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武器屋さんは商売人だった

 セドック先生は早速知り合いの武器屋さんに相談してくれたようだ。

 試作に1週間ほど時間がほしいそうなので、1週間後に連れていってくれることになった。

 楽しみだ。

 その間に、私は特許申請の準備をする。

 完成していなくても、アイデアだけは申請しておかないと、横から奪われてしまう可能性があるらしい。

 製作費は、セドック先生の研究費用から出してくれるんだって。

 つまり、辺境伯様には早々に伝わってしまうかもしれないけど。

 まあ、そこは仕方ない。私は、お金持ってないし。

 もし、これが完成したら、論文1本書けそうだ。


 週末、マリナとセドック先生と3人で、武器屋さんへ連れていってもらう。

 貴族様御用達の、高級武器職人らしい。


「こちらのお嬢さんがたが、発案者ですかい?」

「ああ、そうだ。教え子なんだ」

「いやあ、まったく苦労しましたぜ。何種類か試作したんで、試してみてくだせえ」


 見せてもらった試作品は、想像していたよりも、美しくてかっこよかった。

 私のイメージは、ホウキの柄だったので、大違いだ。

 結局、金属は耐久性よりも魔力伝導率を優先して、シルバーを使ったそうだ。

 鉄よりも、熱がこもりにくいというメリットもある。

 持つところは、耐熱効果のある樹脂でコーティングして、皮が巻いてある。

 当初、先端に魔石を使うというアイデアだったけれど、先端はやはり劣化しやすいということで、手元の方につけることになった。

 手元側の先にフタがついていて、そこから小さな魔石を入れることができる仕様だ。

 しかも、先端部はミスリルコーティングしてあるらしい。

 いたれりつくせり。

 ミスリルではなく、ダイヤモンドコーティングしたものも試作してくれていたが、ダイヤは火魔法で劣化してしまうので、マリナ向けだ。

 キラキラしていて、そっちの方が見た目はゴージャス。


「持った感じはどうだ?」

「はい、軽いし、これなら私でも振り回せそうです」

「裏手に空き地があるんでさあ。試すなら外でやってくださいよ」

「もちろんだ」


 すでに魔石がセットされていたので、早速使ってみることにした。

 まずは、軽くライターの火を出すぐらいの感覚で、魔力を流してみる。

 すると、驚くほどすんなりと、杖の先から炎が出た。

 これは、ホウキの柄とは全然別物だ。

 さすがプロの職人。

 ちょっと強めに魔力を込めると、軽く2、3メートルは炎が出る。

 これぐらい増幅する力があると全力で使うのは怖い感じ。

 セドック先生も、試作のうちのひとつを手にとって、火魔法を出していた。


 喜んだのはマリナだ。

 苦戦していたブリザードが、簡単に杖から出た。

 結構な勢いで、吹雪を振りまいている。

 元々マリナは私より風魔法が得意だもんね。

 スキップしながら雪を降らせているので、妖精みたいだ。

 セドック先生いわく、氷や水魔法は、シルバーと相性がいいらしい。


「耐久性の方はしばらく使ってみないとわからんが、とりあえずしばらく試してみるとするか。これは1本、私が研究用にいただいていくよ」

「もちろんです。本当に私たちがこれをいただいてもいいんですか?」

「使用者がいないと、研究できないだろう? 使い心地や問題点を報告してくれたらいい」

「わかりました。しっかりレポートします」

「後期試験、トップをとれよ」


 セドック先生は笑いながら、私の肩をぽん、と叩いた。

 自分で考えた魔法の杖だもん。

 私が一番に使いこなさなくちゃね。


「どうでしたかね?」

「いや、さすがの腕だ。想像以上の出来だったよ」

「そう言っていただけると、試行錯誤したかいがあったってもんでさあ」

「ところで、わかっているとは思うが、許可が出るまでは複製禁止だ」

「もちろんですよ。これは辺境伯様関係のご依頼ですか?」

「いや、そうではない。単なる学生の研究だ」

「そうですか。追加発注とかはなさそうですかねえ。せっかく苦労して作ったんだから」

「それはわからんな。使いこなせる魔術師がどれだけいることか。まあ、しばらく耐久性や、効果などを調べてみるよ」

「追加発注お待ちしておりますよ」


 武器屋さんは、揉み手をしながら、ペコペコ頭を下げていた。

 商売人だな。

 結局、この日は少しずつ長さや見た目の違う杖を、10本ほど持って帰ることになった。

 試行錯誤している間にできたものだそうだ。

 その中で、一番出来がよかったものを、私とマリナがもらったみたい。


「これ、ロッドって呼べばいいのかな? アリスのアイデア、すごいねえ。私、気に入っちゃった!」

「私も気に入った! 想像していたよりも、ずっと素敵な見た目だったわ。これで後期試験、いけるかな?」

「いけると思う。武器とかは、自由に選んでいいみたいだし」


 武器屋さんは、私たちに合わせて、ロッドを腰に下げられるようなベルトもつけてくれた。

 帯剣するときのやつを、女性用に少し直してくれたらしい。

 これが結構かっこいい。

 腰に拳銃を下げていて、さっと構えるようなイメージだ。

 鏡の前でぜひポーズの練習をしてみたい。



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