどこ行ったんだろう。


「にししし」

「こら、イタズラすんな」

「へーい」


 すやすや眠っている板チョコ幼女にイタズラをしていた。

 おでこに『ぎり』と書いてある。

 勝手に義理チョコにされてしまった。


「ねーねーこれなにー」

「今度は何だ」


 ピザ幼女が何かを持ってきた。

 あぁ、デジカメか。


「これはデジカメだよ。カメラ」

「へー」

「撮って撮ってー」


 いつの間にか卵焼き幼女もこっちに絡んできた。

 面倒臭いな。

 まぁ、写真ぐらいいいか。


 このデジカメは、確か実家にあった奴と同じメーカーのだったような。

 だとしたら同じ使い方で多分大丈夫だろう。

 えーっとレンズの部分にあるカバーを外してっと。


「おー」

「かっこいー」

「撮るぞー」


 バッテリーがちゃんと入っているのを確認して、カメラを幼女たちに向けた。

 テーブルの前で並ぶ幼女たち。

 それをデジカメ越し見ると……。


「……マジかよ」


 湯気を立てているおいしそうなピザと、ふっくらとした卵焼きがテーブルの上に並んでいた。

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