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女子大生、温泉で恋落ちます!?   作者: 恋い茶


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22/29

第22話 「夜のブッフェ、視線が交差する。」

ブッフェ会場の扉を開けた瞬間、

一気に空気が変わった。

明るい照明。

湯気の立つ料理。

お皿が触れ合う軽い音。

「……すご。」

友奈が目を丸くする。

「これは、テンション上がる。」

美結はすでに料理の列を見渡していた。

「まずは全体を一周する派。」

小春が言う。

「いや、私は直感派。」

友奈はそう言って、

いきなりローストビーフの前に立つ。

「早い。」

瑞希が短く突っ込む。

自然と、

みんな少しずつ離れて、

また近づいて、

それぞれのペースで料理を取っていく。

でも、

完全には離れない。

 

紗月と陽芽は、

同じ列に並んでいた。

「どれにする?」

紗月が小さな声で聞く。

「……これ、気になる。」

陽芽が指差す。

「じゃあ、半分こしよ。」

「……いいの?」

「うん。」

紗月は笑った。

「いっぱいあるから。」

そのやり取りを、

少し離れたところで瑞希が見ていた。

胸の奥が、

ほんの少しだけざわつく。

(……なんで)

理由はわからない。

でも、

視線が自然とそちらに向いてしまう。

 

美結は、

皿を持ったまま友奈に近づいた。

「ねえ。」

声を落とす。

「さっきの話。」

「どれ?」

友奈は口いっぱいに料理を運びながら聞く。

「好きな人。」

美結は、ちらっと周囲を見てから続ける。

「正直さ……

今、ちょっと楽しくない?」

友奈は一瞬だけ止まって、

すぐに笑った。

「うん。」

「……だよね。」

二人は目を合わせて、

何も言わずに頷いた。

 

叶は、

みんなの席を見渡していた。

どこに座るかで、

空気が変わる。

結果的に、

こんな配置になった。

友奈と美結が隣。

小春が向かい。

紗月と陽芽が並び。

彩羽は全体が見える位置。

瑞希は、少し迷ってから、

陽芽の斜め向かいに座った。

(……近すぎないようで、

遠すぎない)

そんな距離。

 

料理が揃い、

箸が動き始める。

「……おいしい。」

陽芽が素直に言う。

「ね。」

紗月も頷く。

「山寺のあとだから、

余計に沁みる。」

小春が言う。

「体力消費してからのブッフェ、

正解すぎる。」

美結が満足そうに言った。

会話は、

料理の話から、

今日の出来事へ、

自然と戻っていく。

「山寺、正直きつかったけど。」

友奈が言う。

「誰かが一緒だと、

最後まで行けるんだね。」

その言葉に、

瑞希の箸が一瞬止まる。

陽芽は、

小さく笑って言った。

「……うん。」

それだけ。

でも、

その一言が、

瑞希の胸に残った。

 

彩羽は、

静かに周囲を見渡しながら言った。

「なんか、

席の空気でわかるね。」

「なにが?」

小春が聞く。

「誰と誰が、

今、近いか。」

一瞬、

全員が黙る。

「……やめて。」

美結が笑いながら言う。

「可視化しないで。」

「でも当たってる。」

友奈が小さく言った。

 

視線が交差する。

気づいて、

逸らして、

また戻る。

まだ言葉にはならないけれど、

心の中で何かが、

少しずつ形になっていく。

夜のブッフェは、

ただ食べるだけの時間じゃなかった。

誰と隣に座るか。

誰の話に一番反応するか。

誰の笑顔を、

もう一度見たいか。

その全部が、

静かに積み重なっていく。

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