マリナから聞いた風魔法の話
寮に帰ると、マリナはすでに戻っていて、私の足音で部屋から顔を出した。
「おかえり~! 錬金どうだった?」
「うん、楽しかったよ。生徒は3人しかいなかったけど。そっちはどうだった?」
「風魔法の基礎講座なんだけど、2人だったよ」
「え、そうなの? なんで?」
「風適性の人って、みんな戦闘実技のほうにいっちゃったみたい。基礎はあんまり使い道ないからって」
マリナの話によると、風魔法の使い道は、エアカッターのように攻撃に使うか。
もしくは、小さな竜巻を起こして、敵を吹き飛ばすか。
または、風を身体にまとって、身体強化したり、早く走ったり。
つまり、戦うことに特化しているらしい。
「でもね。風を操る基本がわかれば、船が逆風にあったときなんかにすごく助かるの。今日はね、部屋の空気の入れ替えを教えてもらったんだよ! 窓をあけて部屋の中から外へ風を起こすと、ほら!」
ははーん。これはつまり、魔法扇風機ですね。
マリナは氷結スキルを持ってるんだから、ひょっとするとブリザードを起こせたりして。
意外と風魔法と相性いいかも?
「ブリザードって何?」
「吹雪、ってわかる? 寒い地方で雪の嵐みたいな暴風が起きることなんだけど」
「へえ……うちの地方では雪が降らないから、ちょっとイメージできないけど」
「つまり、氷結した細かい氷を、強風にのせて吹き飛ばす感じかなあ。そんなことができたらすごいよね」
「ああ……そういうことか」
マリナがちょっと嫌な顔をしたので、どうしたのかと思ったら、子どもの頃に魔力暴走したことがあるらしい。
そのときに、あたり一面を凍らせてしまったんだそうだ。
本人は気絶して覚えてないらしいんだけど、雪と暴風で家の中がめちゃくちゃになったんだって。
それそれ。それがブリザードよ。
「マリナって、入試のとき試験官に氷を飛ばせないのかって聞かれてたよね? ほんとにできないの?」
「……実は、できる」
「やっぱり」
マリナも私と同じで、氷を飛ばすことができたら、攻撃チームに入れられてしまうと思ったらしい。
秘密を打ち明けてくれたから、私も実はファイヤーボールを飛ばせると打ち明けた。
同じ理由でやらなかったけど。
「だと思った。だってアリスが両手に火を出したとき、みんな一斉に避けたよ。飛んでくると思って」
「だよねえ。だけど、私は火魔法をこれ以上鍛えるつもりはないんだ。私、人より魔力量が多いらしくて、何やっても大きくなっちゃうから、制御が難しいの。火魔法なんて危なくて」
「なるほどねえ。魔力が多いのってうらやましいけど、それはそれで悩みがあるのね」
マリナは指先から小さな塊をピシュっと飛ばして、それは壁に当たって落ちた。
まるで氷の弾丸みたい。
「こんな小さい氷なら飛ばせる。でも、これだって危ないよね。先が尖ってたりしたら」
「確かに」
マリナは氷結スキルの方がめずらしくて注目されがちだけど、実は風魔法の適性もあるんだと思う。
5歳の適性判断のときに、水適性のブルーの色が薄くて、白に近かったらしい。
私はあんな僻地の村の教会だったから、2属性でも珍しがられたけど、貴族だったら2属性ぐらい使える人は多いようだ。
私は自分で風魔法は使えないと思っていたけど、ファイヤーボールを飛ばせるなら、少しは風魔法も使えているはずだとマリナに言われてしまった。そうかも。
練習すれば換気ぐらいはできるようになるのかな。
「そうだ。私、週末は実家に帰るんだけど、マリナは何か予定あるの?」
「ううん、別に。うちは遠いから、長期の休みにしか帰る予定はないし」
「だったら、うちに遊びに来ない? 薬草農園しかないようなところだけど」
「いいの?」
「うん! 家族にも紹介したいし。ちょっとやってみたいことがあって、マリナの協力が必要なんだ」
「いいよ、じゃあ、お邪魔しようかな」
やってみたいこと。
それはジェラート作りだ。
この世界に来てからアイスクリームを見たことがない。
スイーツ屋さんにケーキが売ってるぐらいだから、バニラエッセンスのようなものは売ってるはず。
マリナの力を借りて、冷たいスイーツに挑戦したい。
「やってみたいことって?」
「ふふふ。それは内緒。お楽しみに」




