第5話「出発の朝、ふわりと始まる特別。」
朝の空気には、
前日にはなかった小さな緊張と、
遠足みたいな期待が混ざっていた。
窓の外は薄い雲。
空気はひんやり冷たいのに、
心だけは、ふわっと温かい。
8人の“朝”は、それぞれ違う音で始まった。
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◆叶の朝(静かで整っている)
目覚ましが鳴る前に、叶は目を覚ました。
自然と早く起きてしまうあたり、
責任感がやんわり顔を出している。
(……よし、準備しよ)
鏡で髪を整えながら、
昨日選んだ香りを軽く首元へ。
やわらかな花の匂いが広がって、
胸のあたりが少し温かくなる。
(今日はどんな一日になるんだろう)
期待をひとつ深呼吸で包みながら、
ゆっくり家を出た。
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◆友奈の朝(賑やかにバタバタ)
「うわぁぁぁぁ!!!寝坊したっ!!」
通話で “モーニングコールするよ!” と言った本人が、
一番慌てて布団から起きた。
支度をしながら叫ぶ。
「髪まとまらん〜〜!」
「なんで靴下片方ないのっ!」
「まじで今日だけは可愛くいたいのに〜!!」
それでも、
鏡の前ではちゃんと笑顔を作る。
(……楽しみすぎるんだよね)
その気持ちが表情にも滲んでいた。
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◆瑞希の朝(落ち着いた静けさ)
瑞希は、
ゆっくり温かいミルクティーを飲みながら外の空を見た。
(……雪、降らないといいな)
淡々としているのに、
少しだけ心が波立っている。
旅に向かう心の揺れは、
きっと誰より繊細だ。
今日の服はシンプル。
でも、
髪を耳にかける仕草だけは、
いつもより丁寧だった。
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◆紗月の朝(ふんわり優しい)
「……いい天気だね」
ゆっくりとカーテンを開けながら、
小さく微笑む。
紗月の部屋は朝からやわらかい匂いがして、
その香りが気持ちを落ち着かせる。
(みんなと会ったら、ちゃんと笑おう)
手袋をはめると指先があったかくなって、
心も同じように温まっていく。
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◆陽芽の朝(少し緊張)
鏡の前で何度も深呼吸する陽芽。
(……変じゃないかな)
今日選んだカーディガンは淡い色。
勇気を出して買ったお気に入り。
その“勇気”が伝わるといい。
伝わりすぎても困るけど。
胸のあたりがくすぐったい。
「大丈夫。……大丈夫。」
小さくつぶやいて、
外に出る。
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◆美結の朝(華やかで明るい)
「よーし!かわいい!!」
鏡を見てテンションが上がるタイプ。
写真を撮るのが好きだから、
旅の朝はいつもより丁寧にメイクする。
バッグにリップをぽんと入れ、
ふわっと香りをまとった。
(今日はきっと、いっぱい笑える)
そんな確信めいた期待が胸にある。
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◆小春の朝(元気、だけどちょっと眠い)
「……眠っ。でも楽しみっ。」
目をこすりながらお菓子袋の最終チェック。
もはや遠足の子ども。
「えっと……じゃがりこ……チョコ……グミ……
……完璧!!!」
鏡に向かってピースして、家を出る。
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◆彩羽の朝(静かで柔らかい空気)
昨夜の通話を思い出しながら、
そっとスカーフを巻いた。
香りは控えめ。
でも、
本を読むときにふわっと立ち上がる、
あの落ち着く香り。
(旅って、いいな)
手帳をバッグに入れ、
ゆっくり歩き始める。
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◆集合場所へ向かう道
家を出た瞬間、
空気が少しだけきれいだった。
心の中にあるのは、
“旅が始まる”という静かな高鳴り。
誰も言わないけれど、
誰もが思っている。
> 今日、きっと「特別」が始まる。
歩きながら、
自然と笑顔がこぼれていた。




