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光の魔法

 私とマリナとイーサンは、カーマイン様の特訓を受けて、『熱光線』のスキルを完成させた。

 このスキルを使うときには、マリナが使っているダイヤモンドで加工したワンドが有効だとわかった。

 なので、私とイーサンは普段使っている火魔法用のミスリルワンドとダイヤモンドワンドの二本を腰にさげている。

 これ、間違わないようにしないと。

 ダイヤモンドワンドで強力な火魔法を使うと、ワンドが劣化してしまう。


「ねえ、イーサン。これ、とっさに間違わないようにする良い方法ないかな?」

「だよなあ。俺も間違いそう」

「そういう君たちのために、武器屋と工夫した新作がこれだ」


 セドック先生が、ワンドの完成品を入れた箱を持ってきて、目の前に広げてくれた。

 おお。

 持ち手部分の革の色が違う!

 ダイヤモンドコーティングのやつは、白の持ち手だ。

 ミスリルのやつは、赤の持ち手。


「もともとダイヤモンドコーティングは、マリナ嬢専用ということだったから、間違うことはないと思っていたんだが」

「セドック先生、これは助かります!」


 今回は火魔法に特化したミスリルワンドや、他の属性に特化したワンドの試作が上がってきている。

 風魔法に特化したワンドは芯がシルバーだそうだ。

 土魔法はどのワンドでも使えるが、相性がいいのはミスリルかシルバーらしい。


 ちなみに私はレーザービームのイメージがはっきりしているからか、どのワンドでも熱光線は出せる。

 ただ、威力はやっぱりダイヤモンドコーティングが上。

 イーサンもダイヤモンドコーティングの方がうまく発動できるようだ。

 間違ってミスリルの方で熱光線を出したとしても問題はないけれど、逆が困るんだよね。

 うっかりダイヤモンドで火魔法を使ってしまうと、もったいないことになっちゃうから。

 なので、はっきりと見た目が違う方が助かる。


「今回特別発注したダイヤモンドワンドは、火魔法を制限する機能をつけてもらってある。なので、間違って火魔法を出してしまったとしても、威力が小さいのですぐに気付くだろう」

「えっそうなんですか?」

「本番で間違えてワンドをダメにされたら困るからな」


 さすがセドック先生! 

 私たちのミスなど、予想済みでした。

 ホッとひと安心。

 見せてもらった新作のワンドは、デザインも洗練されていて、細かいところにまで進化が見られる。

 世界魔術大会向けだから、きっと辺境伯様も出費してくれたんだろうな。


「セドック先生……このワンドが世の中に出たら、辺境伯様が売ることになるんでしょうか?」

「いや、売らないと思うぞ。敵対する勢力に武器を渡す可能性があるからな。ただ、一度世の中に出てしまえば、類似品が出回るのは間違いないだろう。だから、今のうちに特許をとれるだけとっておくことが大事だぞ?」

「わかりました! 論文の方も頑張ります」


 魔法の種類別に特化したワンド。

 これもそれぞれ分けて特許を申請しておいた方がよさそうだ。

 魔術大会出場前になんとしてでも書類を出してしまわないと!

 ますます忙しくなるけど、私には収納という隠れ部屋があるからね。

 あそこで仕事をすれば、時間はなんとかなる。

 チート万歳。



「せんぱーい! 休憩するんだったら、おやつありますよ~!」

「おー、いつも悪いな! よし、ちょっと休憩するか!」


 戦闘部門に出場する三年生八人と、私たち三人はだいたい別々に訓練している。

 私たちは補欠なんだけど、隣国の防御が強すぎて歯が立たない場合の、切り札ということになっている。

 なので、それ以外の場合で出ることはない。

 手の内を見せるわけにいかないからね。


 皆がグランドからベンチに戻ってきたので、マリナとふたりでスイーツの用意をする。

 今日は疲れがとれるという、レモンの薄切りを蜂蜜に漬けたものを持ってきている。

 これをチーズケーキにかけると美味しいんだよね。

 しかもブルーベリーアイス添え!

 私とマリナはこの国一番のスイーツ職人だと思う。


「うわー今日もうまそうだな!」

「ほんと、疲れがいっぺんに抜けるぜ」

「そう言っていただけると、作りがいがあります! ねっマリナ?」

「美味しそうに食べてもらえて、うれしいです」


 マリナはまだ三年生の先輩たちに慣れていないようで、緊張して顔を赤らめている。

 年がひとつ上というだけで、同級生の男子よりはしっかりしていて大人に見えるよね。

 汗を流して戦闘訓練をしている先輩たちは、かっこいいと思うし、私も時々だけどトキメくことがあるよ。

 先輩たちはみんな貴族だから、喜んでもらえると、私たちのスイーツが貴族にも通用するという自信がわいてくる。


「それで、どうなの? アリスちゃんたち三人の秘密兵器の方は」

「はい、なんとか形になってきたと思います。まあ、結界の強度がわからないので何とも言えないですけど」

「だけど、薄い金属ぐらいの強度なら破れるんだろ?」

「そうですね……うまくいけば」


 今のところ、三人の熱線を一カ所に集めて、集中攻撃する訓練をしている。

 ひとりでは無理でも、三人で集中攻撃すれば、強度の高い結界でも敗れるのではないかという算段だ。

 それに、結界がもし光を透過するようなら、結界の向こう側に焦点を合わせて攻撃することが可能かもしれない。

 コントロールが悪いと人間に当たってしまう可能性があるので、真剣に訓練しないとね……


「先輩、王立学園の情報は何か聞いてます?」

「いやあ……向こうは完全に取材をシャットアウトしてるらしいぜ。どっかの領地にこもって、合宿訓練してるって聞いたけどな」

「合宿ですか」

「おおかた、ザダリア侯爵令息が取り仕切ってるんだろうけどな」

「アレン・ロートレックはその合宿に参加してるんでしょうか?」

「ロートレック? ああ、補欠のやつだよな? いや、そいつは魔導具部門で出場すると聞いているぞ?」

「そうなんですね」


 ということは、戦闘部門で王立学園と当たることになっても、アレンは出てこない。

 だったら、私たちが出て遠慮なくやっつけちゃってもいいよね。

 王立学園は魔導具に力を入れていないって前に聞いたけど、何を出品するんだろう。

 私がそれを調べようとすると、ロートレック家がスパイだと言われちゃうからうかつには動けない。

 ちょっと気になるけど、まあ仕方ないか。


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