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夏と言えば海でしょ

 ダンスやらマナー講座やら、ちょっとばかし華やかな出来事があって、浮かれ気分になっていたけれど。

 夏休み前には前期試験があった。

 そして、なんとか今回は首席を守り抜きました! ひゃっほー!

 野外学習で加点をもらったし、筆記試験は初級理論なので丸暗記。

 前世の受験勉強のおかげか、暗記は結構得意なのです。

 

 そして、実技の方は、「学園に入ってから新しく覚えた魔法を使う」というテーマで、私は錬金。

 ちゃんと土から鉄を抽出して、鉄球をつくりましたよ。

 鉄の純度が高かったということで、こちらも満点をもらって。

 マリナは農園で練習した、風魔法と水魔法を混ぜて、霧のシャワーをまくというのを褒められてた。

 マリナも次席死守。


 夏休み前には、キャロラインの部屋でお茶会。

 暑くなってきたので、今回はかき氷が女子たちに大ウケした。

 マリナとふたりで包丁買ってきて、せっせと削って収納しておいたものに、いろんなシロップをかけて。

 まだ挑戦していないけど、私は前世で「宇治抹茶味」が好きだった。

 あずきはこの世界にもあるので、あんこ作ってみようかなあ。

 あんみつも食べたいな。


 そして、今年の一大イベント!

 夏休みに、マリナの実家へ遊びに行くのです!

 辺境伯領の最南端、サンタナ子爵領の海側にあるオルトという町。

 貿易などはしていなくて、小さな漁港しかないらしい。

 でも、夏と言えば海でしょ!

 

 ただ、この世界では海で泳ぐ、という娯楽がないらしく。

 女性が肌を出すのもあまり一般的ではないので、無理だよね。

 まあ、私は美味しい魚介が食べられたら、それでいい。

 ビバ、魚介!


 マリナが私の家に来るときのように、今度は私が自分のベッドを収納に入れて持っていく。

 手土産は野菜でいいよね。収納に山程あるし。

 私の収納の自慢できるところは、時間停止機能があるので、どの季節の野菜や果物でも、好きなときに出せることだ。

 大好きないちごなんて春に大量に収納しておけば、年中食べられる。

 ふっふっふ。こういうところは本当に世界一の収納なのです。

 マリナのところで海産物をいっぱい仕入れてくると言ったら、両親も喜んで旅行を許可してくれた。

 お小遣いもたっぷりもらってきたもんね。

 ほんと、娯楽が少ないから、食べるのだけが楽しみ。


 学園からマリナの家へ向かう道中の、ちょうど真ん中あたりに私の実家がある。

 マリナの家へ直行しようとするとどこかへ一泊しないといけないので、いったん私の家を中継点にして一泊。

 まずは首席を死守したことを両親に伝えて、みんなで晩餐会をして。

 もちろん、スイーツパーティーもしましたよ。カイルが楽しみにしてるからね。

 夏休みの後半には戻ってくると約束して、マリナの家へ向かったのです。



 潮風。

 転生してきて、初めての懐かしい香り。

 前世で海辺に住んだことはなかったけど、海水浴に行ったことは何度もある。

 まだ母が元気だった子どもの頃、潮干狩りに行った。

 ああ~アサリの味噌汁が飲みたい。

 この世界にこれといって不満はないけど、食だけは日本が良かったな。

 そんなことをふいに、鮮やかに思い出した。

 前世の記憶なんて普段は忘れているんだけど、何かのきっかけで急に思い出すことがある。


 マリナの両親は、約3ヶ月ぶりに帰ってきた娘の元気な姿を見て、安心したようだ。

 手紙のやり取りはしていたようだけど、やっぱり姿を見るまで心配だよね。


「はじめまして。マリナさんのクラスメートのアリスと言います。お世話になります」

「お手紙で話はよく聞いてますよ。いいお友達ができたって、マリナがそれはそれはうれしそうで。こんな遠いところまで、よく来てくださいました」


 褐色に日焼けした肌に、黒髪のお父さん。

 小柄でぽっちゃりとして、ヘーゼルの髪色のお母さん。

 マリナはお母さんに似たんだね。

 黒髪の人を久しぶりに見たので、なんだか不思議。

 海辺の地方には、黒髪の人が多いんだって。


「マリナお姉ちゃん! おかえりー!」


 ドタバタと小さい子どもが2人走ってきて、マリナに飛びついた。

 黒髪の利発そうな男の子と、目のくりっとしたブルネットの小さな女の子。

 カワイイ。

 うれしそうにぴょんぴょん跳ねながらまとわりついていて、めちゃくちゃカワイイ。

 カイルも赤ちゃんの頃は可愛かったけど、このふたりも負けてない。


「疲れただろう。ゆっくりお茶でも飲みながら、学園の話を聞かせてくれるかな?」

「久しぶりに、マリナの冷たいお茶が飲めるわねえ」


 子ども2人が「冷たいお茶! 冷たいお茶!」と言いながら、飛び跳ねている。

 マリナがいなくなってしまったから、当たり前にあった氷が使えなくなったんだ。

 それはかなり不便だろうな……


 そうだ!

 ここに滞在している間に、山程氷を収納して帰ったらいいのでは?

 そしたら、学園に帰ってからでも、毎日送ってあげられる。

 元の場所に戻すスキルでね。

 そうだ、そうしよう!

 マリナにはいつもお世話になってるから。

 いいこと思いついたな~


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