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せっかくの地区大会なのに

そして地区大会が始まった。

地元の山丘市立谷川体育館(通称谷川町体)といういかにも田舎っぽい小さい体育館だ。

山丘市はソラミが小学4年生のときに谷川町とさらに隣の村田町と合併した。

吸収される形ですね。

1日目の団体戦は男女とも合同チームで出場した。

田舎だしどこの高校も人数足りない、あるいはゼロ、足りていても本当にギリギリという感じ。

合同チームはオープン参加なので結果は出ず…。

あと男子ダブルス。2人は1回戦敗退だった。(相手が強豪校だったし…)

2日目は女子ダブルスと個人戦。

女子ダブルスのときだった。

「ソラミー。アヤミとカノンダブルスだからコウタとマサトにも上から応援するように言っといてー」

「はーい」

「コウ、キビノ。アヤちゃんとカノンちゃんダブルスだから応援するよ」

「あ、はい」

コウタは動いたがキビノは動かず1人古典のプリントを見たまま固まってた。

ま、試合見ずにこっそりやってた訳ね。テスト前だし。

ソラミも数学のプリント昼食時間にやってたし。

「キビノ??」

返事なし。

「真聖くん。」

返事なし。

キビノマサトは寝ていた。

「キビノ、起きろ」

それでも起きなかった。

「マサトは長い眠りについた。これも世界の破滅へ近づいている証だ。早く戦士を見つけなさい」

「はあ!?ちょっと!!キビノもうすぐ個人戦あんだけど!!」

「そんなことは知ったこっちゃない」

そして天の声は消えた。

「先パーイ?ダブルス始まってますよ。」

「あーわかった」

そしてとりあえず応援した。

それから30分後

「男子シングルス一回戦、南北高校サワダくん、山丘高校キビノくん、3コートに入ってください。」

「キビノ、個人戦だよ」

返事なし。

コウタが思いっきり背中を叩いた。少しよろけたような気がするが反応なし。

「山丘高校キビノくん、3コートに入ってください」

「キビノ、試合だってば」

反応なし。

何かがおかしいと察した顧問の森先生が二階に上がってきた。

「先生、キビノ何回も起こしているのに起きません。コウタが思いっきり叩いたんですけどそれでも起きませんでした。」

「キビノマサト起きんかい」

と先生が言ったが起きなかった。

「マーサート」

と先生が揺り動かしたが起きなかった。

「ソラミ、いつからマサトこんな感じなの?」

「っと…。アヤちゃんカノンちゃんのダブルス始まったとき古典のプリント見たまま固まって宝起こしたんですけど反応なくて…。それからずっとこんな感じです」

「んー…。呼吸とかは普通だよなぁ…。どうしたんだろう?」

ここで世界の破滅とか言ったら絶対怒られると思ったからいわなかった。

その時だった。キビノが立ち上がった。

「…キビノ??」

そしてふらふらと歩き出した。

「ちょ…キビノ!試合!!ラケット!!!」

とラケットを握らせた、

「3コートだからね」

ソラミは天に向かって言った。

「キビノって長いねむりについたんじゃ…?」

「あーあまり動かないっていうのもちょっとどうかって気がしたから彼の潜在意識で動くようになっている」

「潜在意識…?」

「ソラミ、お前誰と喋ってるんだ?」

「え…?」

「ソラミ、薄々気付いていると思うが俺の声は戦士にしか聞こえない」

「…ということは私、戦士??」

「そうだ」

「え、無理無理!!」

「無理じゃなーい!大丈夫だ、ソラミなら」

「本当?」

「そうだ、俺はソラミなら大丈夫だと思ったからお前に声掛けたんだ」

「でも私よりふさわしい人いくらでもいるでしょ?」

「ま、確かにな。でも俺はお前に『戦士』をやって欲しい」

「何で?」

「お前さぁ、高校入ってから何回人と一緒に弁当食ったか?」

「…5回くらい。てか誰と弁当食べようが個人の勝手じゃないの?」

「お前本当に1人でいいの?」

「大きなお世話。もう慣れた」

「慣れって言うのは恐ろしいものだぞー。ソラミ。本当は誰かと一緒に食べたいんじゃないの?」

「別に…。」

「去年のこの時期、誰かに声掛けたかったけど掛けられなくてしかもクラスの観察日記とか作ってて誰が誰と弁当食ってたとかそういうのをしっかりメモって観察して先生やみんなに怒られ、最終的には楽しそうな集団を横目に見ながら弁当食べるのは辛いといって放課後に弁当食べたりあるいは便所飯してたのはどこの誰でしたっけー??」

「なんで、そんなこと知ってるんだよ。ていうか、あのときのクラスの席順って私真ん中の真ん中でドーナツ化現象起こってたんだぞ。そら辛いわ」

「見てるから分かる。」

「ストーカーかよ。てかあんた本当に誰?」

「だから別誰でもいいだろ」

「名前は?」

「まだない」

「『吾輩は猫である』か、お前は。」

「…」

「…」

「それよりもマサト応援しなくていいのか?もう始まるぞ」

「あ…」

「ソラミー。お前さっきから何ぶつぶつ独り言言ってるんだ?」

「私はもともと独り言が多い人間なんですっ!」

「ま、クラスでも時々?いや、結構ぶつぶつ独り言言ってるもんな。あ、それより3コート審判いないみたいだから審判して。1年女子2人はまだダブルス残ってるし、コウタもすぐ呼ばれそうだし。貴女しかできそうな人いないから」

「はい」

そして審判をすることに。

「遅いぞ!山丘高校!」

当然ながら本部の人に怒られた。10分以上相手待たせてたのであった。

「すいませんでした」

と謝っておいた。

しかしキビノは反応なし。

「キビノも謝っとけ」

でも反応なし。

…なんなのこいつ…。

相手の子がぼそっと呟いた。

あとから森先生が本部に

「キビノ体調悪いみたいで遅くなりました。申し訳ありません」

と謝ってたとあとでコウタが教えてくれた。

そして試合が始まった。

「潜在意識でも動いてんじゃん、一応…」

確かにキビノは動いていた。カットマンらしい動きをしていた。

「すげーな…」

しかし彼には何も見えてないし聞こえていないみたいだった。

まるでロボットみたいだった。

そして虚空を見つめていた。

しかし彼はなぜか試合に勝った。

一回戦突破。

「ありがとうございました(相手に)ありがとうございました(審判に)」

一応頭は下げ、相手と握手はしたがその場から動こうとしない。

「キビノ、試合終わったよ。あんた3-0で勝ったよ」

「…」

「報告行って。本部席に」

「…」

動かない&無反応。

天が言った。

「ソラミ、マサトを本部席連れて行け」

「はーい…」

そしてキビノを引っ張り連れて行った。

舞台の下からこっそりソラミは呟いた。

「山丘高キビノ3-0で勝ちました」

その後、キビノはとりあえず2回戦に出た。

キビノの2回戦のとき女子3人は丁度自分の1回戦コウタは2回戦負けの敗者審判があったし、先生もあちこち巡回していたので誰も詳しくは見てないが、キビノは3-0で敗退したみたいだった。

どう見ても審判させるのは無理そうだったので、体調が悪いということにしておいてその場を出た。

ちなみにキビノの代わりに役目終わった直後のコウタが審判した。

会場外のベンチにキビノと先生は腰を下ろした。

このときソラミは丁度1回戦敗退後の敗者審判をしていた。

1セット目デュースまで行ったのに12-10で負け

その後も調子が出ず、2セット目と3セット目は惨敗だった。

それで3-0で負けているのだった。

ベンチで先生はキビノに尋ねた。

「マサト、お前本当にどうしたの?」

「…せかいがはめつする」

「は、何て?」

「せかいがはめつする」

「そういえばこの前ソラミも同じようなこと言ってたよ。大丈夫だから。(多分)」

「はめつするって…てんからこえがきこえた」

「そうなの?」

「はい…」

「マサト、お前熱があるんじゃないの?」

「…」

「何か顔色悪いし。マサト、今日はもう家に帰りなさい。家には俺が電話するから。土日ゆっくり休んでまた来週、な」

「はい…」

キビノの迎えを待つ間、ソラミの敗者審判が終わった。

「先生、キビノなんか言ってました?」

「何か、世界が破滅するとか何とか呟いてた。」

「ちょっち、キビノ、それ本当?」

ソラミはキビノに尋ねた。そして天に言った。

「あんたの声って戦士にしか聞こえないんじゃないの?」

「あーなんかのろわれた人も俺の声が聞こえるみたいだな」

「そうなの?」

「多分な。」

ソラミはキビノに尋ねた。

「キビノ、どんな声だった?」

「なんかおとこのひとのこえだった」

「そっか。」

やっぱり天の声で間違いないと思った。

「お前、キビノになんか変なこと言ったでしょ」

天に叫んだ。

「さーどーでしょーねー」

はぐらかされた。

「はぐらかすなーっ!」

そして先生はキビノの家に電話をかけキビノは帰っていった。

「あいつ大丈夫っすかね?」

コウタは先生に尋ねた「うーん…。今はなんともいえないな。分かりません。」

ちなみに試合、カノンは3回戦敗退、アヤミは4回戦敗退だった。

イナカで競技人口が少ないのでアヤミの4回戦敗退はかなりいい成績だった。


別side

昼過ぎ、一本の電話がかかってきた。

「えー山丘高校の卓球部顧問の森と申します。あーいつもお世話になっております。あの試合中にですね、マサトくんが体調を崩しまして・・・。大変申し訳ありませんが迎えに来ていただけないでしょうか?」

キビノは隣の地域から山丘高に来ている。

キビノの母は谷川町体まで車を走らせた。

そして体育館に着いたら顧問の先生、キビノ、コウタが座っていた。

ちなみにそのときアヤミが4回戦の最中で女子軍はそれを応援していた。

「いつもお世話になっております。あのマサトくんですね、10時半くらいにカワダさんやフエノぃんがいくら声を掛けても反応しない状態でした。それからま、あとおからは動いて試合にも出たことは出たんですが、なんだか心が入ってないと言いましょうか、上の空という感じでして。そしてまたさっきも意識朦朧としていたのか「世界が破滅する」などと呟いておりまして…(後略)」

そういうような状況説明があった。そして息子マサトの元へ行った母。

するとそこにはコウタの隣で虚空を見つめて何かぶつぶつ言っている息子の姿があった。

「マサ…」

声を掛けた。家で声を掛けても反抗期なのかあまり返事はしないのだがそれとは様子が違うことは一目見て分かった、

「病院行くよ。たって」

それでも立たなかった。

「キビノ、お母さん迎えきたぞ」

コウタが言った。

「帰るよ」

そうして半ばふらふらした足取りで帰っていった、

「あいつ、大丈夫っすかね?」

「うーん…。今は何とも言えないなあ。分かりません」

キビノはそのあと彼のかかりつけの内科へ行ったみたいだった。

当然でしょうが医者は首を傾げるばかりだった。

週明け。ソラミはアヤミにメールした。

「もうすぐテストだね。勉強中に悪いけどキビノ今日学校来てた・」

「キビノくんは今日38度5分くらいの熱が出たみたいで休んでました。」

「ねえ、キビノの熱って世界の破滅となんか関係あるの?」

ソラミは天に聞いた。

「さあな。多分マサトの身に怒っていることに付いて彼の体が拒否反応を示しているだけだと思うが。明日くらいには熱も下がるはずだ。」

キビノは次の日ぼんやりしながらも学校へ来たみたいだった。中間テスト1日目のことだった。

キビノのテスト結果大丈夫?と思い天に聞いたが

「学力的なことは多分大丈夫だと。あいつがちゃんと勉強してるならね」

キビノはテストそこそこの点数取ったみたいだった。

普通にソラミより頭いいです…。

1学年下の子よりも明らかに学力のない先輩って…。

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