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カイウス辺境伯、学園に現る

 それから、魔法のロッドは何度か改良を重ねて、安全に使える仕様になった。

 私とマリナのロッドにも出力制限をつけてもらい、必要なときに解除できるようにしてもらった。

 本人しか使えないようにするという点はまだ開発中らしいけど、今のところは製造数が10本しかないしね。

 結局、イーサンは所持を許可されて、悪用しない誓約書を書いて、改良に協力してもらっている。

 ケイシーは最初のうちは物珍しさで使っていたけど、攻撃班に移りたくないので、使用を諦めたようだ。

 ローレンは、自分自身は武器を持ちたくないけど、魔石の販売につながればいいという考えみたい。


 私とマリナは学園からロッドの所持を許可されている。

 私は開発者だし、マリナは学園にひとりしかいない氷結持ちだから、特別扱いみたい。

 時々、上級生が見せてほしいと言ってくることがあるので、その時はセドック先生の監督の下でデモンストレーションをしている。


 そうこうしているうちに、後期試験が近づいてきた。

 私たちは相変わらず、週に1度だけ攻撃実技のクラスに出ているんだけど、その時にロッドを使った魔術の練習をしている。

 マリナはついに、ブリザードを完成させた。

 風魔法を強化して、竜巻のような吹雪を起こすことができる。

 殺傷能力は低いかもしれないけど、ロッドの制限を解除したら、まさに暴風になるんじゃないだろうか。


 私も授業では制限をかけているので、全力の火魔法は使ったことがない。

 周囲を巻き込んだら怖いしね。

 相変わらず的に向かってファイヤーバーナーを放っているが、初期に比べたら飛距離はかなり延びた。

 これ以上攻撃力があるところは、あんまり見せたくないので、気を付けている。

 気をつけていた、はずだった。



 期末試験の実技は、例によって『新しく使えるようになった魔法やスキルを披露する』という項目がある。

 前回は錬金で、鉄を抽出したんだけど、それ以降新しく使えるようになったのは、ファイヤーバーナーしかない。

 攻撃班の方で実技試験を受けるのは本意ではないんだけど、今回は注目されていることもあって、仕方がないよね。


 騎士科の後期実技は対戦形式で、ちょっとしたイベントになっている。

 学年で誰が一番強いか、順位をつけるらしい。

 使用するのは木刀だが、怪我人が出るので、治癒班が待機する。

 その日の授業は休みで、普通科や商業科など、全校生徒が見学できるんだそうだ。

 娯楽が少ない世界だから、騎士の対戦は人気があるみたい。


 魔術科の実技は、魔力量で実力差が出てしまうので、対戦形式ではない。

 戦う前から結果は見えているし、そもそも火魔法を人に向けることなどできない。

 なので、パフォーマンスとして、ひとりずつ披露する、という感じだ。

 まあ、騎士団の試合が始まる前の、前座みたいなものかな。

 それで、みんな少しでも派手に見えるように、工夫しているらしい。

 同じクラスに、ファイヤーボムという、派手に爆発する火魔法を習得している人がいた。

 音の割に、威力はないんだけどね。爆竹みたいな感じ。

 イーサンは、ロッドを使って、ウィンドカッターという攻撃魔法を披露するようだ。


 午前中は魔術の披露、午後から試合という日程だが、朝から結構な人が集まっていた。

 この日だけは、学園生に限らず見物できるので、親や近所の人が見に来たりしている。

 貴族は専属護衛や、警備の騎士を雇うことが多いため、有望な騎士を探しにくると聞いた。


 そろそろ魔術科の実技が始まろうというとき。

 急に会場となっている競技場がざわざわとし始めたので、待機室で待機していた私たちも、窓から外をのぞいてみた。

 すると、立派な馬に乗った貴族が護衛を数人連れて、会場に入ってくるのが見えた。

 観客たちは、一斉にそっちを見ている。

 誰だろう。


 「チッ、わざわざ出てきやがった……」


 ん? セドック先生、今舌打ちしました?

 お行儀悪いですよ。先生なのに。

 知り合いなんだろうか。

 近くにいた先生たちが、慌てた様子で、その人を特等席に案内している。


「辺境伯だぞ」


 イーサンが小声で教えてくれた。

 うわ。カイウス辺境伯だったのか。

 なんでわざわざ……騎士団の勧誘だろうか。


 そろそろ開始時間なので、私とマリナとイーサンは、セドック先生に引率されて外に出る。

 私たちがトップバッターなのだ。

 セドック先生は一応ロッドの管理者なので、攻撃班とは別に私たちを引率している。

 さっさと終わらせようと思っていたのに、めんどくさい展開になりそうな。


 競技場に向かっていると、辺境伯様が拡声器を使って挨拶を始めた。

 ちなみに、拡声器って風魔法の魔道具です。


「諸君。学園で、日頃から鍛錬を積んでいること、誠に喜ばしく思う。我が辺境伯軍は、今後成績優秀者はどんどん採用する方針だ。精一杯実力を見せてほしい。健闘を祈る」


 さすがに名将と言われるだけあって、堂々とした演説だ。

 遠目にしか見えなかったが、立派な体格で、30代にしては若く見える。

 あまり個人的にお近づきにはなりたくないが、私たち家族をこの領に呼んでくれた人だ。

 なんらかの形で、辺境伯領のお役に立ちたいとは思う。


「仕方ない、いくぞ」


 セドック先生、なんでため息ついてるんですか。

 まあ、気持ちはわからなくもないですけど。

 まだ、今の段階であんまり見せたくないんですよね、多分。

 私も同じ気持ちです……


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