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冷凍箱ができた!

 今日は午後から錬金術の授業があって、そのまま放課後まで大会の準備をすることになっている。

 ケイシーが良い知らせがあるって教室で言っていたから、それを楽しみに研究室へ向かう。

 きっと良い素材が見つかったのかな。


 「それでは報告します! 僕とローレンでずっと魔力伝導線の研究をしてたんだけど、ここまで細くすることができました。切れにくい繊維状の伝導線。これなら布に編み込むこともできると思う。どうかな?」


 直径0.3ミリぐらいの、糸のような金属線。

 耐久性は、人間の力で軽く引っ張ったぐらいでは切れない。

 まして、編み込んだりした場合は、簡単には切れないだろうということだ。

 ただし、摩擦には弱いので、固いモノでこすると劣化するらしい。

 金属だからそれは当然だね。


「ということは、治癒班の人に協力してもらったら、そこに治癒魔法を循環させることはできると思う?」

「うん、それもローレンの知り合いに頼んで実験してもらった。一度治癒魔法を循環させたら、十日ぐらいは効果があるらしい」


 ケイシーはどうだ、というように胸をはって自慢げな顔をしている。

 よくやってくれました! パチパチパチ、とみんなで拍手をする。


「一応、大会ではそれでもいいとして、魔石を使ったらもう少し効果を伸ばせる可能性がある?」

「もちろんそれも実験したよ! うちの鉱山のクズ魔石の出番だからね!」


 ローレンもいつになく上気した顔で、得意げだ。

 私たちがいない間に、ふたりで頑張ってくれていたのがよくわかる。


「じゃあ、魔導具腰痛ベルトは、特許申請しようよ! もしどこかにスパイがいてアイデア盗まれたら困るし」

「それなんだけどさ、アリス。申請は魔導具クラブ全員でしようぜ。みんなで考えたんだし」

「うん、でも今回私とマリナとイーサンは、ほとんど役に立ってないじゃない? べつにケイシーとローレンで申請してくれてもいいよ?」

「それじゃあ、僕たちがチームで動いてる意味ないだろ? 誰かが勝手なことをできないようにするためにも、申請は全員でした方がいいと思う」

「そっか。ケイシーがそう言うんなら、私はそれで。みんなはどう?」


 イーサンとマリナも、特に反対ではないようだ。

 まあ、誰かが勝手なことをできないように、というケイシーの意見も一理ある。



「じゃあ、次はこれ! こっちが今日の本題です!」


 ケイシーが小さな宝石箱のような箱を取り出した。

 銀細工が美しい、三十センチぐらいの大きさの箱だ。

 パカっとケイシーが箱の蓋を開くと、中には手のひらサイズの氷が入っていた。

 溶けてない!


「これ、今朝マリナに氷魔法を流してもらった。 で、魔石で循環させて増幅してる。朝、実験で氷を入れてみて、もう昼過ぎだけど溶けてないだろ?」

「本当だ! すごいすごい! マリナ、いつの間に?」

「えへへ。アリスを驚かせようって、今朝ローレンとケイシーがこっそり呼んでくれたんだ。アリスずっと冷凍箱が欲しいって言ってたでしょう?」

「うん、欲しかった! ありがとう! ローレン、これは大型化できるの?」

「かなりお金かかるから、うちでは無理だけど、資本を出してくれる人がいたらできると思うよ。うちは魔石を提供するだけ」


 そりゃあ、辺境伯様が喜んで出してくれそうだけどな……

 とりあえず、大会用にはこのサイズでいいよね。

 学生の研究なんだし。氷が溶けないというところを見せることができたら十分だ。

 これも特許さえ申請しておけば、後からゆっくり製品化したらいいし。

 あーすぐにでも自分用に欲しい! 収納魔法があっても欲しい!


「そろそろ改良版のワンドの方もできてくるだろうし、これぐらいあったら魔導具部門いけるかなあ?」


 ケイシーの疑問に、うーん、とみんなで顔を見合わせてしまう。

 こればっかりはわからないけど。

 カーマイン様が言うには、ワンドだけでも勝負できるっていう話だったよね。

 だったら、それにプラスして冷凍箱と腰痛ベルトがあったら、もう十分だとは思うけど。


「私、あとひとつだけアイデアあるんだけど、それは医療班の女子に協力してもらおうかな、と思っていて」

「それも医療器具なの?」

「絆創膏っていうんだけど……」


 私は昨晩試しに作ってみた、試作品を収納から取り出した。


「これは、マリナの実家の近くでとれたこごり草っていう草が原料なんだけど、水分を加えて煮るとこういうぷるぷるの素材になるの。

 だから、下級ポーションとこごり草を煮詰めて、そこに魔力を流して布に定着させると、こんな感じ」


 湿布のようになった布を、腕にぺたっと貼ってみせる。

 ぴったりくっついて、簡単にははがれない強度にしてある。


「どんな効果があるの?」

「傷を乾燥させず、ポーションを貼っていることで治りやすくする効果。ただし、問題があって」

「どんな?」

「腐らないように保存させるにはどうしたらいいのかわかんない」


 今日みんなが集まるのはわかっていたんだけど、時間切れで調べるのが間に合わなかった。

 私、治癒魔法まだうまく使えないし。

 とりあえず下級ポーションで試作してみたんだけど、治癒魔法が得意な人が作ったら、もっといいものが作れそう。


「それ、キャロライン様に相談してみた方がいいんじゃない?」

「ローレンもそう思う?」

「うん、治癒魔法のことだったら、キャロライン様を通さないと、後でいろいろ言われそう……」

「そうだよね……どうしてわたくしに相談なさいませんのっ!とか言いそう」


 マリナがキャロラインのモノマネをしたので、男子はクスクス笑っている。


「僕、ちょっと発言していい? それも結局腕に貼るんだったら、さっきの腰痛ベルトの繊維使った方が効果高くない?」

「うーん、それはそうなんだけど、そうなると使い捨てにしづらいでしょう? 怪我だと汚れたら捨てるじゃん?」

「あ、そうか。なるほどな」


 ケイシーの意見も尤もなので、怪我に使うものと、腰痛のように慢性の痛みは分けて考えることにした。

 魔力導線を使った生地の方は、腰痛ベルトだけじゃなくて、手足のねんざに使えるサポーターなども作ることに。

 絆創膏の方は、キャロライン様に相談案件となった。


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