もちが喉に詰まった末におじいちゃんは死神になりました
1月1日、元旦の朝。
僕たち家族は、毎年恒例の行事の初日の出を山頂で拝んだ後、自宅で食卓を囲み、おばあちゃんとお母さんが作ったお雑煮をおせち料理と共に食べていた。
しかし、まさか、こんな事になろうとは思っていなかった。
まず、おじいちゃんが、餅を喉に詰まらせた……ここまではよくある話だ。毎年お正月に何人かのお年寄りが命を失っている。うちのおじいちゃんも救急車で病院に救急搬送されるところまでは、その先人達と同じわけだったが、そこからが違った。おじいちゃんが手術台から出て来た時、とんでもない事になっていたのだ。
僕達の前に現れたのは、真っ黒な布切れを纏い、大きな鎌を持った、まるで死神のような格好をしたウチのおじいちゃんだった。曲がっていた腰はピシッと真っ直ぐになり今までより大きくなっていて、眉毛も村山首相みたいに伸びており、何だかやけにカッコ良くなっていた。
お父さんが、何があったのかと尋ねる。すると、おじいちゃんは目を瞑ってこう答えた。
「ワシは、先ほど、彷徨う魂の救済と悪人の処罰を閻魔様より任ぜられた。せっかくの正月だが行かねばならぬ」
そして、闇に消えるように何処かへと姿を消し、そのまま帰ってこなかった。
そして、みんなが心配する中、1月5日の夕方頃になっておじいちゃんは戻ってきたのだが、まるで何か大きな仕事を成し遂げたような清々しい顔をしていた。そして、いつもしている入れ歯の無い口をフニャフニャと動かして、何かを僕達に言ったが、内容は全く聞き取れなかった。
きっと、僕達の正月とは違うとんでもない事があったんだろうな。
まったく、餅の力とは侮れないものだ。