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魔導具作りは楽しいのです

 二週間は学園に軟禁されるので、この間に何か魔道具を開発したい。

 アイデアはいくつかある。

 なんてったって、私には前世の記憶があるので。

 あれば便利なものはいくらでも頭に浮かぶ。

 たとえば、熱風だけで作れるドライヤーなんかは、案外簡単に作れるんじゃないだろうか。

 ただ、大会に出す魔導具としては、ちょっと地味だなとは思うけど。


 ワンドの種類を増やす方は、武器屋さんの方に任せてあるから、私たちはちょっとした便利グッズの開発をしたい。

 もう時間もそんなにないしね。

 一応錬金クラス全員にそのことを伝えて、アイデアを持ち寄って相談することになっている。


 本当は一番作りたいものは冷蔵庫なんだよなあ……

 私とマリナの商売を拡大させるために、一番必要なのはそれだよね。

 でないと、全部私が配達していたら、これ以上お客様増やせないし。

 なんとか実験的に小さいものでも作れないかなあ。

 

 有名な魔導具としては、辺境伯様も使っていた拡声器っていうのがあるけど、あれは前世のマイクロフォンとは全然違った形で、箱形だ。

 箱の一面に穴があいていて、その前で話すと、声を風魔法に乗せて反対側から出る仕組み。

 魔石で風魔法を増幅さえているらしい。

 なので使い方にちょっとコツがあって、風魔法が全然使えない人には難しいそうだ。

 でも、少しでも魔力があれば、練習すれば使えるというようなものらしい。

 冷蔵庫とかはずっと設置しておくものだし、魔導具の持ち主の魔法に頼るものだと役に立たないよね。


 となると、箱か魔石自体に、マリナの氷結スキルを定着させなければいけないわけで。

 ……どう考えても無理だよね。そもそも物体への魔力の定着は無理だってセドック先生が言ってたし。

 冷蔵庫と考えるからややこしいわけで、私のスキルを生かすんだったら、マジックバッグを作る方が現実的か。

 誰でも異空間に物をしまえるやつ。夢みたいな話だけど。

 それだったら冷やそうとしなくても、冷えた状態でしまっておける。

 この世界にはマジックバッグがないから、きっとそれは国の研究室とかで研究されているに違いない。

 そもそも私たちは空間魔法や時間魔法を習ってないから、これも無理か。


 物体に魔力を付与するのは無理だ。

 でも私が作ったワンドのように、魔力を伝導させることはできる。

 あれは、手元から出した魔法を伝導させて、増幅させてから放出するという仕組みだもんね。

 だとしたら、放出させずに、魔力を循環させることはできないんだろうか。

 たとえば、箱にコイル状の伝導線をはりめぐらせて、そこに氷結スキルを循環させて、魔石で増幅。

 そういうのできたら、冷凍庫ができそうなんだけどな。


 カーマイン様に相談したいなあ。

 力になってくれないかな。

 まずはその伝導線に何を使うか、っていうところからだよね。



 数日して錬金術の授業の日。

 私は新しい魔導具のことを皆に相談してみることにした。

 相談といっても、アイデアを一方的に話してみるだけなんだけど。

 ひととおり説明しても、みんなあんまりピンときていないようで、セドック先生が説明を加えてくれた。


「魔力を伝導線で循環させるというアイデアは悪くない。すでにその技術は魔導具に使われているぞ」

「そうなんですね。ということは、魔力伝導線というものはすでにあるんですね!」

「あるにはあるが……問題はだな。魔力は循環させることで、大なり小なり熱を発するということなんだ」

「あー……じゃあ冷やすのには向かないですね」

「あまり大きな箱だと、熱の方が大きくなってしまうかもしれんな。しかし、これぐらいの小さい箱なら、案外冷えるかもしれんぞ?」


 セドック先生が両手で形づくってみせたのは、両手に乗る宝石箱ぐらいのサイズだ。


「そんな小さい冷凍庫って、需要あるでしょうか」

「まあ……ないだろうな。実用的ではない。ただし、魔術大会でアイデアを見せる、というだけなら有効かもしれんぞ? 先に商業ギルドに登録してしまえば、このアイデアの冷凍庫を作って売ることはできなくなるからな。あとは数年かけて開発すればいい」

「なるほど……大会でアイデアを披露するだけなら、できるかもしれませんね!」

「そうだ。その調子で、小さなアイデアを形にしていくことを考えるといいだろう」


 そこまで話すと、ずっと黙り込んでいたケイシーが手をあげた。


「その伝導線に使う素材の研究、僕にやらせてもらえませんか? いくつか心当たりがあって」

「私も協力します! 金属の抽出ならうちの鉱山で実験するのが手っ取り早いと思うので」

「ケイシー、ローレン、ありがとう! 助かる」


 そっちの方をケイシーとローレンが引き受けてくれるなら、私は他の研究に取り組めるから助かる。


 そうだ。いいことを考えた。

 収納の中は時間が止まっているんだから、あの中で考えごととか研究をしたらどうだろう。

 そうしたら時間は無限に生み出せるんじゃない?


 ポーション作ったりする作業も、収納の中でやるようにしようかな。

 そうと決まったら、早速収納の中に作業場を作ろうかな。

 机とか椅子とかを入手しないとね。

 学園の不要品置き場に行って、適当に見繕ってみよう。


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