ハンター
前回は地獄の採掘作業だった。
だが、今回は違った。
闇雲に掘ることを止め、感覚を研ぎ澄ましてツルハシを振るった。
そうすると、面白いように珍しい鉱石が出てくる出てくる。
しかも、無駄に疲れない。
鞄はあっというまにパンパンになった。
これでノエルに喜んでもらえる。
これで、地球に戻るための道が開く。
薄暗かった坑道内が未来へと続く光で溢れているようだった。
「見えるのか?」
突然、背後で声がした。
振り返ると、赤い鎧の日雇いハンターが立っていた。
坑道の薄闇の中でも、その鎧だけは妙に鮮やかに見える。
「……何がですか」
とっさに誤魔化したが、男は鼻で笑っただけだった。
「とぼけるな。お前、当てもなく掘ってないだろ」
心臓が跳ねる。
男は俺の足元に転がる鉱石と、膨らんだ鞄を見た。
それから、周囲の岩肌へ視線を巡らせる。
「ここいらは、熟練の鉱夫でも空振りが続いてた場所だ。それを新入りのお前が、半日でそこまで掘り当てる」
男は一歩近づいた。
「見えてるんだろ。鉱脈が」
全身が強張った。
初めて感じたスキルの実感。嬉しくて警戒を怠っていた。
こんなに当たりを引いていたら、怪しまれるに決まっている。
そればかりか奪われる可能性も……。
「安心しろ。別に奪おうってわけじゃねぇ」
心を見透かすように言った。
「信用できる言い方じゃないですね」
「はっ。鉱山で人を信用するほうがどうかしてる」
そして男は坑道の奥にちらりと目をやり、それから少し声を落とした。
「俺はガレス。ここじゃ日雇いハンターをやってるが、本業は別にある」
「本業?」
「人を探してる。お前みたいな奴をな」
言葉の意味が、すぐには飲み込めなかった。
「……どういう意味だ」
「探知持ちだ。しかも、ただの鉱脈探しじゃない。もっと深いものまで拾える奴」
ガレスの目は、まっすぐだった。
疲弊した鉱夫たちとは違う、何か別の目的を持つ目だった。
「隣国の王が、力ある者を集めてる。魔族に対抗する武具を作るためだ」
「武具?」
「この辺りのレアストーンは、ただ高く売れるだけじゃない。加工次第で魔族を斬れる武器の芯にもなる」
ガレスはしゃがみ込み、俺の足元の鉱石をひとつ拾い上げた。
「だが、良質なものは滅多に出ない。出ても見抜ける者が少ない。だから探知持ちが必要なんだ」
言いながら、鉱石を俺の胸元へ放って寄越す。
慌てて受け取ると、ガレスは立ち上がった。
「力を貸せ。報酬は鉱山の比じゃねぇ。お前が望むなら、自由も、金も、地位も手に入る」
地位なんてものには興味がない。
だが、金には心が揺れた。
ノエルの店。
先の見えないこの町。
そして、未来。
地球に戻るためにも、この世界で動くためにも、金はいる。
俺一人の欲じゃない。そう思えば思うほど、その誘いは甘く聞こえた。
「今すぐ返事はいらねぇ」
ガレスは踵を返しながら言った。
「だが、その力をこんな鉱山で腐らせるのは無駄だ。考えとけ」
そう言い残し、赤い鎧は坑道の闇へ消えていった。
その後、俺は目立つ行動を止め、ひっそりと解放の日を待った。




