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女子大生、温泉で恋落ちます!?   作者: 恋い茶


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27/29

第27話 「朝のブッフェは、未来の味がする。」

朝の会場は、夜よりも明るく、やわらかい。

窓の外には、うっすらと積もった雪。

白い光が、テーブルを優しく照らしている。

「昨日と同じ場所なのに、全然違うね。」

紗月が小さく言った。

「朝の顔してる。」

彩羽が頷く。

料理の並ぶ列へ向かう足取りは、夜より軽い。

「私は和食派。」

友奈が迷いなくトレイを取る。

「え、意外。」

美結が笑う。

「昨日あれだけ食べたから、今日は整えたいの。」

「整うとか言いながら、絶対デザート取るでしょ。」

小春が横から言う。

「ばれてる。」

笑い声が、自然に広がる。

 

瑞希は、少し遅れて列に並ぶ。

目の前には陽芽。

何を取るのか、

自然と目で追ってしまう。

「……それ、気になる。」

瑞希がぽつりと言った。

「これ?」

陽芽が振り返る。

「卵焼き。」

「甘いやつ?」

「うん。」

「じゃあ私も。」

ほんの小さなやり取り。

でも、

距離は昨日より、ずっと自然だった。

 

席に戻ると、

それぞれの皿が並ぶ。

「いただきます。」

声が揃う。

一口目の味が、

体の奥にじんわり広がる。

「……おいしい。」

陽芽が、心から言う。

「沁みるね。」

紗月が微笑む。

「昨日の自分に教えてあげたい。」

友奈が真顔で言う。

「千段登れば、この朝があるって。」

「それでも迷うと思う。」

小春が即答する。

 

しばらく、

料理の話が続く。

でも、

誰かの視線が、

時々、誰かを探す。

瑞希は、

陽芽が笑うたび、

無意識に目で追っていた。

陽芽は、

瑞希が自分と同じものを選んでいることに、

少しだけ嬉しくなっていた。

 

美結は、

友奈の横顔を見ながら言う。

「ねえ。」

「ん?」

「昨日より、顔やわらかい。」

「それ言う?」

友奈は照れ笑いを浮かべる。

「朝だから?」

「……かもね。」

でも、

二人ともわかっている。

それだけじゃないことを。

 

食事が進むにつれて、

空気は落ち着いていく。

騒がしくない。

でも、静かすぎない。

「ねえ。」

彩羽が言う。

「この旅さ、

終わったあと、どうなると思う?」

「なにが?」

小春が聞く。

「私たち。」

一瞬、

全員が手を止める。

友奈が先に口を開いた。

「終わらないと思う。」

「なにが?」

美結が聞く。

「この感じ。」

瑞希は、

ゆっくりと頷いた。

「……続くと思う。」

陽芽は、

小さく笑った。

「じゃあ、

終わらせないようにしよ。」

その一言が、

朝の空気にすっと溶ける。

 

ブッフェの時間が終わりに近づく。

皿は空になり、

カップの底も見えている。

「帰りたくないね。」

紗月がぽつりと言う。

「うん。」

陽芽も頷く。

「でもさ。」

叶が言った。

「帰るから、

また来たくなるんだよ。」

誰も反論しなかった。

この旅は、

ここで終わるわけじゃない。

今日の朝は、

未来の入口みたいな味がした。

 

席を立つとき、

瑞希が陽芽に小さく言った。

「……あとで、少し話せる?」

陽芽は、

一瞬だけ目を見開いてから、

笑った。

「うん。」

その約束が、

新しいページを開く。

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