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結果発表!

 入試の結果は翌日に発表される。

 遠くから受験しに来ている人もいるので、すぐに発表してくれるみたい。

 合格者は朝から学園の掲示板に受験番号が貼り出されるという、古典的な発表方法だ。

 門が開く前から、たくさんの受験生が詰めかけている。

 落ちてもいいと思ってはいたけど、やっぱりドキドキする。

 魔術科、と大きく書かれた張り紙を見つけて、そこに名前を発見!


「魔術科 首席合格 受験番号187番 アリスティア」


 やった! 2年間頑張って勉強したかいがありましたっ!

 お父さんにやるならトップを目指せと言われていたから、これで胸を張って報告できる。

 まさか首席とは思ってなかったけど、本当によかった。

 これなら少なくとも舐められることはないよね。


 マリナちゃんは、なんと次席だった。優秀~!

 そういえば、魔法の実技で目立ってたのって、私とマリナちゃんだけだったよね。

 平民ワンツーフィニッシュの快挙。

 ただし、発表されている人数を見ると、受験していた人はほとんど合格したようだ。

 もともと少ない魔術科だから、魔法が使えるというだけで合格するのかもしれない。

 特待生でなければね。


 入学は一ヶ月先なので、とりあえずいったん実家に帰るんだけど、少しお小遣いをもらってきたのでお土産でも探しに行こうかな。

 といっても、どこへ買い物に行ったらいいのかわからない。

 誰かに聞いてみようかな……とウロウロしていたら、マリナちゃんを見つけた。

 よし、聞いてみよう。


「マリナちゃーん!」

「あっ……あなたは、えっと、アリスティアさん」

「覚えてくれてたんだ! ふたりとも受かったね~!」

「はい、受かりました。良かったです」

「入学したら平民同士仲良くしてね」

「こちらこそ、よろしくお願いします。よかった、ひとりだけじゃなくて」


 試験のときはかなり緊張した顔だったけど、さすがに今日は笑顔を見せてくれた。

 私もホッとしたよ。全員貴族だったらどうしようかと思ってた。


「私、家族にお土産買いたいんだけど、どこか近くでお店知ってる?」

「お店ですか? どんなものを買いたいのですか?」

「できたら甘いお菓子とか。弟がいるの」

「それだったら、私もご一緒します。いくつか心当たりがあるので」

「ありがとう~助かる。私、2年前に移住してきて、全然土地鑑がなくて」


 それから、マリナちゃんの案内で、スイーツのお店に連れていってもらった。

 以前、親戚の人と観光に来たことがあるそうだ。

 あの辺鄙な村にいたときには、甘いお菓子なんて無縁だったから、全部買って帰りたいぐらい。

 この世界にもケーキとかクッキーとかあるんだーと、移住してきてほんとに良かったと思った。


 馬車には時間の余裕があったので、カフェに入ってみることにした。

 お腹もすいていたので、ドーナツのようなお菓子とサンドイッチを注文。

 なんと、この世界にはコーヒーもあった。

 涙が出そうなぐらい懐かしい。

 うちの農園でコーヒー栽培できないだろうかと、思わず考えてしまった。


 お互いに自己紹介をする。

 マリナちゃんは私の実家よりもさらに南の、海辺の漁師町から来たそうだ。

 実家も代々漁師で、女性は魚を加工したり、貝をとったりして、仕事は結構あるらしい。

 5歳の適性判定では水魔法の適性と言われたらしいんだけど、氷結スキルがあるとわかって家族からは喜ばれたそうだ。

 魚を冷やしておけるもんね。


 仕事があるならなぜ学園に来たのかと不思議に思ったんだけど、マリナちゃんには弟と妹がいて、漁業だけでは家計が苦しいらしい。

 それで、特待生になったら、辺境伯家に雇ってもらえるのではないかと思って志願したんだって。

 うちのように薬草農園なら乾燥して貯蔵することもできるけど、魚はナマモノだからねえ。

 近場で売るだけなので、そんなに儲かる仕事ではないらしい。


 でも……その問題って、私とマリナちゃんなら即解決だよね。

 氷結と収納って、控えめに言っても最強コンビじゃないかと思う。

 「食材運び放題だよね」って言ったら、マリナちゃんは目をキラキラさせて笑った。

 あ、そうだ。いいこと思いついた。


「ねえ、お願いがあるんだけど、お土産にマリナちゃんの氷、少しわけてくれない?」

「氷……ですか? いいですけど、どうするんですか?」

「家族に冷たい飲みものを飲ませてあげたいの! もうそろそろ暑いでしょう?」

「ああ、そういうことでしたら」


 なんと、マリナちゃんは自由自在に氷の形を作れるらしい。

 カフェを出てからバケツをいくつか買って、そこにキューブ形の氷をいっぱい出してもらった。すごい。うれしい。

 魚を運ぶときに、いつもそうやって細かい氷を作ってるんだって。

 まとめて収納に放り込んだら、マリナちゃんが目を丸くしている。

 収納スキル、見たの初めてらしい。

 いや、私も自分以外に見たことないけどね。


 帰りの馬車は途中まで一緒で、マリナちゃんの家の方が遠い。

 入学式の前日に学生寮で会おうと約束して、別れた。

 この世界で初めて友達ができて、楽しかった。

 学園を目指してよかったな。



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