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令嬢たちの協力

 翌日早速キャロラインに、医療用魔導具の件を相談してみることにした。

 ローレンやマリナと話しているうちに、これはクラスの女子に相談しないと、かえってまずいということになったからだ。

 錬金クラスなのに、医療用魔導具を作るということ自体が、ちょっと無謀だったかもしれないよね。


「あの、キャロライン様、今日って少しお話するお時間をいただけないでしょうか?」

「あら、アリスとマリナの方からお誘いだなんて、めずらしいわね。何か問題でもありまして?」

「実は国際魔術大会に出品する魔導具のことで、キャロライン様にいろいろ教えていただきたいんです。医療用の魔導具なんですけど……」

「まあ! 医療用ですって? そんなことでしたら、もっと早くに声をかけてくださればよかったのに! 今頃そんなことをおっしゃって、大会に間に合いますの? 大変ですわ。他の女子にもすぐ招集をかけないと!」

「あ、いえ、ちょっとお話聞いていただくだけでいいんですけど……」

「何をのんきなことをおっしゃってますの? 国際大会ですのよ? 皆で一致団結して力を合わせないと、勝てませんわ! わたくし、治癒班の女子に伝えてきますので、失礼しますわね!」


 言いたいことを言うだけ言って、キャロラインはスタスタと立ち去ってしまった。

 うん、相談してみてよかった。

 この件は、もうキャロラインに任せよう。

 

「傷が治りやすくなる、粘着テープ、ですの? ちょっとどういうものかイメージできないんですけど」

「はい、絆創膏という名前をつけたんですけど、ポーションの成分の入った軟膏を、丈夫な布に魔力で定着させて、貼り薬を作りたいんです」


 キャロライン様と、いつものお茶会メンバーの女子が、不思議そうな顔をして私が作ったサンプルを見ている。


「この、ぐにゅっとした軟膏の成分はなんですの?」

「海藻です。マリナの実家ではこれをお料理して食べるんです。貼り付けるとひんやりして、軽いやけどに効果があるって言われてるそうです」

「ということは、もともと消炎成分がありますのね?」

「はい、念のため図書室から薬草図鑑を借りてきました」


 あれから調べてみたんだけど、こごり草は薬草図鑑にのっていた。

 食べると胃腸に良いし、透明のゼリー状の部分をやけどに貼ると、消炎効果と保湿効果があるらしい。

 つまり健康に良いスイーツが作れてしまうという、素晴らしい素材だった!


 湿布にするなら、ミントの葉を少し入れて、清涼感があるほうがいいよね。

 絆創膏の方は、粘着テープの中央に軟膏のついたガーゼをくっつけるイメージ。

 前世の傷テープの形そのままだ。


「アリス、マリナ。これは世の中の役に立つ発明ですわね! 私たち全力で協力させていただきますわ!」

「よろしくお願いします。私たちは治癒魔法が得意ではないので、うまく作れる自信がなくて」

「わがハンベル伯爵家は、布地も扱っていますから、カイウス辺境伯家へ包帯などを納品しておりますのよ? 最高の素材を探してみせますわ」

「私の実家の子爵領は、薬品作りで有名ですの! 軟膏を腐らせない方法なら、私にまかせてください」


 次々に強力な助っ人が現れて、安心した。

 こういうことは貴族の力を使ったほうがいいよね。

 他の出場者もほぼ全員貴族なんだし。

 平民とは違って、コネクションを持っているなら、使ったほうがいい。


「皆様、ありがとうございます。後は、研究論文の方なんですけど、どうやって効能を試すかというのが問題なんです。そんなに怪我人や火傷をした人が都合よく見つかるわけないでしょう?」

「そうですわね……わたくしは教会へ寄付とボランティアに行くことがあるのですけど、少し寄付を多めにすれば、協力してくれる人が見つかるかもしれませんわ。孤児院あたりも、寄付金次第ではなんとかなりましてよ?」

「うーん。いいんでしょうか? そんなところで学生が治験みたいなことをしても……」

「あら、だって医学の発展のために研究するのでしょう? それに、見たところ身体に悪い成分は何もありませんわ!」

「そうですわよね、キャロライン様。身体に良い成分しか使っていませんわ!」


 医療に使うものに許可は必要ないのかと聞いてみたら、成分をきちんと明記してあればいいらしい。

 ちょっとした塗り薬などは、化粧品と同じで、地域の特産品として扱われるそうだ。


「もしこれが良い製品になれば、ハンベル伯爵家が販売に協力させていただきますわよ」

「じゃあ、キャロライン様にお任せします! 薬草やこごり草は、うちの薬草農園やマリナの実家から提供しますので!」


 女子たちがわーっと拍手をしてくれた。

 みんな乗り気になってくれて助かった。

 仲間の中に、軟膏に詳しい令嬢がいて、それも頼もしい。


「キャロライン様、ケイシーとローレンが腰痛ベルトを担当しているんですけど、そちらの方もデザインの相談をさせていただいてもいいですか?」

「もちろんですわ! 実家の方から優秀なデザイナーを呼び寄せましょう」


 よし。これで冷凍箱以外のことは、キャロライン様たちに丸投げできそうだ。

 冷凍箱の方も、ほとんど完成したようなものだし、そろそろワンドの試作品もあがってくる。

 やれることはやりきったよね。


 私たちの魔導具が隣国の結界装置に勝てるかどうかなんて全然わかんないし、王立学園からはどんなものが出てくるのか、情報がない。

 万が一のために、戦闘部門の方でも勝てるようにしっかり訓練しておこう。



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