振興宗教団体
「……古代遺跡で見つけた兵器をギルドに売らないのって、犯罪ですよね?」
ミリアが確認する。
「うむ、兵器に限らず、古代魔道具の類いは本来、ギルドでしか買い取りできない。国家のエゴと言われればそれまでだが、魔法大戦で使用された強力な武器や呪具が、そうと分からぬ形で発掘されることもあるからな。冒険者ならばギルドで鑑定して、それに見合う報酬を受け取るのが一番安全で、効率的なのだ。……だが、力を欲する者と、金を欲する者……欲が絡めば、そのルールに従わずに自分たちの物にしようとしたり、闇で大金に替えようとする」
「……まあ、人間は欲深い生き物ですからね。けれど、本当に古代の超魔導兵器だと分かっていて、それを起動しさせようとしているならば、絶対に止めないといけない」
「そうだ。そこでおまえたちの出番という訳だ」
「そこまでは理解できました……それで、真竜の魔石の行方は、分かっているのですよね?」
実際はそうではないだろうと思いながら、アクトはギルド長に質問を投げかけた。
「もちろんだ……と言いたいところだが、確証は持てていない。ただ、我々の情報網にかかった、とある集団が怪しい動きをしている」
「さすが、潜伏騎士を纏めているだけはありますね……どんな集団なんですか?」
意外にも具体的な答えが返ってきて、アクトが素直に感心する。
「振興の宗教団体だ……といっても、二十年ぐらい前から活動は行っていたのだがな。それが最近、特にハンターの支持を集めるようになってきている。お布施と称して金品を集めるのはもちろん、最近は特に魔石の収集に力を入れている。腕の良い魔術師と魔道具を揃えているようで、傷を癒す効果の高いハイ・ポーションを分け与えたり、浴びるだけで力がみなぎる『聖なる光』を信者に披露しているという話だ」
「……なんか、インチキっぽい……」
ミリアで無くともそういう感想を持つだろう。
「金品はともかく、魔石を集めているっていうのはさっきの話と照らし合わせると確かに怪しい……でも決定的ではない」
アクトは慎重なそぶりながらも、潜伏騎士団の軍団長、そしてこの街のギルド長を兼ねている目の前の男が、もっと具体的な情報を持っていると確信し、敢えて否定的な意見を述べる。
「そうだ……しかし、高レベルのハンターが信者として出入りしており、何人か真竜の討伐にも参加していたとしたらどうだ?」
「なるほど……まあ、それなら可能性の1つとしてはあり得ますね。最悪ハズレでも、容疑者リストから外せることになる」
「そういうことだ。それで二人に潜入してもらいたい。ちょうどいいしな」
「えっと……なにがちょうどいいんですか?」
ミリアがきょとんとした表情で尋ねる。
「その新興宗教は、崇める神を、結婚と豊穣の神『エヴリーヌ』としているそうだ」
「え、そうなんですね! 私が信じる神様と一緒です!」
ミリアが嬉しそうに声を上げる。
「そうだろう。そして二人には、変装した上で身上を変え、新婚夫婦として体験入信してきてほしいのだ」
さらりと言った潜伏騎士軍団長の言葉に、二人は固まった。