表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/89

ロートレック家の事情

 とりあえずマリナと一緒に私の実家へ帰って、辺境伯様の話を報告することにした。

 今学園に戻ると、まだ黒服の残党がいるかもしれないし。

 私たちは転移で移動しているので、黒服たちに見つかる可能性は低い。

 今は実家でじっとしているのが正解かもね。


「そうか。ロレッタは実家へ連れ戻されたのか……」

「うん。だから、辺境伯様が言うにはお母さんは無事だろうって。外聞を気にする伯爵家だから、表向きは妹を許して連れ戻したということにするんじゃないかって。お父さんは、ロートレック伯爵がどんな人か知っているの?」

「そうだな。元はその家で騎士として働いていたから、昔の上司みたいなもんだ」

「ロートレック伯爵は、お母さんを傷つけるような人?」

「いや、その頃はそんな人ではなかった。どっちかというと神経質で気が小さいタイプだな。傷つけたのはお父さんとお母さんの方なんだよ。俺たちが駆け落ちをした後、一番苦労したのは現ロートレック伯爵だ」

「……お母さんがロートレック伯爵と和解してくれたらいいのになって思ったけど……無理なのかな」

「今回のことは、恐らくアリスを大会に出させないことが一番の目的だ。和解する気などさらさらないだろう」


 私は別に大会に出なくてもいいんだけど、辺境伯様は許してくれないだろうな。

 優勝して賞品の結界装置をゲットしてくるのが私の仕事だもんなあ。


 学園の方には休む連絡を入れて、私とマリナはしばらく実家に隠れていることにした。

 お母さんがいないから、薬草の手入れをしないと。

 マリナにも手伝ってもらって、水やりをしたり、成長促進をかけたり。

 今の間に次の出荷の分ぐらい収穫しておけば、しばらくは大丈夫だろう。


 そうこうしている間に、辺境伯様から残りの黒服をつかまえたと連絡があった。

 私たちが学園に逃げ込んだと思って、うろうろと見張っていたらしい。

 やっぱりこっちに隠れていて正解だった。

 これで一応私とマリナは学園に戻れる。

 ただ、魔術大会に出場することに関しては、どうしたらいいのかわからないので辺境伯様に相談することにした。



 翌日、辺境伯家を訪れると、セドック先生が迎えに来てくれていた。

 ちょうど私たちのことで、辺境伯様と今後のことを相談していたらしい。


「セドック先生。私たちの魔術大会出場の件は、結局どうなったんですか?」

「おう。それは何も変更はない。辺境伯が学園を守ってくれると言っているから、心配しなくていいぞ。我が国から二校出場するとなったときから、こういった嫌がらせや妨害が入るだろうと、予測はしていた。今回は大事に至らなくてよかったな」

「お母さんはロートレック家に連れ戻されてしまいましたけど……」

「それだがな……あの黒服たちを尋問したところ、ロートレック家はロレッタ殿とアリスを引き取って、自分たちの陣営に引き込もうと画策していたらしいぞ」

「陣営に引き込むってどういうことですか?」

「つまり、アリスをロートレック家の養子にして、王立学園に転校させようということだ。そうすれば、カイウス学園は魔導具コンテストに出られなくなるし、王立学園はアリスの発明品を手に入れることができる」

「そんなっ……卑怯です! 今までなんの関わりもなかったのに! 私にはお父さんも弟のカイルもいます。なんでそんな勝手なこと!」

「まあまあ、あちらさんにはあちらさんの事情があるようだな。ロートレック家と言えば貴族の間では有名な魔術師家系だが、現ロートレック伯爵はそれほど優秀な魔術師ではない。ロレッタ殿の方がはるかに優秀だった。そして、今回王立学園から出場予定のアレン・ロートレックも同じだ。それほどぱっとしない魔術師だそうだ」

「だからって、私を無理矢理引き抜くだなんて……」

「そうすることで、国王に良い顔をしたいのだろう。妹と和解して姪を引き取ったということにしてな」


 アレン・ロートレック。

 顔も見たことがないけれど、私の従兄弟だ。

 敵対していなければ、仲良くしたかったけど……無理だよね。

 でも、無事に魔術大会に出場できたとしたら、戦うことになるのかあ。


「先生、アレン・ロートレックは戦闘部門で出場ですか? それとも魔導具部門?」

「戦闘部門の補欠で登録されているらしい。うまくアリスを引き込めたら魔導具部門へ乗り換えるつもりだろう」


 ふーん。ずいぶん図々しい計画だ。

 まあ、お父さんとお母さんが伯爵家にかけた迷惑を思うと、仕返しにそれぐらいのことはやってもいいと思ってるんだろうな。

 貴族の考え方からすると、お母さんを連れ戻して私を養女にするというのは、全然悪いことではないだろうし。

 私にとってはすんごく迷惑な話なんだけど!


「とにかく、再来週には出場メンバーが正式に登録される。そうなると、もうアリスをさらって王立学園に引き込むということはできなくなるだろう。この二週間だけはアリスとマリナは学園から出ないようにしてほしい。なるべく錬金クラスのメンバーと一緒に行動した方がいいだろう。彼らはワンドを携帯していないが、狙ってくる相手にとってはそんなことわからないだろうからな。全員で警戒しておくにこしたことはない」

「二週間ですか……わかりました」


 学園を出てはいけないと言われたけど、いざとなったら、私の実家やマリナの実家へは転移できる。

 新しい商売をするのは、大会が終わるまで延期しないと仕方ないか。

 キャロラインにも謝っておこう。


 カイウス辺境伯様は、大会が終わるまで学園の警備を強化すると約束してくれた。

 私の出場を取りやめるという考えはないようだ。

 まあ、国王様の命令だから仕方ないよね。

 ということは、大会には当然国王様も見に来られるんだろうなあ。

 今さらながら、責任重大だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ