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魔導具クラブ結成!

 楽しいお茶会はあっという間に終わり、マリナとふたりで戻ってきた。

 治癒魔法の練習は新鮮だったけど、ちょっと疲れたなあ。

 思うんだけど、私やマリナは治癒魔法が苦手なんだし、得意な人に手伝ってもらうというのはアリかもしれない。

 キャロライン様はともかく、治癒班の令嬢たちは、作業や働くことに抵抗はなさそうだしね。


 実は、治癒魔法が使えるようになったら、ちょっと作ってみたい魔導具のアイデアがある。

 小さいものなら、絆創膏。

 この世界には包帯やガーゼはあるけれど、前世のように「傷が治りやすい絆創膏」なんていう、ハイグレードなものは存在しない。

 あったら売れると思うんだよなあ。


 今ケイシーとローレンが研究してくれているけれど、魔力を循環させることができる繊維のようなものが開発できたら、腰痛ベルトとか作ってもよさそう。

 治癒魔法が使える人はわりといるので、そういう人に魔力を込めてもらって、たとえ1ヶ月でも繊維の中を循環させて……

 効力が切れてきたら、また治癒魔法使いの人に魔力をこめてもらえばいいよね。

 このアイデア、ローレンたちに会ったときに、相談してみようかな。


 それにしても、週に一度の錬金の授業だけでは、魔導具大会の準備が全然間に合わない。

 放課後にクラブ活動として研究室を開放してもらえないか、セドック先生に相談してみようかな。



 翌日、魔導具大会メンバーに、セドック先生の研究室に集まってもらった。 

 先生は不在だけど、研究室を使う許可をもらって鍵を預かっている。


「……ということで、魔導具クラブを結成することになりました!」

「なんだよ……突然呼び出しておいて、魔導具クラブって」

「だって、もう少しちゃんと報告し合わないと、それぞれの研究がどうなってるのかわからないでしょう?」


 ケイシーは「忙しいのに」と、ぶつぶつ文句を言っている。

 ローレンとケイシーは最近一緒に行動しているらしく、鉱山と学園を行ったり来たりしているようだ。

 先生からも、私たちは大会の準備を優先させてよいと言われているしね。


 ふたりからの報告では、魔力循環ができる金属製の線は今のところ限られていて、有力なのは銅線らしい。

 高い素材ではないし、ある程度丈夫で扱いやすいからだそうだ。

 シルバーの方が効果は高いけれど、流す魔力量が少ないならシルバーである必要はないということだ。


 私はここ最近思いついたアイデアの説明をする。

 冷蔵庫が間に合わなかった場合は、繊維状にした魔力伝導線を織り込んだ生地を作って、腰痛ベルトを作る!

 ポーションで作った軟膏を布に定着させることができるなら、絆創膏を作る!

 そういう医療関係のものは、クラスの女子が協力してくれることも話しておいた。

 何がポイントになるかわからないから、色々試しておくといいよね。


 ケイシーは最初面倒くさそうに聞いていたけれど、繊維を開発してくれたらケイシーの特許にしていいよ、と言ったら目の色が変わった。

 せっかく頑張っているんだから、卒業後の役に立つといいよね。


「ところでさあ、王都にいる親戚から聞いた話なんだけど、王立学園では大会出場メンバーのことで一悶着あったらしいよ」


 イーサンは兄が仕事で王都と領地を行ったりきたりしているらしく、今回は情報収集に協力してくれているらしい。


「一悶着って?」

「なんだか、最初に決まっていたメンバーを蹴落として、無理矢理出場メンバーに入ったヤツがいるらしくてさ。親が金に物を言わせて、ねじ込んだんじゃないかって言われてる。デリック・ザダリアって、ザダリア侯爵家の長男」

「えええ? ザダリア侯爵家?」

「それで、元々メンバーだった割と才能のあるやつが、補欠になったらしくて、名前なんだったかな……」

「もしかして……アレン・ロートレック?」

「あ、そうそう、それ! なんでアリスが知ってんの?」

「辺境伯様から聞いたの。アレンが補欠で登録してるって」


 私は、新学期が始まってから起きた出来事を時系列で順番に説明することにした。

 私たちの邪魔をするために、お母さんがロートレック家に連れ戻された話をしたときに、全員が「ええっ!」と声を上げた。


「アリスって、実はロートレック伯爵家の直系なの?」

「うん、ローレンに隠してたわけじゃないんだよ。私もほんとに最近知ったんだ」

「それで、あんなに魔力量があるのか……納得したよ」


 うんうん、とケイシーはひとりで納得しているが、私の魔力量は神様ギフトのチートだけどね。


「ザダリア侯爵家とロートレック伯爵家の間に因縁があるっていうの、王都の貴族の間では割と有名な話だぜ。俺でも知ってるぐらい。じゃあ、アリスの母上は、今王都のロートレック家に?」

「多分ね……今辺境伯様が密偵を送り込んで、調べてくれてる」

「なるほどなあ……けど、そのデリック・ザダリアは、性格が悪くてメンバーの間では嫌われてるらしいぜ。アレンが補欠になったことで、カイウス学園にとっては有利になったんじゃないかって、兄さんが言ってたよ」


 うーん。ザダリア侯爵家が絡んでいるとしたら、本当にお母さんは実家にいるのかな?

 もしかして、ザダリアに連れていかれたんだとしたら大変!

 お母さんに婚約を迫っておきながら「子どもだけ生ませて捨てる」とか言ってた、極悪非道なやつじゃん。

 ザダリア侯爵がお母さんを誘拐しておいて、ロートレック家に罪をなすりつけてる可能性もあるんじゃないの?


「ねえ……なんとかして、アレン・ロートレックと接触できないかな?」

「接触してどうすんの?」

「お母さんの無事を確かめたい……そもそもザダリア侯爵家がロートレック伯爵家にちょっかい出すのって、ロートレック家は魔力量が多いからだって聞いた。だとしたらお母さん危ないかも」

「うーん……アリスが接触するのは危ないと思う。それこそ、今の話だとザダリア侯爵ってのはアリスを狙ってるだろ? 出場できないようにさせる、とか考えそうじゃん。それにアレン・ロートレックがどんなヤツかも知らないんだろ?」

「それは、そうだけど」

「……俺が行ってきてやろうか?」

「イーサンが? でも王都まで一週間ぐらいかかるんでしょ?」

「早馬だと三日ぐらいで着くらしいから、一週間あれば帰ってこれると思うよ。ちょうど明日兄貴が王都へ帰るから、便乗できる」

「じゃあ、お願いしてもいい? でもどうやって接触するの?」

「そこはまあ、任せてよ。フラナガン子爵家は社交だけが取り柄だからね」


 イーサンは、「そうと決まったらすぐに出立の準備をするよ」と言って、先に帰っていった。

 信用できる仲間がいるってありがたいな。

 去年学園に入学したときは、こんな風に貴族の人たちと仲良くなれるなんて、想像していなかったのに。


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