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貴族と交流してみる

「前にも一度いただきましたけど、わたくし、このアイスクリームというお菓子をとっても気に入りましたの。これはどちらで?」

「あの、それはマリナとふたりで作ってるんです」

「まあ、お手製でしたの? では、そのレシピを教えていただくことはできないかしら?」

「あ、レシピは全然構わないんですけど、ただ、マリナの氷結スキルがないと作れないので……」

「ああ、そういうことですのね。残念ですわ。では、また作ったときに少し分けていただけるかしら?」

「もちろんです! たくさん作ってあるので、いつでもお分けできるんですが、収納がないと保存できないので。食べたくなったときには、いつでも声をかけてください」


 フルーツソースをかけても合うんですよ、とベリーソースを収納から出してかけてみせた。

 ご令嬢たちの目がランランと光っている。

 まるで上級顧客にプレゼンをしているような気分だ。


「アリス様とマリナ様はいつもおふたりで固まっていらっしゃるから、普段はどんな風にお過ごしなのかと思ってましたのよ」

「お料理をなさっているなんて、いいご趣味ですわね。私は料理は全然で……」

「他にも作れるお菓子などはありますの?」


 言葉遣いは貴族だが、女子がお菓子好きなのは万国共通だ。

 今後身分の高い人とお付き合いをするときに、アイスクリームは案外良いツールになるかもしれないな、と思う。

 平民が持っていって喜ばれる手土産なんて、そうそうないもんね。


「マリナが氷結スキルを持っていると知ったときから、ふたりで冷たいお菓子の研究をしてるんです。他にもいくつかあるので、また機会がありましたら、作ってきますね」

「まあ! 気になりますわ! ね、キャロライン様。ぜひぜひその冷たいお菓子のお茶会を開いてくださいませ」

「そうですわね。わたくしも気になりますわ。それはいつでも作れますの?」

「フルーツを少々買いにいかなければいけないので、来週以降なら」


 次のお茶会の約束までしてしまった。

 こんな風にして、貴族は横のつながりをつくっていくんだなあ、と実感。

 私は別に人付き合いが嫌いというわけではないし、たまにはこういう女子会もいいなあと思う。

 騎士団の脳筋たちに囲まれるぐらいなら、こっちの方がずっといいよ。

 貴族御用達のアイスクリーム職人にでもなれたらいいのに。



「はあ……貴族令嬢たちのお茶会、緊張したね」

「でも、アイス喜んでもらえてよかったよね。マリナにしか作れない特技だもん」

「私、自分のスキルがお菓子に役立つなんて、アリスと出会ってなかったら絶対気づかなかった。学園に来てよかったなって思う」

「私たち、平民だからっていじけてないで、少しはマナーとかダンスとか頑張った方がいいのかもね……」

「そうだよね。いつどこで必要になるかわからないから、勉強しておくに越したことはないよね」


 前世には『郷に入っては郷に従え』ってことわざがあったけど、それは学園でも同じことかな。

 貴族が大多数の中に平民が混ざろうと思ったら、相手の常識に合わせないといけないよね。

 前に先生が、『学園は社会の縮図』って言ってたけど、ほんとその通りだわ。



 翌日、朝早くからキャロラインの侍女がやってきて、ドレスの着付けを手伝ってくれた。

 なんと、髪飾りやネックレスなども持ってきて、貸し出してくれると言う。

 キャロラインがわざわざ選んでくれたというので、遠慮するのも失礼だし、おまかせすることにした。


「ほんとにこんなに着飾っていくものなのかなあ」

「キャロラインお嬢様は、この何倍も着飾っておられますよ」

「そうですか……」


 ダンスの授業を甘く見ていた。

 今回は助けてもらってありがたいと思う。

 マリナは鏡で自分のドレス姿を見てぼーぜんとしていたが、他人目から見ると、貴族子女のように見えるから不思議だ。

 私も、自慢の巻き毛金髪を結い上げてもらって、豪華な髪飾りをつけてもらったときに、別人になったような気がした。

 馬子にも衣装……


 慣れないドレスでおっかなびっくり女子寮を出ると、すでに色とりどりのご令嬢たちが集まっていた。

 皆、婚約者なりパートナーなりが迎えに来るのを待っているのだろう。

 キョロキョロと、あたりを見回している、イーサンとケイシーの二人組を見つけた。

 おお! 一応貴族男子、という礼服のようなものを着ている。

 地味なんて思ってたけど、ごめん。結構イケてるよ。ふたりとも。


「今日は、お付き合いくださり、ありがとうございます」

「いいよ、別に。で、どっちがどっちのパートナー?」

「私たちはどちらでも」

「あなたは、錬金クラスでケイシーと一緒なんだろ? 話は時々聞いてるよ。僕は風魔法クラスでそっちのマリナ嬢と一緒なんだ」


 マリナがへ?という顔で、ポカンとイーサンを見ている。

 この顔は全然気づいてなかったな。


「どうだろう。普段会わない方でペアを組むのは?」

「はい、それで大丈夫です」


 特に反対する理由もないので、イーサンと私、ケイシーとマリナがペアになった。

 ケイシーはいつも仏頂面なのに、今日は少し顔を赤らめてマリナにエスコートの手を差し出した。

 まんざらでもないのかも? マリナ、カワイイもんね。


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