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コーヒーゼリー作ってみた

 翌日マリナとふたりで朝からスイーツ作り。

 トニオくんとアンナちゃんは、朝早くから張り切って海へ出かけたらしい。

 こごり草、たくさんとってきてくれるとうれしいな。


 台所を借りて、昨晩の残りのこごり草を煮詰めてみる。

 固すぎたら水を足しながら、ちょうどいい固さになるように調節して。

 確かに味はないんだけど、これ、きな粉があったらわらび餅みたいな食感だよなあ。


「じゃあ、次は果実水で煮詰めてみよう! で、固まりかけたときに中にフルーツを入れて冷やす」

「うわー。美味しそう。多分そういう感じかなって想像してた」

「冷やすのはマリナ、お願いね!」


 ベリーや桃を甘く煮たやつをいれると美味しそうだなあ。

 あ、そうだ。

 せっかくだからコーヒーゼリー作ってみよう。

 お砂糖入れて、ミルクも入れておいたら子どもでも食べられるよね。

 私はミルクなしのコーヒーゼリーに、生クリームかけるのが好きだけど。

 フルーツゼリーとコーヒーゼリーができあがった頃に、トニオくんたちが帰ってきた。


「えっ、これ全部こごり草で作ったの?」

「そうよ。今からみんなで食べようね」

「やったー! いっぱいとってきたかいがあったな」


 トニオくんが背中に背負った籠を下ろすと、こごり草が満タンに入っていた。

 重かっただろうなあ。

 トニオくん、細く見えるけど力持ちなんだね。


 こごり草をゼラチンの代わりに使うアイデアは、ばっちりだった。

 入れる量で固さを調節できるから、少し固めに作ったらあんみつの中に入っていた四角いやつ?みたいなのも作れる。


「まあ、美味しいわ! こごり草にこんな使い方があるなんて知らなかったわ」

「お母さん、そもそもうちはフルーツなんてめったに食べたことがなかったじゃない」

「そうね。マリナが学園に行ってからね。こういうハイカラなものを食べるようになったのは」

「この町はお店が少ないからな。アリスちゃんが野菜を持ってきてくれるから、近所の人もみんな感謝してるんだよ」

「そんな……おじさんはいつも生きのいい魚をいっぱい釣ってきてくれるじゃないですか。おあいこです!」


 私たちがおしゃべりをしている間に、トニオくんは次々とゼリーを平らげていく。

 さすがにブラックコーヒーゼリーは苦かったみたいだけど、ミルクコーヒーゼリーは気に入ったようだ。

 おじさんはブラックコーヒー味が好きみたい。


「マリナ、これでまたキャロライン様たちに喜んでもらえるね」

「うん。こごり草なんてタダみたいなものだから、儲かるね」


 マリナはぺろっと舌を出して笑った。

 しっかり売るつもりになっているようだ。


 みんなでスイーツを堪能した後で、洗い物をしようとして、鍋がべたべたになっていることに気付いた。

 すぐに洗わなかったから、こびりついてしまったらしい。

 なんだか、表面がぶよっとしたシリコンみたいな手触りになっている。


「ああ、大丈夫だよ。もう一度水を入れて煮たら溶けるからね」

「あ、おばさん! ちょっと待って、そのお鍋貸してください!」


 こびりついたこごり草を指ではがそうとしてみるけど、結構しっかりとくっついている。

 これって、絆創膏の素材にならないだろうか。

 ポーションをこごり草で煮詰めて、清潔なガーゼに塗っておけば、傷が治りやすくなるかも!

 傷用の軟膏っていうのはすでにあるけど、布に軟膏がついていて貼れるようなやつはないよね?

 湿布薬みたいなのが作れそうな気がする!


 ただ……問題は保存か。海藻だから腐ったりするかな?

 たしか、キャロラインたちが授業で軟膏とかハンドクリームとか作ってたから、今度会ったときに聞いてみよう。

 うまくいけば、魔導具大会に出品する魔導具の数を増やせるよね。


「じゃあ、おじさん、おばさん、また来ます!」

「お父さん、お母さん、またね! トニオとアンナはいい子にしてね」

「いつでも帰っておいでね。あんまり無理せず、身体に気をつけるんだよ」

「そうだ。うちはマリナのお陰でお金には困ってないからな。あんまり無理するなよ」


 無理しているつもりはないけど、注文はどんどん増えている。

 私たちより、おじさんとおばさんが無理をしていないか心配だ。

 もし腰痛ベルトを発明できたら、一番に持ってきますからね!

 新鮮な海産物をいっぱい収納して、いざ辺境伯家へ出発。


 いつものように辺境伯家の裏口付近の目立たない場所へ転移して、門番さんに声をかける。

 もう顔パスで通してもらえた。

 門番さんも、私たちのスイーツを楽しみにしてくれているひとりだ。


 倉庫で品出しをしていると、辺境伯様がやってきて驚いた顔をしている。

 あれ? 今日来るって伝えてあったはずなんですけど。

 ……と思っていたら、ヒソヒソと声をひそめて話しかけられた。


「お前たち、来るときは俺の執務室へ転移してくるようにと言っただろう」

「あっ、すみません。忘れてました」

「忘れてましたじゃないだろう? 人に見られたら危ないと言ったのに」

「すみません、誰にも見られてないです、多分……」

「まあいい。カーマインがお待ちかねだぞ」

「あ、はい。納品が終わったらすぐにうかがいます」

「騎士団の方へ直接行ってくれ。イーサンとふたりで訓練すると行ってたからな」


 カーマイン様には先日イーサンから連絡してもらって、今日は私たち三人の攻撃と防御を見てもらうことになっている。

 私は戦闘経験がなさすぎて、アイデアをまとめることができないんだもん。

 カーマイン様には聞きたいことがいっぱいある。


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