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入学式で、場違い感ハンパない

 マリナちゃんとふたりで、新品の制服に着替えて、入学式の会場に向かった。

 この学園には制服があるのです。うれしい。

 学科ごとに襟の色が違っていて、魔術科の襟は赤です。エンジ色に近い色。

 騎士科はブルーで、普通科は白、商業科は黄色と説明があった。

 制服といえばセーラー服とかブレザースーツなんかを思い浮かべるけど、この世界では全然違う。

 魔術科はローブですよ、ローブ。

 襟の色分けなんかしなくても、見るからに魔法使いです!

 前世で、魔法使いが主役の学園モノ映画にハマっていたことがあったけど、まさにそんな感じ。

 コスプレみたいでテンションが上がる!


 会場に到着してみて、驚いた。

 制服着ているのは、私とマリナちゃんだけだ。

 お嬢様方はきらびやかなドレスを着ているし、騎士科の男性はそれぞれの家紋が入った豪華な騎士服を着ていたりする。

 そういえば、入学式の服装って、特に指定されていなかったっけ。

 そして、私が説明を見落としていたのか、なんと入学式後は歓迎のダンスパーティーがあるんだと!

 ダンスなんてできませんって!

 生まれてこのかた、踊ってる人を見たことすらありません。

 マリナちゃんとふたりで、ダンスの授業があったら一緒に受けようと誓った。

 平民にはダンスなんて無縁だけど、お貴族様に失礼がないよう、最低限のマナーの勉強は必要だ。


 色とりどりのドレスや騎士服の人たちの中で、ローブ姿の私たちは、逆に目立つ。

 「The 平民」という目で見られているのがよくわかる。

 マリナちゃんは申し訳無さそうな顔をして、ずっと俯いている。

 まあ、私も居心地は少し悪いけど、前世の記憶があるせいか、身分の違いはそれほど気にならない。

 関わらなければいいだけだ。

 むしろ、はっきり差別化してくれたほうがわかりやすい。

 ひとりぼっちだと寂しいけど、マリナちゃんという友達ができたしね。


 魔術科の席へ案内されて座ると、今年の新入生は18名だと聞かされた。

 確か受験生は20名ほどだったから、2人ほど脱落したのかな。

 一クラス18名。3年間一緒に過ごす。

 そのうち、平民はどう見ても2名。


 入学式は学園長の挨拶から始まり、在校生代表、入学生代表の挨拶と続く。

 在校生代表は3年生の首席、カイウス騎士団長の息子らしい。

 そして、入学生代表も騎士科の人だった。

 つまり、辺境伯領だから、騎士が花形なんだろうな。

 

 そういえば、魔術科の入学生は、他の科に比べてちょっと地味だ。

 インテリっぽいというか、ひょろっとしていてオタクっぽい男子もいる。

 運動が苦手で、お勉強好きな人が入学しているイメージだ。

 女性は皆ドレスを着ているので、たぶん貴族なんだろうけど、よく見ると地味な人もいる。

 すみっこの方に座っている、おさげ髪にメガネの子。

 もしかしたら仲良くなれるかもしれないな……と思ったりした。


 入学式が終わると別会場に移動して、立食パーティー。

 なんと、そこで『エスコート』というマナーがあると初めて知りました。

 婚約者がいる人は、基本的にパーティーには一緒に参加するらしく。

 入学式には参加していなかった婚約者さんが迎えに来ているのを見かけた。

 もちろん、私とマリナちゃんはすっかり壁の花なんだけど、貴族社会の縮図を観察するのは面白い。

 お芝居でも見ているような気分だ。

 制服着てるから、誰もダンスになんて誘ってこないし、マリナちゃんとふたりでお料理やスイーツを楽しんだ。

 みんな食べないんだもんなあ。

 私は帰る前に、大量に残っているスイーツを、こっそり収納に放り込んだ。

 だってあまってたらもったいないもの。

 あ、皿は盗んでませんよ。お菓子だけね。


 平民連帯感で、マリナちゃんとはすっかり打ち解けた。

 気を使わず、アリス、マリナって呼び合うことにした。

 同い年なんだしね。


「想像はしてたけど、想像以上だったわ……貴族」

「あんな人たちの中で、本当にやっていけるのか不安になっちゃった……」


 寮に戻ってお茶を飲みながら、ふたりで盛大にため息をつく。

 マリナは辺境伯に雇われることが目標だから、私より道は厳しいよね。

 私は、勉強さえしたら、後は実家に帰って農園で働くつもりだから。

 出世を目指していない私のような存在は、この学園ではめずらしいかもしれない。


 でもなあ。マリナの氷結スキルって、前世の知識で考えると、すごく使い道あると思うんだよなあ。

 騎士以外の職業で辺境伯に雇われるって、魔術師か文官しかないだろうし。

 せっかくのスキルを生かせる仕事を探せたらいいのに。

 たとえば、フルーツとかミルクでシャーベット作れるし?

 王都でカフェでもやったら、絶対繁盛すると思う。

 ただし、それには収納スキル持ちの私がセットという前提なんだけど。


 そんな夢のような話をしながら、マリナとふたりで『スイーツ同盟』を作ろうと盛り上がった。

 時間があるときに、冷たいスイーツの開発をするのだ!



読者の方から指摘があったので、在校生代表を変更させていただきました。

自分では気づいていない、おかしなところを指摘してくださる方がいて、助かってます。

誤字報告も含めて、ありがとうございます。

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