再会 【第二部完結】
「お母さん!」
「アリスちゃん! 心配かけてごめんなさいね」
「ううん、いいの。元気そうでよかった」
「アリスちゃん、優勝おめでとう」
「おばあさま……とお呼びしてもいいんでしょうか」
「いいんですよ。ごめんなさいね、孫に気を遣わせてしまうなんて」
約束通り、アレンお兄様はおばあさまとお母さんを連れてきてくれた。
あの時、私のことを疑ったりせず、バラをくれたおばあさま。
お母さんと並んでいるのを見ると、やっぱりよく似ている。
話し方やちょっとした仕草も。
お母さんも、しばらく見ない間に少し貴族っぽくなったような気がする。
見たことのないようなドレスを着ている。
きっとロートレック家ではそれなりに大事にしてもらっていたんだね。
「前にもお話したけれど、私の夫はとても頑固な人でね。今日も来ていたのだけど、先に帰ってしまったのよ」
「そうなんですね。でも、おばあさまに会えただけでもうれしいです。ありがとうございます、お母さんを連れてきてくれて」
「寂しいわ。辺境伯領なんて遠すぎて、私は行けないもの」
おばあさま、大丈夫です!
私は毎日でも王都に来れます、一瞬で。
そう言いたいけれど、今はまだ言えない。
いつか、本当にお母さんが和解して、私も一緒にロートレック家を訪れる日がきたら。
そのときはまたお母さんと一緒に会いに来ます。
「アリス。また王都に来るときは知らせろよ」
「はい! アレンお兄様もお元気で。よかったら辺境伯領にも遊びに来てください」
「勉強するんだぞ」
「大丈夫です! 私、カイウス学園では首席なんですから!」
「そうか。優秀なんだな」
アレンお兄様は、名残惜しそうに頭をなでてくれた。
最初に出会ったときは、私のこと『野生の猿』とか言ったくせに。
『従兄弟とは認めない』と言っていたことも、忘れてしまったようだ。
アレだよね。ツンデレっていうやつ。
ぶっきらぼうなくせに、実は優しいアレンお兄様。
心の中で推し認定しておきます。
ついに国際魔術大会は終わった。
私はお母さんに瞬間移動できるようになったことを説明して、まずはお母さんを実家へ送り届けた。
お父さんとカイルが寂しがっているもんね。
久しぶりにお母さんの顔を見たカイルは涙ぐんでいた。
いくら男の子でも、不安だっただろうと思う。
お母さんが貴族だったなんて、それだけでも衝撃の事実だもん。
私は王都で少し買い物をしたくて、お母さんを実家に送った後、すぐにまた引き返してきた。
マリナと一緒に王都で買い物をして、評判のスイーツをたくさん買いこむ予定なのです。
なんせ稼いでますから! お小遣いはいっぱいある。
私が街へ買い物へ行くと言ったら、急に心配性になったアレン兄様が馬車を出してくれた。
本当はマリナとふたりで瞬間移動していた方が早いんだけど、せっかくだから馬車で少し王都観光もした。
人が多くて、歩いている人がみんなオシャレで。
お店がいっぱいあって、楽しいところだと思う。
でも、暮らすなら辺境伯領が好きだ。
自然がいっぱいあって、広い薬草畑が作れるし。
マリナの実家に行けば、海産物がいっぱいあるし。
食いしん坊の私としては、王都よりも辺境伯領の方が豊かに思える。
一週間ほど王都にいただけなんだけど、なんだかもう帰りたくなってきた。
田舎育ちの私には、都会は向かないのかな。
先輩たちは王都に親戚がいたりして、すぐ帰らない人もいる。
私たち二年生五人は、カーマイン様と一緒に馬車で帰ることになった。
行きは訓練しながらの旅で大変だったけど、帰りは気楽だ。
さすがにもう盗賊も襲ってこないよね。
そういえば、私がお母さんを送り届けたりしている間に、マリナはスタニア王国の氷魔法の彼とデートをしていたんだって。
マリナはデートじゃないって言ってるけど、王都でカフェに行ったり、一緒にお土産を買ったりしたんだそうだ。
国へ帰っても、必ず手紙をくれるって約束したらしい。
これって、恋の始まりっていう可能性もあるよね。
ローレンとケイシーは、一緒にいるのが自然な感じになってきた。
馬車の中でも、普通に隣同士に座っている。
魔導具大会に出場するって決まってから、ずっと一緒だったもんね。
ケイシーの永久就職先が決まることを祈ってるよ。
私?
私はまだ……恋はいいかな。
当分はアレンお兄様推しということで。
なんたって、まだ十三歳だもん。
これからもっとやりたいことがたくさんある。
神様、私の収納魔法は本当に万能です!
すごいです!
これからも頑張りますから見ててくださいね!
長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。
感想・誤字報告などもありがとうございます!
応援してくださった皆様にようやくお知らせできますが、書籍化が決定しました!
同時にコミカライズも決定しました!
発売日は2025年3月15日頃の予定です。
イラストはTobi先生がとっても可愛いアリスたちを描いてくださいました。
書籍版には巻末におまけSSがついていますので、よかったらぜひ書籍版の方もよろしくお願いします。
コミックの方は狐豆△先生が描いてくださることになりました!
秋頃から連載スタートの予定です。
私はコミカライズが夢だったので、今からとっても楽しみです。
第二部をなんとか完結できたので、少し休憩をいただきます。
また、第三部を書きたいなあという気持ちはありますので、気長にお待ちいただけるとうれしいです。
ぽふぽふ




