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生活魔法を訓練する

 教会で適性判断があって、数日後、子どもたちだけが教会に集められた。

 神官おじいちゃんが、初歩の魔法を教えてくれるんだそうだ。

 王都には王立の学園があるが、こんな辺境の村には学校がない。

 それで、読み書きと初歩の生活魔法だけは、教会で教えるというように法律で決まっているらしい。

 いわゆる、義務教育のようなものか。

 まあ、それでも貧乏な家の子どもは畑仕事や家の手伝いを優先して、通ったり通わなかったりするみたい。

 うちは両親とも、私の2属性適性がどちらになるのか興味津々なので、快く送り出してくれた。


 ちなみに、王都にある王立の学園に通うのは、主に貴族の子どもなんだそうだ。

 なぜかというと、貴族は平民に比べると魔力量の多い人が多く、その差は歴然としているらしい。

 そして、貴族の嫡子は騎士団や魔術師団などに就職する人が多い。

 そのため、騎士科や魔術科というように、専門の勉強をするようになっている。

 平民の子どもは、王都に住んでいたとしても普通科や商業科に通うことが多いようだ。


 教会ではまず、読み書きを教わった。

 とはいえ、私はすでにこの世界の言語は習得済みだ。

 3歳で転生してきたときから、なぜか文字は読めた。

 それから、こっそり自力で書く練習もした。


 文字の読み書きができるのは、私と村長の息子だけだったので、2人は教会にある本を自由に読んでいていいと言われた。

 聖書のような書物の他に、農業に役立つ作物の本や、狩猟に関する本なんかがあったので、ざっと目を通す。

 作物の種類などは、時間があるときに書き写しておくといいかもしれないと思う。

 前世と似たようなハーブというか、薬草があるみたいなので、勉強してみたい。


 そしていよいよ、初級魔法の訓練に入ったのだが、これが思ったほど簡単ではなかった。

 何が難しいって制御が!

 他の子どもたちはそれぞれ火や風を起こそうと躍起になっていたけれど、私は違った。

 「水よ」と言っただけで、手のひらから十リットル単位の水がドバドバ出てしまう。

 作物の成長を促す土魔法では、教会のまわりの雑草が背の高さぐらいまで一気にのびてしまって、慌てて神官見習いの人たちが刈り取ってくれた。

 危なっかしいので、制御ができるようになるまで、使用禁止と言われてしまったのだ。


 神官おじいちゃんはどうしたものかと呆れていたようだが、私は確信した。

 あの転生の神様のような声は、やっぱり約束を守ってくれたんだ。

 世界一の収納には、世界一の魔力量。

 もしかしたら……いや、もしかしなくても、これってチートだ。万歳。

 訓練さえすれば、一流の魔術師になれるかもしれないじゃん。

 魔力量さえあれば、水魔法も土魔法も使い放題だもの。

 世界一の収納の、思わぬ副産物。


 他の子どもたちが帰ってから、私だけが居残りするように言われた。


「アリスよ。そなたは途方もない魔力量を持っているようじゃな。収納スキルを持っているとわかった時点で、予測はできたんじゃが」


 おじいちゃんが見せてくれた、古くて分厚い『スキルの書』

 収納スキルのページを要約すると、収納スキルというのは亜空間への入口を開くことができるスキルで、入口を開くだけでかなりの魔力量が必要らしい。

 なので、子どものうちはたいてい使うことができず、成人した魔術師がようやく使えるようになるスキルなんだそうだ。


 実は教会に来るまでに、いくつかの魔法を試してみたんだけど、収納スキルだけは使い方がわからなかった。

 いくら「収納!」と言ってみても、何も収納できなかったが、その理由がわかった。

 亜空間の入口をイメージできなかったんである。多分。


「ワシもあまり見たことがないんじゃが、目の前の空間に見えない扉でもあって、そこへポンっと消えていくように、ものが吸い込まれるんじゃよ」


 なんとなく……イメージできるような?

 ようは透明な入口をイメージして、その中へ物を放り込めばいいのか。

 ものは試しと、お供えもののりんごを、ポイっと空中の穴に入れるイメージをしてみる。

 すると、目の前でりんごがすっと消えた。

 あれ、成功?


「おおお! 使えたか? ワシの説明は伝わったのじゃな?」


 神官おじいちゃんが子どものように無邪気な笑顔で喜んだ。

 調子にのって、ポイポイっと、何個かりんごを収納してみた。

 出すときは、穴からりんごが出てくるイメージ。


「このスキルはな。使い方を間違えると、犯罪が簡単にできてしまう。将来このスキルを使って仕事をするなら、商業ギルドか冒険者ギルドに必ず登録をしないといけないんじゃよ。わかったね?」


 使えるとわかったので、注意点をいくつか教えてもらう。

 まず、生き物は収納できない。

 絶対に収納してはいけない、と言われた。

 そりゃあそうだろう。人間なんて収納しようものなら、その場で重罪だ。

 収納なんていう気軽なワードにごまかされているけど、結構扱いが大変なスキルかもしれない。

 ただし、狩りで狩った動物などは、死んだら食料や素材として認識されるので、収納できるとのこと。


 そして、収納スキルのレベルが上がると、亜空間内で時間停止ができるようになるらしい。

 つまり、入れたときの状態がそのまま保てるようになる。

 そこまで使えるようになると、商人から引っ張りだこになるレベルなんだそうだ。

 新鮮な魚とか、作物を、そのままの状態で運べる。

 料理なんて、作りたてのまま保存できるしね。


 ただ、私は商人になるつもりなどないので、実はあんまり仕事の役には立たないかもしれないけどなあ。

 お父さんが作物を運ぶのを手伝うぐらいかも。

 もしいつか、旅行に行くことがあったら、手荷物が少なくていいなあ……なんて、この時は小さな夢を想像したりしていた。

 なんせ、5歳児ですから!



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