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【第二部】進級しました!

お待たせしました! 第二部スタートです!

楽しんでいただけるとうれしいです。

 お天気の良い休日の昼下がり。

 マリナの実家から馬車で辺境伯家へ向かう。

 収納の中には新鮮な野菜や海産物がいっぱいだ。


 ここはアストラ王国の西の国境に近い、カイウス辺境伯領。

 私やマリナが通うカイウス学園の近くに、辺境伯様のお屋敷がある。 


 春休みになってから、辺境伯様と約束した通り、マリナとふたりでアルバイトを始めた。

 週に一度、新鮮な野菜と魚を辺境伯家に届けるだけのアルバイトだ。

 まだ学生だけど、商業ギルドには収納スキルがあることをきちんと届け出た。

 マリナも氷結スキルを届け出たので、ふたりとも正式に商業ギルド員だ。

 レアスキルなので、今後ふたりセットで仕事が来る可能性は高いらしいが、今のところはカイウス辺境伯家専属と届けてある。

 

「こんにちはー! 野菜と海産物のお届けでーす!」

「あら、可愛い配達員さんね。辺境伯様から話は聞いているわ。そこの裏口から入ってちょうだい」


 食堂のおばちゃんみたいな人が、手招きをして裏口へ呼んでくれた。

 ここが従業員通用口ということらしい。

 少し薄暗い通路を通って、食糧倉庫の場所へ案内してもらう。

 石畳のような床で、ひんやりとした空気の倉庫だ。


「まずはこのあたりに、全部出してもらえるかしら?」

「はい!わかりました」


 木箱に入った野菜や魚を次々に出して、床に並べていく。 

 調理担当の人たちが数人で、それを検分していく。


「これで全部なの?」

「えーっと、種類はこれでだいたい全部です」

「そう。どれも新鮮で良い品物ね。問題なさそうだから、全部納品してもらうわ」

「ありがとうございます!」


 マリナと顔を見合わせて、にっこりと笑う。

 いつもこれだけ買い取ってもらえるなら、マリナの家もずいぶん家計が楽になるはずだ。


「それで、同じぐらいの量を毎週届けてもらえるの?」

「あ、いえ、私たちが実際に届けに来るのは月に一度だけなんですけど」


 まずは見てもらって納得してもらうために、収納に入れてきた辺境伯家分の品物をすべて出す。

 一ヶ月分なので、約四倍の量だ。


「まあ……そんなにたくさん置いていかれても、腐ってしまうわ」

「違うんです。これをここで再度収納し直すという作業をするんです。そうすれば、いつでも好きな量だけお届けできる仕組みになってます」


 目の前に並んだ在庫をすべて収納に入れ直す。

 そして、一箱だけ出し入れする様子を見てもらった。

 調理師さんたちが目をみはって驚いている。

 これは私独自の時間巻き戻しスキルなので、初めて見た人はびっくりするよね。

 簡単に説明すると、この場所で収納したものはここへ戻すことができるスキルなのです。


「便利なスキルを持っているのね。わかったわ。じゃあ、ここへ週に一度届けてもらえるかしら?」

「はい! わかりました。今日納品したものと同じ量を毎週届けます。商品は季節によって変わるので、来月また新しいものを持ってくるようにしますね」


 納品書を渡して、伝票にサインをしてお仕事完了! 楽な仕事だ!

 力の要らない宅配便屋さんみたいなものだよね。


 食糧倉庫への納品が終わったら、次は騎士団の詰め所へ向かう。

 マリナとふたりでせっせと作った下級ポーションを買い取ってもらうのだ。

 騎士団には騎士団の薬師さんが常駐しているので、乾燥させた薬草も納品する。


「こんにちはー! 薬草とポーションをお届けにきましたー!」

「おっ。来たな、ちびっこたち」

「もう! ちびっこじゃありません!」


 トスカ高山地帯へ遠征したときに顔見知りになった騎士さんが、頭をぐりぐりとなでてくる。

 私たちが収納にいろんな料理やおやつを貯蔵していることを知っているので、興味津々のようだ。


「今日はアレはないのか? あの冷たいお菓子は」

「ありますよー。買ってもらえますか?」

「もちろんだ。おーい! みんな、休憩にするぞ!」


 わらわらと訓練中だった騎士さんたちが集まってくる。

 私とマリナは、アイスクリームの入った大きな入れ物と、紙コップを用意する。

 この世界にも紙コップや紙皿はあるのです。


「バニラの人は私、チョコレートの人はマリナの方へ並んでくださーい」

「両方ってわけにはいかないのか?」

「足りなくなっちゃうかもしれないので、両方食べたい人はもう一度後ろに並んでください」

「そうかそうか。よし、俺はもう一度並ぶぞ!」


 騎士さんたちは肉体労働で疲れているから、冷たくて甘いものは好評だ。

 甘いものが苦手な騎士さんには、冷たいコーヒーや紅茶も用意してある。

 ちょっとした出張スイーツ屋さんのような感じだ。

 辺境伯様から、騎士さんたちは結構お金を持っていると聞いているので、スイーツは高めの値段設定にしてある。

 それでも次々と売れるので、大忙しだ。


「今日は、もう終わりかい?」


 用事で遅れてきた騎士さんががっかりした顔をして、空になったアイスの箱をのぞきこんだ。


「お疲れ様です。すみません、バニラは終わっちゃいました」

「うわー、残念。辺境伯様に用事を言いつけられていてさあ。これでも急いで来たんだけど」

「それじゃあ、特別大サービスで、こっそり新作の味見をしますか?」

「えっ、いいのかい?」

「感想聞かせてくださいね」


 気の毒なので、最近作ったばかりのブルーベリーの入ったアイスを出してあげた。

 紫色のアイスを見て、ちょっとびっくりしたみたい。


「うわっ! これはうまい。フルーツの味がさっぱりしていていいな」

「ヨーグルトで酸味をつけてあるんですよ」

「これは売れると思うぞ。俺はバニラよりこっちの方が好みだな」

「じゃあ、次に来るときにはイチゴアイスと、このブルーベリーアイスを作ってきますね」

「おう。たくさん作ってきてくれよ? すぐに足りなくなっちまうからな」


 お昼頃に辺境伯家に着いて、騎士団のおやつタイムが終わったのは夕方の四時をまわっていた。

 詰め所でサインをしてもらって、伝票は私の実家と、マリナの実家へ送る。

 スイーツとポーションを売った分は、現金でもらってふたりのお小遣いだ。

 これが結構な金額です。ほくほく。

 また次のスイーツを作る仕入れをしないといけないけど、それでも一ヶ月のお小遣いとしては十分すぎる。

 将来のために、貯金もしておかないとね。


「今日はもう遅くなっちゃったけど、どうする?」

「今からだったら、寮に戻って夕ご飯にしよっか」


 私の実家方面の馬車に乗るには、もう時間が遅い。

 学園の方が近いので、いったん寮に戻ることにした。

 辺境伯家と学園が近いっていうのが、結構便利で助かっている。



 



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