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真竜との戦い

 古代遺跡群攻略都市「ザーレ」から50マイルほど離れたザイル平原に、伝説級の古代魔獣、「真竜」が住み着いた。

 体長、約100フィート。最大級の鯨に匹敵する。

 これほどの巨大魔獣が、どこからか飛来したのだ。


 ザイル平原は通称「魔獣の宝庫」と呼ばれており、比較的低レベルの魔獣が繁殖していることもあって、初級~中級冒険者 (いわゆる「ハンター」)がその素材や魔石を求めて訪れる場所だ。

 しかしこのような危険な竜が住み着いたとあっては、迂闊に近づくことさえままならない。

 また、都市に近いエリアでもあり、真竜の飛行能力ならば1~2時間で到達しうる。

 都市にとって、一刻の猶予もない危機的状況だった。


 ノイスヘルネ王国第三騎士団は、真竜討伐のために五十人の騎士、さらに同人数の中級以上のハンターを雇った。

 ハンターたちの役割は、真竜の注意を引く役目……というと聞こえはいいが、要するに囮役だった。

 そんな騎士、冒険者達がザイル平原に到着する寸前の森の中、昼休憩中に真竜の急襲を受けた。


 夜中に広域探知魔法にて、寝ている真竜に不意打ちをかけるはずだったのが、逆に嵌められたのだ。

 真竜は巨躯であるがゆえ、動きが制限される森の中には入って来られぬであろうという騎士達の見立てだった。

 しかしまだ若く細い木々が多い森の外周部付近にあっては、真竜はそれらをなぎ倒しながら暴れることができたのだ。


 数百年の時を生き、知性も高い真竜ならではの不意打ちだった。

 その竜にとっては、人間は単体ならば弱き存在ではあるが、集団になると少々鬱陶しい、という程度のものだった。


 ――周囲に遮蔽物が何も無い平原においては、人間どもは魔術や魔道具で遠距離攻撃をしてくることがある。ならば、先手を打って森の中で壊滅させた方が良い。

 平原地帯は自分にとって食事に困らぬ、この上なく心地よい、新しい居住地だ。

 人間どもの街が近いことは知っていたが、こちらから手を出すつもりはなかった。

 ある程度予想していたことではあったが、このように集団でやってくるということは、我に危害を加えるつもりに違いない。

 少々脅かし、痛い目に遭わせれば二度とこのような暴挙は起こすまい――。


 真竜としては、そのような考えで軽く攻撃を仕掛けたのだが、騎士やハンター達は大パニックに陥った。

 騎士達の中でも最高レベルの魔道士が、やはり最高レベルの杖を振るい、強力な爆撃魔法を慌てて放つ。

 しかしそれは鋼鉄よりも頑丈で、しかも魔力結界まで帯びた竜鱗に弾かれ、僅かなダメージしか与えられず、真竜の機嫌を悪くしただけだった。


 意を決した重装騎士による渾身の槍も、同様に鱗を傷つけることすらできない。

 特殊ハンターが古代遺跡で手に入れた、とっておきの魔術具で上位の「催眠」や「混乱」等の幻惑魔法を試すも、それらに強い耐性を持つ真竜は意に介さなかった。

 

 真竜は、豪快に振り回す腕とその先の長く鋭い爪、太い尾による直接攻撃で人間達に直接ダメージを与えようとした。

 しかし、人間、特に重装騎士達の鎧は、頑丈な金属に魔力結界が施され、攻撃が当たり吹き飛ばされても立ち上がってくる。

 彼らの魔槍の攻撃も、少しずつではあるが確実に真竜が張る魔力結界を削り始めていた。

 真竜は、人間達の装備の進化にわずかな驚きと鬱陶しさを感じて、一気に終わらせようと灼熱の吐息(ブレス) を吐いた。

 強力な火炎となったそれは、瞬時に木々を炭化させ、咄嗟に回避して直撃を免れた冒険者達にも大ダメージを負わせた。

 囮役の身軽な彼らだったからこそ回避できたが、これが重装備を纏った騎士達だったら、躱し損ねて黒焦げになっていただろう。


 もはや、真竜に有効な攻撃方法は存在しないと皆、直感した。

 それもそのはず、この個体は真竜の中でも特に能力値の高い、「君主竜ロード・オブ・ドラゴン」と呼ばれ得る存在だったのだ。

 もはや散り散りに退却するしか術が無い……何十人もの騎士やハンターを犠牲として。

 戦場の誰もがそのような考えに至ったとき、その異変は起こった。

 

 時刻は昼過ぎ、森の中とはいえ太陽の光が十分に降り注いでいたはずなのに、まるで夜のように周囲が暗くなった。

 驚いて騎士やハンター、そして真竜までもが上空を見上げる。

 するとそこは、まるで青空を切り取ったかのように、丸く、暗い空間が発生していた。

 その奥で、太陽が薄雲に隠れた満月よりも頼りなげに、弱々しく光っている。


 一体、何が起きたのか……だれもがそう考えた次の瞬間、強力な一本の閃光が、瞬時に上空から地上まで到達した。

 そしてそれはまるで薄くなった太陽から伸びる剣のように、真竜の胴体を貫いた。

 真竜は突如己の体内に発生した強烈な灼熱の痛みに悶えたが、それがかえって傷を広げた。


 ――何が起きたのか、人間どもがなにかしたのか!


 真竜は痛みに耐え、動きを止めて周囲を見渡す。

 するとほとんどの者が驚き、狼狽える中で、只一人、片手を上空、片手を自分の方に向けて何かを念じている若い男と、その傍らで冷静に成り行きを見守る、やはり若い女が存在している事に気づいた。


 ――こいつらが、何かしている!


 そう直感したが、内臓をも貫く大きな傷を負った自分には、成す術がなかった。

 そして男が上空に伸ばした手を握った瞬間、ふっと体が軽くなったが、その彼が僅かに哀れみの表情を浮かべたときにと直感した。


 ――助からない――。


 刹那、一瞬消えた上空からの閃光の剣が再臨し、真竜の頭部を直撃して、数百年に渡り生きながらえたその命を、あっさりと奪ったのだった。

1マイル ・・・約1.6キロメートル

1フィート・・・約30.5センチメートル

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