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辺境伯様からご指名です

 翌日、辺境伯家から使いの人が来て、私とマリナが呼び出されたのです。

 で、いつものようにイーサンが付き添いというか、護衛でついてきてくれることになった。

 授業が終わったら迎えの馬車が来ていて、強制連行された感じ。

 なんの用事だろう……と三人で馬車の中で話し合ったけど、やっぱりアレだよね。

 国際魔術大会。

 まだメンバーは発表されていないけど、辺境伯様は知っているのかな。


「よく来てくれた。まあ、座ってくれ」


 最近少し慣れてきた、カイウス辺境伯の執務室。

 三人並んで座ってちょっと待っていると、奥の部屋からカーマイン様が登場した。


「やあ、久しぶりだね! これ、大事に使わせてもらっているよ」


 私たちの開発したワンドの数少ない使用者、ネヴィル・カーマイン様。

 辺境伯様の妹さんの元婚約者で、上級魔術院で働いている超エリートだ。

 最近はイーサンの師匠でもある。

 カーマイン様が呼ばれているということは、やっぱり魔術大会の件か。


「呼んだのは他でもない、国際魔術大会のことだ。学園から話は聞いているだろう?」

「はい、開催される、というところまでは聞きました」


 辺境伯様が私に同意を求めたので、代表で返事をする。


「そこで、君たちには魔導具部門で出場してもらいたい」

「ということは……私が作ったワンドで出場するということですか?」

「魔導具部門は、同じチームで開発したものであれば、複数出品してもいいそうだ。ワンド以外にも開発しているものはあるのか?」

「いえ……今のところは」

「だったらさ、ワンドの種類を増やすといいかもしれないね。たとえば、炎専用みたいに何かに特化したワンドを作るとか? 何かアイデアはない?」

「えっと、急に言われても……何か思いついたらセドック先生に相談してみます」


 カーマイン様はもうすっかりその気になっているようだ。

 目をキラキラさせて身を乗り出している。


「実はな、その魔術大会優勝チームには、賞品が授与されるんだが、それを手に入れてきてもらいたい。結界発生装置だ」

「なんですか? それは」

「隣国が開発した、魔物避けの結界を発生させる装置だ。我が辺境伯領としては、喉から手が出るほど欲しい。しかし軍事力に影響するから、そう簡単には売ってもらえないシロモノなんだよ」

「なるほど。そういうことですか……」

「もちろん、できうる限り高額で買い取らせてもらう。君たちが持っていても仕方がないものだろう?」

「それはそうですね」


 マリナとイーサンも同時にうなずいている。

 そりゃあ、お金の方がいいです、私たち。

 結界装置は要らないです。


「辺境伯軍は先の戦争のダメージがまだかなり残っていてな。常に人手不足だ。結界装置があれば、かなり助かる。できれば優勝してもらいたい」


 そういうことだったのか。

 辺境伯領は戦争でかなりの数の怪我人が出たのだ。

 それで、魔物討伐のときなどは常に人手不足だと聞いている。

 優勝賞品の結界装置は、森などの一定範囲から魔物が出てくることができなくなる装置らしい。

 確かにそれがあったら辺境伯領は助かるだろうと想像できる。


「まあ、そんなに難しく考えなくても、僕は大丈夫だと思うなあ。おそらく王立学園の方からは、魔導具部門は出場しないだろうし」

「そうなんですか?」

「王立学園は錬金に力を入れてないからね。魔導具を作るなんて職人の仕事だし、王都の貴族は興味を持ってないんだよ」


 カーマイン様は王都の上級魔術院にいるから、そういう情報も入ってくるんだろうか。

 貴族はプライドが高いから、職人には興味がないっていうことかな。

 だったら、ケイシーなんかは魔導具職人目指したらよさそう。ニッチな職業だし。


「わかりました。学園に戻ったらセドック先生に相談してみます。私たちは二年生なので、まだ出場できると決まったわけではないですが……」

「まあ、それは大丈夫だろう。俺からもセドックには頼んでおくよ」


 という訳で、辺境伯様じきじきに国際魔術大会への出場をお願いされてしまった。


 翌日セドック先生と相談して、出場メンバーは錬金クラス5人、私とマリナ、ローレン、ケイシー、イーサン。

 マリナは今年から錬金クラスに参加したのです。

 攻撃魔法とか覚えるより、錬金の授業の方が生活に役立つことが多そうだしね。

 今後何かを開発したりするときに、マリナの力が必要になることもありそうだし。


 セドック先生は、私の学年だけ錬金クラスが突出していると言って、喜んでくれている。

 他の学年からも注目されているそうだ。

 なので、私たちが魔導具部門に出場することに関しては、どこからも反対されなかったらしい。

 そういえば、新入生歓迎のときに、マリナがあっちこっちで雪を降らせたのは好評だった。

 みんな喜んでたもんなあ。

 意外と注目されていたのね。私たち。


 カーマイン様の提案で、ワンドの種類を何種類か作る相談をした。

 たとえば、水魔法に特化したワンドなら、先端部分に金を使うと効果が上がるということが判明している。

 だけど、火魔法だと金や銀は全然ダメで、ミスリル一択だ。

 このへんの実験は、セドック先生の知り合いの武器屋さんがやってくれている。


 ちなみにマリナが使っている、先端部分にダイヤを使っている杖は、氷結スキルを使えるマリナ専用だ。

 この杖を使っているときは、かなり魔力を節約できて楽だと言ってる。

 後は、ローレンやケイシーが使う、土魔法特化の杖ができるといいかもね。


 土魔法は農業に使われることが多く、戦いには役に立たないと言われている。

 なぜなら、土でできることは限られているし、例えば土で盾を作ったとしても、強力な水魔法には勝てない。

 土や石つぶてで攻撃したとしても、やっぱり火魔法なんかに比べると弱い。

 そんな風に思われているようだ。


 だけど、ケイシーやローレンのように、錬金できる人の土魔法をワンドで強化すると、かなり強力な武器になる。

 特にローレンは金属の抽出が得意なので、ワンドから金属の弾丸を発射することができる。

 たぶん、先端を工夫すればニードルのような鋭いものを飛ばすことだってできるんじゃないかと思う。

 私は前世の記憶があるので、銃に似たもののアイデアはいくつかある。

 

 ただなあ……そのアイデアを公表してしまっていいのかは、微妙。

 学生が戦争の道具を開発していると思われるのは、ちょっと不安なのです。

 下手したら、敵国に狙われたりさらわれたりするんじゃないかと想像してしまう。

 そのへんは、実際に使うローレンやケイシーと相談してみよう。


 あ、私も一応土魔法は得意なんだけど、デモンストレーションでは派手さを出すために火魔法を使うことにしている。

 苦手なんだけど、魔力量が多い私がやると、目立つ。


 イーサンが風魔法担当。

 マリナが水魔法担当。

 ローレンとケイシーは土魔法と、出場している間の雑用を引き受けてくれるって。

 まあデモンストレーションは、慣れてる私とマリナとイーサンがやる方がいいよね。


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