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恣意的解釈

 すぐさま門番がいた場所まで駆け寄るアクト。

 鉄製の門には鍵がかかっているが、着ているベストからテーブルナイフほどの魔道具を取り出す。

 鉛のように柔らかい金属だが、それを鍵穴に差し込むと魔力が発動、自動的に形上が変化し、ピタリと収まるところで硬化し、回転させることでガチャリと開いた。

 その間、僅か数秒。

 魔力封印が展開されていたが、それほど強力でも複雑でもなく、アクトの持つ高性能な魔水晶が埋め込まれたパワーグローブにかかれば解析は容易だ。

「警報」の仕掛けや魔法を無効化し、さらにパワーグローブから発する超音波や魔力探知で扉の向こう側に誰もいないことを確認して、ゆっくりとその重い扉を開けた。


 誰もおらず、真っ暗な聖堂内。

 侵入した後は忘れないように扉を閉めて、内側から鍵をかけておく。

 解析していた魔力封印も同じように展開しておいた。

 ここに灯りをつければ窓から光が漏れ、先ほどとは別の門番や見張りに見つかる可能性がある。

しかしアクトが身につけるゴーグル『黒梟(くろふくろう)』は、暗闇の中でも問題なく周囲を見渡すことができる。

 その光量も魔力で調整することができる。


 目の前には、高さ12フィート超の、純白で緻密な細工が施された『エヴリーヌ』像が立っている。

問題は、『エヴリーヌ』が持つ杖の先端、黄金色に輝く宝玉だ。

 本当に純白の聖光が放たれるのであれば国宝級のシロモノで、王家にも存在しているかどうか怪しい宝玉だ。一振興教団が持つには価値が高すぎる。

 また、あの光を浴びたときに感じた多幸感も怪しかった。

 現時点で、それが直ちに違法なものと断定はできないが、その素性は知っておいた方がいいとの判断だった。


 アクトは腰のベルトから細いワイヤーの先端部を引き出すと、それを魔力により天井に飛ばす。

 先端は天井に張り付き、魔法力場により傷をつけることなく強固に固定された。

 それを巻き上げると、アクトの体が引っ張られてゆっくり宙に浮く。

 やがて杖の先端部に両手が届く位置までたどり着いた。

 ちなみに、浮遊魔法を使用するという手もあったが、使用する魔力が大幅に増えてしまうのでこの手法を使った。


 ワイヤーはベルトで固定されているため、両手が自由に使える。

 そこで宝玉の解析を開始したが、この宝玉に込められた魔水晶は複雑で、時間の制約がある現状、アクトの手には追えそうになかった。


(仕方ない、持ち帰ってミリアに頼むか……)


 魔水晶やそれを用いたアイテムの解析、鑑定はミリアの専門だ。

 やむを得ず、一時的にこの宝玉を拝借する……令状なしでそれを行うことは、本来、潜伏騎士でも規定に抵触する行為だが、アクトは独自の論理で「これは国家的緊急事態に発展する可能性がある」と恣意的に解釈をゆがめた。

 宝玉の台座には先ほどの扉よりよほど強固な魔力封印、警報発動の魔法が掛けられていたが、潜伏騎士として訓練され、高度な技術を習得している彼は、パワーグローブの高度な性能もあり、5分ほどでそれを解除して宝玉を取り外すことに成功した。

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