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さすが上級魔術士様!

 カーマイン様に聞きたいことがあると言ったら、イーサンが馬車の席を交換してくれた。

 実は、カーマイン様の話し相手は、結構疲れるらしい。

 ひっきりなしにいろんなことを聞かれるそうだ。


「で、アリスちゃん、僕に聞きたいことがあるんだって?」

「はい。実は空間魔法のことなんですけど、学園では教えてもらえなくて」

「あー。僕は収納スキル持ってないけど、わかる範囲なら」


 私は以前セドック先生に相談した、亜空間内で物質の移動は可能かどうかという質問をした。

 A地点(自宅)で収納したものは、B地点(学園)にいても、時間を巻き戻すという方法でA地点に戻せるという話もした。


「へえ。アリスちゃんって本当に頭が柔軟なんだね。その座標という考え方は面白いし、A地点とB地点の座標をスキルで記録しているという考え方も正しい」

「それで、A地点で収納した箱に、B地点で何かを入れて、A地点に戻せたらって思ったんです。それが可能なら、実家に荷物を送ることができるので。だけど、B地点で箱を外に出したら、そこで座標が上書きされてしまうでしょう?」

「なるほど。家に荷物を送りたい、という発想だったんだね。それで、亜空間内で箱の中に物を入れたい、と。惜しいなあ……もうちょっとのところまできてるんだけどね。でも、結論から言うと、亜空間内での物質の移動は実現していない」

「やっぱり無理なんでしょうか」

「考え方を整理してみようね。A地点(実家)で箱を収納する。B地点(学園)で箱を取り出す。これが1本の線でつながっているよね? それで、箱を収納から出してしまうと、それは新たにC地点として置き換えられて、それを収納することで今度は亜空間内のD地点とつながる。D地点からA地点にはつながりがない。でもさ。考えてみて? どうして亜空間内の箱は実家に送り返すことができるの?」

「それは、亜空間内では時間が止まっているので、ほんのちょっと時間を巻き戻すことでA地点にあったときの状態に戻すことができるからです」

「正解。だったら、亜空間内から取り出した箱を、再度収納するときに、それは応用できない?」

「あっ! ……できるかも」


 そうか。一度取り出したら箱の座標は変わってしまうと思っていたけど。

 もう一度亜空間に入れるときに、時間の巻き戻しを使えたら、座標を変えずにB地点に戻すことが可能かもしれない。

 それができたら、もう一度時間の巻き戻しでA地点へ。

 なんでそこに気づかなかったんだろう。

 すごい。カーマイン様の話を聞くと、簡単にできそうな気がしてくる。


「僕はやってみせてあげることができないけど、アリスちゃんならできそうな気がするな。もちろん、箱に中身が増えるから、同じ箱ではないから、うまくいかないかもしれないけど」

「はい! 一度練習して試行錯誤してみます。時間の巻き戻しっていうのは、意識せずやってたことなので、うまくいくかわからないですけど」

「そこがスキルの不思議なところなんだよねえ。意識せずできる人もいれば、練習してもできない人がいる。僕も収納魔法だけは、いくらやってみてもダメだった。それは、一種の才能だと思っていいよ」


 才能というか、チートなんです。申し訳ない。

 でも、私には戦いの才能は皆無なんで、やっぱり個性は人それぞれだと思うのです。


「アリスちゃん、いい目をしてるねえ。ミルフィーナも昔はそんな目をしてたな」

「ミルフィーナさん?」

「辺境伯の妹だよ」

「ご病気だという人ですか?」

「そう。僕はミルフィーナと学園で同級生だったんだ。で、婚約者になるはずだった」

「だった、っていうのは……」

「ミルフィーナが病気になったから、うちの親が反対したんだ。前カイウス辺境伯も、娘は嫁に出さないと言って」

「そうだったんですね……」

「でも、僕は諦めていない。アルフだって同じさ。だから君たちが協力してくれてとてもうれしいよ」


 そうだったんだ。

 カーマイン様は、決して興味本位でついてきたわけじゃなかった。

 そんな事情を聞いてしまうと、ますます頑張らなければと思ってしまう。

 人助けだもんね。


「他にも聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

「いいよ。アリスちゃんは本当に勉強が好きなんだね。上級魔術院に来ない?」

「えーっと。うちは辺境伯の薬草農園なので……それに、貧乏な家ですから」

「そんなの、アルフに言えばなんとでもなるのに。僕から推薦しておこうか?」

「……もう少し考えてみます。卒業までまだ時間がありますし」

「わかった。その気になったらいつでも言ってよね! それで次の質問は何?」

「えっと、魔石の魔力抽出と、魔力付与についてなんですけど」

「付与? また大きく出たなあ。ホント、君、面白いね……物質に魔力を付与しようとしてる?」

「やっぱり無理ですか……」


 ああ、楽しい。

 カーマイン様との会話は本当に楽しい。

 なんでもできそうな気がしてくる。

 これが上級魔術院の人の知識なんだ。


 上級魔術院。

 雲の上の場所だと思っていたけど、カーマイン様を知ってしまうと、現実に手が届きそうな気がしてくる。

 進学したいなあ……



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