第4話「グループ通話と、夜の笑い声。」
荷造りが終わり、ほっと息をついた頃。
部屋の灯りは柔らかく、夜の空気は少し冷たい。
寝る前に、スマホが一斉に震えた。
> 友奈「通話いける人〜〜!」
その一言で、通知がどんどん重なる。
8人の小さな準備が音を立てて集まるみたいだった。
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◆通話開始の空気
「は〜〜い、聞こえる?」
友奈の明るい声が最初に響く。
「うるさいよ、友奈……」
瑞希が苦笑混じりにつぶやく。
でもその声は、どこか嬉しそう。
「聞こえるよ〜〜〜♡」
美結の声は、ふんわり甘い。
「……こんばんは。」
紗月はいつも通り控えめ。
「やばい、もう緊張してきた……」
陽芽の声は少し震えている。
「荷造り、全然終わんないんだけど。」
小春が言うと、すぐ葉音が乗る。
「小春はお菓子多いんだよ〜〜。」
「やめて!(図星)」
「はいはい集合〜♡」
最後に叶の落ち着いた声が加わり、
8人の空気がようやくひとつに溶け合った。
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◆明日のことを話すだけで、心が躍る
「明日さ〜、駅で写真撮ろうね。」
美結の声は、もう旅にいるみたいに軽い。
「その前に……朝起きられるかが問題。」
瑞希は淡々と言って、みんなを笑わせる。
「大丈夫大丈夫!私がモーニングコールするっ!」
友奈は元気そのもの。
「友奈は寝坊する側じゃん。」
陽芽がツッコミを入れた。
ちょっと勇気のいる発言だったけれど、友奈はすぐ笑って返す。
「そこは気持ちの問題よ!」
(……この空気、好きだな)
叶は気づかれないように、そっと笑った。
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◆恋バナの気配
話題は自然に、少しだけ甘い方向へ流れていく。
「温泉でさ、浴衣どうする?」
美結が尋ねる。
「私はピンク。」
紗月は控えめだけれど、決めるところは決める。
「私は白〜。」
友奈は即決。
「……私は、どうしよう。」
陽芽がぽつりと言う。
「ひめは淡い色が似合うと思う。」
叶が優しく言った。
「……ほんと?」
陽芽の声が少しだけ明るくなる。
そのわずかな変化を、
瑞希は黙って聞いていた。
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◆はにかむ沈黙のあと
「ねぇ……恋とか……あるの?」
美結がふいに言った。
通話の向こうで、
空気が一瞬だけ静かになる。
すぐに友奈が明るく切り込む。
「あるでしょ!?絶対あるでしょ!?」
「ないよ。」瑞希
「あるよね?」友奈
「ないってば。」瑞希
「あるって言って〜〜〜♡」友奈
笑い声が弾む。
でも、
ほんの少しだけ胸の奥に沈む音もある。
誰も言わないだけで、
誰かは誰かを意識している。
(恋、したいな……)
(誰かに、特別だと思われたい……)
そんな“声にならない声”が、
画面越しにそっと漂っていた。
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◆叶のひと言で、未来が少し近づく
「ねぇ。」
叶の声は、みんなの会話をそっと包むように柔らかかった。
「明日ね……
誰かの心が動く瞬間、
きっとあると思うよ。」
一瞬だけ、
息をのむ音が通話を満たす。
誰が誰に言ったわけでもないのに、
胸に小さな灯りがともるようだった。
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◆終わりへ向かう時間
「じゃあ……そろそろ寝よっか。」
叶がそう言うと、
名残惜しさが通話の向こうから滲む。
「明日楽しみだね。」
紗月の声はあたたかい。
「絶対、絶対楽しいよ。」美結
「ブッフェ全制覇しようね。」小春
「無理だよ。」瑞希
「いや、いける。」小春
友奈がふんわりまとめる。
「じゃあまた明日ね〜〜♡」
「おやすみ。」
「おやすみ〜。」
「おやすみなさい……」
8人の声が重なって、
夜の空気の中へゆっくり溶けていった。
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スマホの画面が暗くなり、
部屋はまた静かになる。
けれど、
誰の胸の中にも、
通話の余韻が温かく残っていた。
> 明日、旅が始まる。
その予感だけで、
眠るのがもったいないと思える夜だった。




