表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/89

意外な伏兵

 カイウス学園、三回目の攻撃。

 さっきと同じく、イーサンが結界を破壊して、先輩たちがそこを火魔法で狙う。

 しかし、そこで新たに加わった両端のふたりが、結界の穴をふさぐように水魔法を放った。

 かなり強力な噴水みたいな感じで。

 一瞬前世の消防車のホースから出る水を思い出した。

 後ろへ炎が通過するのを、水魔法で防ぐ作戦のようだ。


 イーサンはあちこちに熱光線を放って、結界を壊していくんだけど、水魔法で防がれてしまう。

 まるでイタチごっこだ。


「あ、あれ……見て、アリス! あれ、氷魔法だよ、多分」

「ホントだ。敵にマリナと同じ氷魔法の人がいる!」


 よく見ると、ひとりが吹雪のベールのような魔法を放って、結界を強化している。

 マリナのブリザードのような威力はないが、細かい氷の粒で火魔法を弱めているようだ。

 氷魔法を使える人は、マリナ以外で初めてみたので驚いた。

 隣国には普通にいるんだろうか。

 まあでも、こっちにもいるんだから、よその国にいても不思議ではないけれど。


 イーサンは結界に穴を開けまくった後は、火魔法に加勢することにしたようだ。

 ワンドを使って、最強レベルの火魔法を放つ。

 以前、トスカ高山で鳥獣と戦ったことがあるけど、あの時みたいな炎の柱だ。

 さすがに敵の防御がギョッとした顔をして、後ずさった。


 水魔法の二人が必死で炎を押し返そうとしていたが、イーサンが押し勝った!

 そして、三回目の敵側の攻撃は、二人が水魔法使いに交代したため、攻撃力が落ちた。


 結果、カイウス学園は判定勝ちで、決勝進出が決まった!

 やったね!

 先輩たちが飛び跳ねながらベンチに戻ってきて、私やマリナとハイタッチしてくれる。


「イーサン、お疲れ様! 敵の結界、どんな感じだった?」

「おう。そうだな……薄い氷とかガラス?みたいな手応えだったな。割と簡単に割れるような。だけど、火魔法は完全に防がれてたよ」


 熱光線が有効だったのは、ラッキーだった。

 あれが効いてなかったら、負けてたかもしれないな。

 なんせ、結界の魔導具を持っているのはスタニア王国だけだから、難しい敵にはとりあえず勝った。

 後は、午後から決勝の相手が決まるのを偵察するだけだ。



 いったん昼ご飯を食べるために食堂へ向かっていると、廊下でたった今対戦していたスタニア王立学園のメンバーとすれ違った。

 先頭を歩いていたリーダーっぽい人が気付いて、先輩に話しかけてきた。


「スタニア王立学園、チームリーダーのロナルド・ジャメインだ。いやあ、まさか負けるとは思ってなかったよ。上には上がいるもんだな」


 バツが悪そうに頭をかきながら、握手を求めてきたリーダーさん。

 意外とさっぱりとしたタイプみたいだ。

 負けたからといって根に持ってはいない様子。


 先輩たちが立ち話をしていると、後ろの方にいた少し小柄な選手がひとり私たちの方を見ていた。

 ユニフォームの色が違うから、多分補欠の人だ。

 もしかして、さっき水魔法使ってた人かな?


「あのう……君たちは補欠の人?」

「はい、そうなんですけど。何か?」

「カイウス学園には、氷魔法を使える人がいるって、噂で聞いたんだけど……」

「あっ、もしかしてさっきの試合で氷魔法使ってた人ですか?」


 マリナが思い出したように、うれしそうな顔になった。

 気になっていたんだろうね。希少な仲間だもんね。


「そう。途中から交代して出たんだけど、僕ともうひとり。氷魔法を使ったのは僕」

「私です。カイウス学園で氷魔法使える人って、多分私のことだと思う。他に聞いたことないし」

「君だったんだ。もしかして氷魔法使う人が試合に出てこないかなって、楽しみにしてたんだけど」

「そうだったんですね。私、自分以外の人が氷魔法使うところ、初めて見ました」

「僕も、自分以外に見たことないんだ。それで、カイウス学園にいるらしいって聞いて……あっ雪だっ」

「うふふ。こんな感じでいいですか?」


 マリナが周囲に雪を舞い散らせたので、スタニア学園の人たちが驚いたようにこっちを見た。

 指先から小さい吹雪を出して、くるっと回るマリナがかわいい。

 もう、妖精みたい。


「あの……よかったら、連絡先交換してもらえませんか? 氷魔法のこと話してみたいし」

「いいですよ! 私でよかったら……あ、私、平民ですけどいいんですか?」

「初めて出会った、同じ魔法の仲間だから。身分なんて関係ないよ」


 氷魔法の男の子は、なぜか少し顔を赤くしてうつむいた。

 うん、わかるよ。マリナ、可愛いもんね。


 その男の子とマリナの話を少し聞いていたんだけど、氷魔法というのはスタニア王国でも珍しいらしい。

 国全体を探せばまったくいないわけではないけれど、学園には今のところひとりしかいないんだそうだ。

 女の子だったらスイーツの作り方、教えてあげたのになあ。


「ねえ、マリナ。せっかく知り合ったんだし、マリナの氷結で作ったスイーツ、プレゼントしようか」

「あっそうだよね。在庫いっぱいあったよね」


 王都に来る前に、おやつはたくさん収納に入れておいたから。

 選手のみなさんで食べるぐらいはありますよ!

 カップ入りのアイスを収納から取り出すと、びっくりした顔をされた。

 収納魔法もめずらしいのかな?


「これは……何?」

「私たちが作った、冷たいスイーツです。マリナの氷の魔法で作ってるんです」

「うちの学園でも好評だったので、後で皆さんで食べてみてください」

「へえ……氷の魔法でスイーツかあ。魔法をそんな風に使うなんて、女の子じゃないと思いつかないよね。ありがたくいただくよ!」


 スタニア王立学園の人たちも食堂へ行くところだったというので、皆で昼食をとることになった。

 こんなことでもないと、他国の人と交流する機会なんてないしね。

 スイーツをプレゼントしたのが好印象だったのか、みんなフレンドリーだ。


 ちなみに言語は似ていて、方言のようななまりはあるけれど、普通に会話はできる。

 これは大陸のどこの国に行っても、基本の言語は同じみたいだ。

 私とマリナはあまり積極的に会話には加わらず、先輩たちの話を聞いていたんだけど、スタニア王立学園の選手は全員貴族なんだそうだ。

 でも、前日のエルデン学園の生徒は、平民もいたらしい。

 あの筋肉ムキムキの人たち、エルデン領の騎士団を目指している人たちだったみたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ