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マリナのお母さん、チャレンジャーです

「あら、オクトって好きな人いるみたいよ。私は食べたことあるわ」

「えっ? そんなの俺は初耳だぞ?」

「あなたが嫌がるから、言わなかっただけよ」


 思わぬ味方が現れた。

 マリナのお母さんは、オクトを食べたことあるようだ。

 一応、オクトというのは「ゲテモノ」の食材扱いのようだ。

 私は前世で「ナマコ」を見たときに、これは絶対に食べたくないと思ったが、好きな人はいたもんね。

 そんな扱いなのかも。


「ふうん……お母さん食べたことあるんだ。じゃあ、大丈夫かも……」

「あんまり覚えていないけど、変な味ではなかったわ。アリスちゃん、料理方法知ってるの?」

「なんとなく覚えてます。トマトで煮込むんです」

「あら、美味しそうね」

「よかったら作りましょうか?」

「お母さん、アリスってすごく物知りで、お料理上手なんだよ!」

「じゃあ、お願いしようか」


 よし。初オクト料理に挑戦しよう。

 にんにくをたっぷりきざんで、トマトのざくぎりと玉ねぎを炒めて。

 あとは、水と塩と魚介。

 貝を入れるから、いい出汁が出るはず。

 うちから持ってきた、乾燥バジル(的なやつ)もたっぷり。

 これなら、スライスしたタコの足ぐらい気にならないんじゃないかな。

 ついでにクシに刺したオクトにミックススパイスと塩をふって、網焼きオクトも焼いてみた。

 これは、私が食べたかったから。

 ここいらでは、魚は網焼きにして食べるのが一般的らしい。


 さて、その日の夕食。

 おじさんはちょっと微妙な表情で焼きオクトを見ていたけど、おばさんはニコニコしてた。


「さあ、アリスちゃんの料理をいただきましょうか。私はこれから食べるわ」


 まっさきにおばさんが、焼きオクトに手を伸ばす。

 もちろん、私も!


「おいしいわ! 焼いたオクトがこんなにおいしいなんて!」

「もしそのスパイスが気に入ったら、置いていきますね。うちの乾燥スパイスです」


 うん、美味しい。タコだ。

 でも、柔らかい。記憶の中のタコより、こっちの方が美味しいかも。

 おばさんと私の反応を見て、マリナとおじさんも手を伸ばした。


「あれ、おいしい。嫌な味とかしないね」

「本当だ! これは酒が飲みたくなるな……オクトは食えるんだなあ」

「僕も! 僕も食べる!」

「ああ、このトマトスープもスパイスが利いていて、おいしいわ~さすが薬草農園のスパイスとトマトね!」

「こんなごちそう、このへんじゃなかなか食べられないな。ありがとうな、アリスちゃん」

「はい! 今度からオクト、捨てないでくださいね」


 結局、オクト料理は大成功だった。

 捨てるなんてもったいないよね。

 毎日こんなに新鮮な魚介が食べられるなんて、ほんとうらやましいな。


 そうだ。忘れるところだった。

 おじさんの腰痛のために、ポーションたくさん作ってきたんだった。

 出しておかないと。


「おじさん、今日はたくさん魚を釣ってきてくれてありがとうございます。マリナとふたりでポーションたくさん作ってきましたから、飲んでくださいね」

「こんなにたくさん……これって、高価なものじゃないのかい? もうこんなに難しいことを習ってるんだねえ」

「お母さん、薬草はアリスんちの薬草農園で、一緒に摘んだんだよ。水やりも手伝ったし」

「私は成長促進魔法が使えるので、いくら摘んでもまたすぐに生えてくるんです。だから、材料費はタダみたいなものなんです」

「なんてことだ……うちのマリナはそんなことまでできるようになったのか。ありがたくいただくよ」


 100本ぐらいのポーションを出したら、ぎょっとした顔をされてしまった。

 でも、説明したらちょっと安心してもらえたみたい。

 だって本当に、ビン代と手間賃だけだからね。

 後で効き目を教えてほしいと言ったら、飲んですぐに身体が楽になったみたいだと言われた。

 まあ、下級ポーションだから、滋養強壮にちょっと効くってぐらいだと思うけど。


「お母さん、僕今日、かき氷っていうの食べたよ。めちゃくちゃおいしいんだよ」

「マリナお姉ちゃんの氷が、ふわふわだったよ。赤いシロップかけて食べた」

「なんだ、お前たち、ずるいじゃないか。お父さんがいない間に」


 夕食の後は、デザートでかき氷。

 包丁で削るところも見てもらって、作り方を伝えておいた。

 学園に戻っても、私が毎日氷をお届けしますからね!


 夜は眠るまで、マリナと隣同士のベッドでおしゃべり。

 いつも思うことだけど、マリナの氷結スキルと、私の収納スキルは切っても切れない縁だと思う。

 学園に行ってから知ったんだけど、高位の貴族の家には冷蔵の魔道具があることにはあるらしい。

 風魔法と水魔法で冷やすらしい。

 だけど、冷凍庫っていうのはないんだよね。

 いつかは発明されるかもしれないけど、それまでは、マリナのスキルが貴重なのだ。


 翌日も、その翌日も、私は海でバカンスを楽しんで、貝もたくさん捕った。

 おじさんは毎日のように大きな魚を釣ってきてくれる。

 申し訳ないような気がしたけど、おじさんも海の恵みはタダだからいいんだと笑っていた。

 滞在期間の2週間の間に、当分食べきれないほどの魚をもらった。

 カニはいなかったけど、大好物のエビはいた!

 マリナは何もないところって言ってたけど、最高の夏休みになったよ。



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