表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇スキル【撤退】しか持たない商家の三男、死ぬたびに最適解を見つけてダンジョン攻略  作者: 昼ライス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

第16話 速さの違い

毎日20時投稿

低い唸り声が、通路に響いた。


目の前の獣は、ゴブリンとは明らかに違っていた。四足で地面を掴み、体を低く沈めている。飛びかかる寸前の姿勢だ。


距離はまだある。


だが、安心できる距離ではない。


(速いな)


ロイは槍を構えたまま、相手の動きを観察する。


ゴブリンより体格が大きい。筋肉の付き方も違う。無駄な脂肪がなく、動きに迷いがない。毛並みも荒れていない。素材として見ても悪くなさそうだった。


「新しい魔物だね」


肩の近くで、リアが小さく言った。


「ああ」


ロイは短く答える。


先に動いたのは、狼の方だった。


地面を蹴る音が、予想よりも早く近づく。


「――っ」


思っていたより速い。


槍を突き出すより先に、間合いを詰められた。


ロイは反射的に横へ踏み込む。


牙が空を切った。


すれ違いざまに、毛並みが視界をかすめる。


(ゴブリンとは違う)


一撃で仕留めるつもりで動く相手だ。立ち止まれば終わる。


距離を取り直す。


足運びが自然に働いた。体が勝手に安全な位置へ動く。


狼が振り向く。


再び低く構える。


次は速さを理解している。


ロイは自分から距離を詰めない。槍の間合いを保ったまま、相手の動きを待つ。


突進。


今度は見えた。


踏み込みの瞬間、投擲ダガーを放つ。


肩口に刺さり、わずかに動きが鈍る。


その一瞬で十分だった。


槍を突き出す。


穂先が毛皮を裂き、肉を貫いた。


狼が短く吠える。


だが止まらない。


体を捻り、無理やり距離を詰めようとする。


ロイは無理に押さえ込まない。


槍を引き、後退する。


再び間合いを作る。


(速いだけだ)


動きは単純だ。


一直線に飛び込み、噛みつく。


フェイントも、駆け引きもない。


だからこそ、距離を保てばいい。


狼が再び跳ぶ。


今度は正面から迎えた。


踏み込みを合わせ、槍を突き出す。


喉元。


深く入った感触。


狼の体が崩れ落ちた。


数歩ほど地面を掻き、やがて動かなくなる。




しばらくその場で様子を見る。


動かない。


完全に絶命していた。


「……速かったな」


ロイは息を整えながら呟く。


ゴブリンとは違う疲労が残っている。短い戦闘だったはずなのに、体が熱い。


「でも、倒せたね」


「ああ」


危なかったわけではない。


だが、楽でもなかった。


槍を引き抜き、周囲を確認する。


気配察知に、もう一つ反応があった。


遠い。


近づいてはこない。


通路の奥、暗がりの中で何かが動いた気がした。


視線を向ける。


一瞬だけ、灰色の影。


同じような体格。


だが、それ以上近づいてはこなかった。


やがて気配が遠ざかる。


「……仲間か」


ロイは小さく呟いた。


「群れなのかもね」


リアが言う。


ロイは追わなかった。


一体なら対処できる。


だが、数が分からない相手を追う理由はない。




倒した狼から魔石と牙を回収する。


魔石の色と重さを確かめる。ゴブリンのものより質がいい。買取価格も一段上になるはずだった。


牙も武具素材として扱われる。数を揃えれば、それなりの金になる。


傷の入り方を見て、売り物として問題ないことも確認する。


袋にしまいながら、ロイは小さく頷いた。




帰り道、ロイは歩く速度を少し落としていた。


気配察知を、いつもより意識して使う。


さっきの影が頭に残っている。


一体なら問題ない。


だが、複数なら話は違う。


狭い通路で囲まれれば危険だ。


(戦う場所は選ばないとな)


見通しのいい場所。


逃げ道のある場所。


それだけ気をつければいい。


やり方は変わらない。




ダンジョンの外に出たとき、空はまだ明るかった。


怪我はない。


装備も無事だ。


ただ、いつもより少しだけ疲れている。


「どうだった?」


リアが聞く。


「速かった。でも、対処できる。……手間の割に、悪くない相手だ」


ロイは答えた。


強い相手だったが、無理をしなければ問題はない。


「中層も、これなら攻略できそうだな」


そう呟きながら、ロイは街へ向かって歩き出した。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ