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新規顧客開拓します

 春休みになってからずっと実家へ帰っていたので、久しぶりの学生寮だ。

 門のところへ到着すると、どこかの貴族家の馬車が数台停まっている。

 なんとなく見たことのある家紋だと思ったら、ハンベル伯爵家の馬車だ。

 ということは、キャロラインが寮に戻ってきているのかな?


「あら、アリスとマリナじゃないの。こんな時間にどうなさったの? 新学期にはまだ早いんじゃありませんこと?」

「キャロライン様こそ、どうしたんですか?」

「わたくしは荷物が多いので、早めに荷物だけ運び込みに来たんですのよ。新入生と重なると、門のところが大混雑するでしょう?」

「そうだったんですね。私たちは辺境伯様のところへアルバイトに行っていたので、今日はここで泊まろうと思って」

「アルバイト? 春休みなのにお仕事をしていたなんて……大変ですのね」


 キャロラインは従者にテキパキと指示を出して、荷物を運ばせている。

 きらびやかなドレスを山のように抱えて運んでいる人もいた。

 伯爵令嬢って、学園に通っていても、あちこちの舞踏会に参加したりするんだろうか。


「辺境伯様のところでアルバイトって、どんなお仕事をしていますの?」

「うちでとれた野菜や、マリナの実家でとれた魚介類を運んでいるんです」

「まあ、うらやましいわ。魚介類だなんて、ハンベル領には全然流通していませんもの。わたくしでもめったに食べませんわ」


 ふーん。ハンベル領って、一度ローレンと一緒に魔石を運ぶために行ったことがあるけど、馬車で一日ぐらいだっけ。

 月に一度ぐらいだったら、行けるような気がするけど。


「ねえ、マリナの実家は、まだまだ出荷量増やせそう?」

「うん、大丈夫だと思うよ。近所の人も協力してくれてるみたいだし」

「キャロライン様、良かったら月に一度ぐらいだったら野菜とお魚をお届けしてもいいですよ!」

「えっ、本当ですの? もし本当ならお父様やお母様が大喜びしますわ!」


 ふっふっふ。新規顧客ゲット。

 カイウス辺境伯家とお隣のハンベル伯爵家御用達となれば、うちとマリナの実家は結構有名になるかもね。

 学園で人脈を作るのってつくづく大事なことだなあと思う。

 一度キャロラインと一緒にハンベル家を訪問して、詳しい話をすることになった。


「新学期まであと一週間もあるのに、キャロライン様はこれからどうされるんですか?」

「わたくしはこのあと、この近くにある従兄弟の家に参りますの。親戚が集まってちょっとしたパーティーがあるので」

「そうだったんですね……あ、良かったら新作のフルーツアイスクリームをおすそわけしましょうか?」

「まあ! 今持っておられるんですか? 買いますわ! ありったけいただくわ!」

「今日のところはサービスしておきます。また次回からはご注文承ります」

「ありがとう! じゃあ、遠慮なく。ここから馬車で二、三十分ぐらいのところなんですけど、運ぶ間に溶けないかしら?」

「三十分ぐらいなら大丈夫です。マリナに箱ごと凍らせてもらっておくので」

「助かりますわ~。皆様きっと大喜びですわ!」


 思いがけずアイスクリームの在庫が全部出てしまった。

 でも、貴族様御用達になれば、この先お金に苦労しなくてもいいよね。

 営業は大事だ。


「マリナ、明日は実家に帰るつもりだったんだけど、少し市場に買い出し行っとく?」

「そうだよね。新学期が始まる前に、フルーツとか牛乳と卵、いっぱい仕入れておいた方がいいかも」

「だよね。キャロライン様のことだから、アイスクリームたくさん注文してくれそうだし」

「私たちのお小遣い稼ぎだもんね! 頑張ろう」



 キャロラインを見送った後は、マリナと一緒に今日の売り上げを整理。

 持っていった分全部売れちゃったから、売れ残りの確認をする必要はない。

 ポーションの在庫もなくなっちゃったから、また作らないとなあ。


「マリナ、明日午前中に市場で買い出ししたら、そのあとうちの実家にこない?」

「いいよ。どうせその時間だと、私の実家には帰れないし」

「ちょっと手伝ってほしいんだ。ポーションの在庫なくなっちゃったから、薬草の収穫しないといけなくて」

「あ、いいよ。薬草を乾燥させるの、私得意だし」


 そうなのです。

 マリナは私より風魔法が得意なので、収穫した薬草を乾かしてくれるのです。

 私は収穫や成長促進に集中できるし、助かる。

 私たちって、本当に良いパートナーだなあっていつも思う。

 今年は二学年になったので、中級ポーションを習うはず。

 その練習のための薬草を、たくさん用意しておかないとね。


 翌日は朝一番から市場で買い物をして。

 だいぶお小遣いを稼いで懐があったかいので、ついでに洋服やアクセサリーを買ったりして。

 私もマリナも、実家の近くにお店なんてほとんどないから、ついつい散財しちゃう。

 ちょっと高価なコーヒー豆をたくさん買えたのがうれしい。

 私、コーヒーを飲むと、ちょっとだけ前世を思い出すのです。不思議だけど。

 受験勉強をしていたときに、よく飲んでいたなーって。

 

 ふたりで薬草の収穫をして、いつものように私の家族と一緒にスイーツパーティーをして。

 よく働いたから、夜はあっという間に寝てしまった。

 そして翌日、マリナはいったん実家へ帰った。

 次に会うのは、新学期が始まる前日だ。



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