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スイーツバーは大盛況でした

 ダンスタイムが落ち着いた頃に、上級生による催しものが始まる。

 ステージの上で騎士科の生徒が、剣を使った演舞を披露したり。

 私とマリナはさっさと制服に着替えて、スイーツの用意をする。

 『二年魔術科クラス 氷結スイーツバー』だ。


 今回はアイスキャンディーを大量に用意してきた。

 果実水を凍らせて、割り箸のような棒をさしたもの。

 貴族の人にはちょっとお行儀悪いかもしれないけど、一口か二口で食べられるような小さめサイズだ。

 いちご味や、ぶどう味、レモン味など、色とりどりで目を引くと思う。


 開店と同時に、下級生たちがめずらしそうに寄ってきた。


「アイスキャンディーの人はこちらへ! アイスティーやアイスコーヒーの人は、あちらの男子がいるところへ並んでください」


 仕切るのが得意なキャロラインが、お客様を誘導している。

 学園の中では高位貴族のキャロラインは目立つ。

 まるで悪役令嬢みたいな縦ロールの髪型で、超豪華なドレスには宝石がちりばめられている。


「あら、オスロ子爵令嬢! お久しぶりですわね! 今年ご入学でしたの?」

「キャロライン様! お声かけいただいてありがとうございます! 無事魔術科に入れました」

「私たち二年生の魔術クラスは、冷たいスイーツが評判ですのよ。ハンベル伯爵家御用達ですの!」

「まあ! ハンベル家御用達だなんて! そのスイーツはキャロライン様にお願いしたら入手できますの?」

「そうですわね……まあ、ご相談にのってもよろしくてよ? とにかく味見をしていらしたら? あちらのアイスクリームがわたくしのおすすめですわよ!」


 きゃーっと黄色い歓声を上げた貴族女子が数名、アイスクリームの列に突撃していった。

 キャロライン様のおかげで、今年はまたお客様を増やせそうです。

 宣伝塔になってくれてありがとう。

 もし許されるなら、卒業後マリナとふたりでスイーツカフェをやるのも夢のひとつなんだけど。

 でも、そういうのはいつでもできるから、結婚してからでもいいかな、なんて思っている。


 新入生歓迎の催しは大盛況に終わった。

 冷たい飲み物やスイーツは、父兄にも大評判だったので、今後注文が増えるかもしれない。

 マリナは時々カフェの周囲に雪を降らせたりして、一年生を驚かせていた。

 そういえば前世に、雪の女王が主人公のアニメがあったなあと思い出す。

 雪を降らせることができるなんて、幻想的で実はちょっとうらやましかったりして。

 

収納魔法はチートだけど、現実的すぎて可愛くない。

 私も水魔法は得意だから、ひょっとして氷を作れないかなって練習してみたことがあるけど、無理だった。

 やっぱりあれはマリナだけのスキルだ。


「マリナ、大丈夫? ずいぶんたくさん氷作ってたけど」

「全然平気! 学園に来てからずいぶん魔力量増えたような気がするんだ」

「私たち、毎日ポーションやスイーツを大量に作ってるし、魔力を使う量がハンパないもんね」

「それで魔力量が増えるなら、いくらでも頑張っちゃう! アリスだってそうでしょう?」


 今日の冷たいスイーツバーは、ほとんどマリナひとりが頑張っていたようなもんだ。

 もちろんクラスの生徒全員で頑張ったんだけど、魔力を使ってたのはマリナだけだしね。

 私は収納から在庫を出していただけだ。


 実際のマリナの魔力量ってよくわからないけれど、クラスの他の人よりはかなり多いような気がする。

 マリナが魔力欠乏になって倒れたのは、去年の野外演習のとき一度きりだ。

 あのときは突然ウルフの群れが押し寄せて、やみくもに魔法を使いまくったから。

 私はもともとチートなんだけど、マリナも結構チートだと思うんだよなあ。

 平民には魔法を使える人は少ないはずなのに、すごく不思議。


「そういえば、ケイシーくんと何話してたの?」

「あー、なんか国際魔術大会に魔導具部門ができたっていう話」

「へーそうなんだ。もしかしてアリスに告白?とか思ったけど、やっぱり違ったか」

「違う違う! ありえないって。ケイシー、いつも私には無愛想だもん」


 私よりも絶対マリナに気があると思うけどなあ……と思ったことは内緒にしておいた。

 ケイシーみたいなタイプは素直じゃないから、変に意識しないほうがいいよね。

 それに、私とマリナはいくら成績が優秀でも、平民だから学園での恋はあり得ない。

 卒業後に平民でいい人見つかるといいなって思ってる。


「ケイシーくんね、今年中に就職先か婚約者見つけろって、親から言われてるんだって」

「婚約者って貴族の婿入り先ってこと?」

「そうじゃないかなあ……詳しくは聞いてないけど。婚約者は難しいから、なんとかして就職先見つけたいって言ってた」

「なるほどね。それで魔術大会か……」


 確かに国際魔術大会の出場メンバーに選ばれたら、それだけで就職に有利かもなあ。

 例えば、セドック先生の助手になるとかいう道もあるかもしれないし。

 学園で男子が婚約者を探すのは確かに難しい。


 そもそも、魔術科に女子は少ないし、貴族女子はだいたい婚約者が決まってるしね。

 そういえば、ローレンはまだ婚約者決まってなかったと思うけどなあ。

 まだ二年生になったばかりだというのに、貴族って厳しいね。

 私は平民でよかった。


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