表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子大生、温泉で恋落ちます!?   作者: 恋い茶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/26

第7話 「車内恋トーク② 〜忘れたい恋、忘れられない恋〜」

好きなタイプの話で盛り上がったあと、

車内にふわっとした余韻が漂った。


甘くて、照れくさくて、

ちょっとだけ胸の奥をくすぐる空気。


だけど、

友奈が次に投げた質問で、

その空気が少し変わった。


「ねぇさ……

“忘れられない恋”って、ある?」


一瞬、

風の音だけが窓の外で鳴った。


車の中の言葉たちは、

ゆっくりと凍りついたみたいだった。



---


◆美結が最初に口を開く


「……あるよ。」


美結は、

景色を見るような目で前を向いた。


「高校のときね、

一緒に帰ったり、誕生日に手紙くれたり……

そういう、なんでもない時間が好きだったなぁって。」


友奈が小さく呟く。


「美結ちゃん……そういうの似合う……」


美結は照れながら笑った。


「でもさ、

気づいたときには終わってたんだよね。

“あ、この人とは高校までなんだ”って。」


静かだけど、

胸に触れてくる言葉だった。



---


◆陽芽の、弱くて優しい記憶


「……ひめも、ある。」


陽芽の声は震えていた。


「中学のとき……

すごく仲良くて。

でも、私が“好き”って気づいた頃には、

その子の好きな人が別にいて……」


陽芽はぎゅっと手を握る。


「言わないままで終わったの。

だから、

忘れたいのに、忘れられない。」


美結がそっと背中に手を伸ばす。

瑞希も黙って聞いている。


紗月が柔らかく言った。


「……陽芽ちゃん、えらかったね。」


その言葉だけで、陽芽の肩の力がふわっと抜けた。



---


◆紗月は、静かな恋をしていた


「私も……少しだけ。」


紗月はいつものように控えめ。

けれど言葉の中に、深い優しさがあった。


「友達として大切すぎて、

“好き”って言ったら壊れちゃいそうで……

そのまま終わっちゃった。」


瑞希が目を伏せる。


「紗月……」


紗月は笑った。ほこっと。


「でもね、

“言わなくてよかった”って思う時もあるの。

想い出って、

大事にすると優しくなるから。」


車内に、柔らかいため息が広がった。





◆友奈の恋は、明るい声で隠されている


「私もあるよ!」

友奈が明るく言う。

でもその声の奥の、薄い影に気づくのは叶だった。


「私さ、めちゃめちゃ好きな人がいたのに……

告白したら“友達のままがいい”って言われて。

それでも友達続けちゃったんだよね〜〜」


笑いながら話すけれど、

瑞希の胸がきゅっとした。


(……つらかっただろうな)


けれど友奈は、

笑い声のままで言った。


「でも!

今はもう大丈夫だよ♡

だって今日から温泉旅行だし!!」


その明るさが、みんなを救っていた。





◆そして、瑞希の番が来る


「……瑞希は?」


友奈が振ると、

瑞希はほんの少しだけ息を飲んだ。


(話さなくてもいいのに)

(でも、聞かれてる)


窓に白い息が映り、

少しだけ時間が止まった。


「あるよ。」


その声は、静かで小さかった。


「……忘れたい恋。

でも、忘れられない。」


その一言に、

全員の視線がゆっくり瑞希に向いた。


瑞希は続ける。


「相手のこと、すごく大事だったのに……

その人は私を選ばなかった。

……それだけ。」


それ以上は言わなかったし、

言えなかった。


でもそれで十分だった。


紗月がそっと言った。


「瑞希ちゃん……無理しないでね。」


瑞希は微かに笑う。

強く見えて、誰より繊細な笑顔。





◆叶の言葉は、痛みをそっと包む


「みんな……」


叶が前を向いたまま、やわらかく言う。


「恋ってさ、

忘れようとしても、

忘れられないときの方が多いよね。」


誰も否定しなかった。


「でも、

忘れられない恋があったから、

今日の私たちがいるんだと思う。」


その言葉が、

雪の降る空気みたいに静かで優しく、

みんなの胸に落ちた。





車の中は、

さっきまでより静かで、

でも不思議とあたたかかった。


>あのときの痛みも、

今日の旅で少し溶けるといい。




そんな願いを乗せて、

車は温泉街へと走り続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ