トーナメントBグループ
午後からトーナメントBグループの試合を観戦。
東の隣国クロレーヌ王立学園とアストラ王立学園の準決勝だ。
クロレーヌ王国はあまり裕福な国ではないため、選手たちの服装や装備なども、古びた感じだ。
アストラ王立学園の方は、選手の親たちがかなりの援助をしているみたいで、立派な新品の装備を身につけている。
装備だけ見ればアストラ王立学園の圧勝という雰囲気だけど、こればっかりはわからないよね。
最初に代表選手同士が握手をして挨拶をするんだけど、アストラの代表はアイツだ。デリック。
いつも人を馬鹿にしたような顔でニヤニヤしていて、すごく感じが悪い。
なんであんな態度の悪いヤツを代表にするんだろう。
握手をした瞬間に、何か暴言でも吐いたのか、相手の選手を怒らせたようだ。
審判が慌てて、間に入って止めている。
先が思いやられるよね……同じ国の人間として、恥ずかしいよ、まったく。
まずは先攻クロレーヌ王立学園の攻撃。
そこそこ強力な火魔法を使える選手がいるようで、ファイヤーボールが次々と繰り出される。
全員で一気に攻撃するのではなく、順番に三人ぐらいずつ前へ出て、交代で攻撃しているようだ。
アストラ王立学園の方は、四人が盾で防御をしつつ、後の四人が土魔法で防御壁を築いている。
なるほど、そういうやり方もあったのか。
私たちは防御に盾を使うことをまったく考えていなかった。
というか、盾で火を防げると思ってなかったんだよなあ。熱いし。
でも、多分、対火魔法用の盾があるのかな。熱くならないやつ。
でないと、手で持っていられないもんね。
さすがエリートが集まる王立学園だけあって、装備にはお金をかけているようだ。
デリックは土魔法が使えるのか、盾を持つ方じゃなくて、防御壁を築く方に回っている。
でも、見ているとあまり役に立っていないみたいだ。
デリック以外の三人が必死で壁を作っているんだけど、クロレーヌの攻撃が当たると、土の壁が崩れてしまう。
そのたびにデリックが怒ってメンバーを怒鳴っているんだけど、なんだか息が合っていないように見える。
あれなら先輩たちで勝てるんじゃないだろうか?
次にアストラ側の攻撃。
メンバーがファイヤーボールを一斉に放ったとき、クロレーヌのメンバーのひとりが不自然な倒れ方をした。
なんだか頭のあたりを押さえて、うずくまっている。
審判が試合中断の合図を出して、クロレーヌ学園の方へ走っていった。
何があったんだろう?
どうやら倒れた人は頭から血を流しているようで、救護の人に連れられて退場していった。
審判がクロレーヌの選手から話を聞いて、今度はアストラの方へやってきた。
『人間の頭を直接攻撃するのは禁止行為である』という注意のようだ。
アストラ王立学園が禁止行為をしたということ?
そんなことしなくても勝てそうな相手なのに、そんなことするだろうか?
……そう思ったけど、なんだかデリックはニヤニヤしている。
ポケットに両手をつっこんで、審判の話を真面目に聞いていないような様子だ。
審判の人はちょっと怒っていて、アストラ王立学園はイエローカードで減点になってしまった。
何やってんだか。
クロレーヌ側、二回目の攻撃。
仲間のケガに腹を立てたからなのか、一回目のときよりも火の勢いが強い。
敵は盾のない、土で防壁を築いているあたりを狙ってきているようだ。
目の前の壁が崩れて、デリックが土をかぶってしまい、メンバーに怒鳴り散らしている。
敵はデリックを狙って、仲間割れさせる作戦かも。
もしそうだとしたら、効果あったようだ。
土魔法の三人は、デリックを無視して、不機嫌な顔をしている。
クロレーヌの火魔法の勢いと、アストラ側の防御を見比べると、クロレーヌの方が優勢に見える。
デリックたちはイエローカードの減点もあるし、判定負けの可能性あるかも。
アストラの攻撃になったが、クロレーヌは一歩も引かずに防御の姿勢を見せた。
今のところ五分五分という感じか。
最終の戦いに入る前に、アストラ王立学園が作戦タイムをとった。
先生のような人が何かをメンバーに伝えると、デリックが癇癪を起こした。
先生につかみかかる勢いで、何かわめいている。
その時、ベンチのすみっこに座っていたアレンが立ち上がった。
何か長い棒のようなものを片手に持って、グランドに向かって歩いている。
メンバー交代だろうか?
結局、デリックは先生とスタッフの人に引きずられて、連れていかれてしまった。
これ以上減点されたら負けちゃうもんね。
安全策でアレンを出すことにしたのかな。
もともと優秀だったメンバーを無理矢理押しのけて、デリックがメンバーになったという噂を聞いている。
アレンは優秀なんだよね、きっと。
騎士団と一緒に盗賊と戦うぐらいだもん。強いのかも。
クロレーヌ学園、三度目の攻撃。
アストラ学園は並び順を変えて、アレンが中心に立っている。
その両脇に盾を持った四人、土魔法の人は端っこの方だ。
もう後がないから、そんなに防壁を強化する必要がないんだろう。
クロレーヌ側が火魔法を放った途端、アレンが長い棒を振りかざした。
何をしているのかと思ったら、強力な風魔法のようなもので、火魔法を払いのけている。
まるで、アレンの前に風の盾ができているように見える。
他の人たちにもまったく火魔法が届かず、押し返しているようだ。
なんだろう……あれ。まるで結界の魔法みたいに見える。
私たちが戦ったスタニアの結界とは、また違った感じだ。
しばらくすると、クロレーヌの選手たちは魔力が尽きたのか、炎の攻撃がだんだん弱まってきた。
対するアストラの攻撃は、アレンが加わったことで強烈な火魔法の集中砲火になって、クロレーヌ側は逃げ出した。
あっけなく、アストラ学園の圧勝で終わったのだ。
それなら、最初からアレンを出しておけばよかったのに、と誰もが思ったんじゃないかなあ。
デリックを出してたおかげで、危うく負けるところだったんだから。




