第九十五話 会議室1
俺、クローディアさん、エリザベスさん、ポールさんで並び、周りにはフィリスさんと横にモーガンさん、皇帝陛下、六天将のトム・ブラウン様、キース・リンスコット様、鳥族の女性――エセル・グリーンフィールド様や、ドワーフ族の男性――モンタギュー・ウェッジウッド様、王国で見た貴族らしい貴族といった様相の人達が座っている。
部屋はオフィスの会議室を想像してくれたら、そこまで相違はないだろう。
顔見知りであるというのと偉そうな人が少ないから王国で玉間に呼ばれた時よりは緊張してない。けど、多分ここにいる人達って、あの時よりも国に関わっている感じの人達ではあるはず。
なんでそんな大物が勢ぞろいしているような場に同席しているのかというと、停戦国でありグラヴナスの象徴ともいえる銀狼族がカーリン商会を襲った場面に居合わせたからだ。
ちなみに、六天将であり俺の師匠枠でもあるあのおっさんは出席していない。立場的に召集されていないなんてことはほぼありえないはずなんだけど。
「まず聞きたいことがあるのだが」
前髪が沿っている金髪でまつげが濃くて綺麗に沿っており、貴金属が身に付けかなり派手な貴族らしい服装ではあるのだが、意外とくどくなくておしゃれにまとまっている男が手を上げる。背筋はピンっとしていて、姿勢もきれいだ。
年齢は俺よりも少し上くらいに見える。
「どうぞ」
「血で汚れた犬っころがわが領土に侵犯してきたというのは本当なのか」
自慢にしていそうな頭のとんがっている所を触りながら妙に高音で嫌味ったらしい言い回しをする。
完全に見下している態度ではあるのだが……、見た目が面白くてあんまり不快感はない。
というか、これって俺たちに聞いているんだよな?答えた方がいいのか?
「そんな高圧的な聞き方をするなって。銀狼族がカーリン商会を現れたというのは本当だぞ。そこにいる奴らだけじゃなくて、トムの証言もあるからな」
「ならば、そこの者たちはこの場には必要なかったのでは」
「まあ、必要ないっちゃないが、目撃者の証言は多い方がいいだろ?」
そういう緩い理由だったら、こんな重大そうなことが決まりそうな場に呼んで欲しくなかったんだけど……。
「他国の人間を今回のような重要な会議で呼ぶのに、そんな軽々しい理由で呼んでいたとは……。嘆かわしい!」
ちょっと言葉は強いけど、その通り過ぎるな。
「そんな堅苦しいことを言うな。今回の会議は今後の帝国について話し合う場じゃなくて、銀狼族がうちの領土に無断で入ってきたことが論点なんだから。むしろ、こいつらも当事者になる可能性もあるわけだし」
「それはここに住む皆に当てはまること。理由にはならない。……そんなことよりも一言いわせてもらう。あなたは皇帝という地位であるのにもかかわらず、下々と同じ下品な言葉遣いをするとは何事か!」
貴族様はびしっと人差し指を皇帝陛下に向けた。
「貴様!陛下になんて無礼を――」
「まあ待て」
今にも切り殺さんばかりの空気を出していたブラウン様に皇帝陛下は待ったをかける。
それにより、ブラウン様は不満そうな表情を隠しきれてはいないが言われた通りにした。
「それについては悪いな。でも、堅苦しいのは嫌いだから。俺が仰々しいと、周りもそうしなきゃならなくなるだろ」
「それが普通だ」
「まあな。……なあ、俺も一つ聞いていいか?その鼻の穴に突っ込んでいる白いのはなんだ?」
皇帝陛下は会議がどうなるかなんかよりも、さっきからずっと気になっていたことを質問してくれた。
なんかつけていないといけない病気だったりとか、鼻に物を突っ込んでなきゃいけない教えでもあるのかなとかずっと考えていたんだけど。
「ここは獣臭くて仕方がないからな。こうでもしていないとここにはいれん」
え、それだけ?
獣人を揶揄しようとしているんだろうけど、そのために鼻に物を突っ込むって……。俺が当事者じゃないから貶められているように感じないだけなのか?
「あはははは!」
六天将であり鳥族の女性である、グリーンフィールド様は手を叩き足をバタバタとさせて大笑いしていた。
グリーンフィールドさんは六天将にしては幼い容姿をしており、背中から鷹のような立派な羽を生やしている。
「何を笑っている?」
「いやもうだって、そんなのを鼻に突っ込んでここに来るとかもはやギャグじゃないですか!どうしてそんな恰好を!」
目元に涙を人差し指で拭いながら、心底人を見下しているような目と被虐的な笑みを浮かべていた。
「これだから……。先も言った通り、貴様らの獣臭に私の高貴なる鼻腔が犯されないようにするためだと言ったはずだ」
「へぇ?本気で言っているんですか?」
「それ以外なにがある」
目を細めるグリーンフィールド様に、臆せず見下したような視線のまま貴族様は返答した。大物なのか無知なのか馬鹿なのか、なんにしても六天将であるグリーンフィールド様がその気になれば、もうこの世からはいなくなっているかもしれないのに。
「面白ですね、あなた」
「貴様のような輩に面白がられるようなことなどはない」
「グッドウィン様、獣に何を言ったところで無駄ですよ。だからこそ、我々人族主義がこの国を引っ張っていかなければいけないのですから」
だるまみたいな体型でほぼ首がないおじさんが厭味ったらしいねちゃねちゃと言う。体型から、すべての雑事は周りの人に任せ、快適な生活をしながらさぞいいものを食べてブクブクと育っていったことは簡単に想像つく。
「おデブさん、黙ってください。悪臭がここまできてますから」
「な!?獣風情が!」
グリーンフィールド様が鼻をつまんで空いている手を仰いだのに対して、だるまおじさんの返しが面白くない。
もう一人の方――グッドウィン様だったら、貴様ら獣臭を私の高貴な息でここ一帯を浄化しているのが分からんか、みたいなおもろい返しをしてくれそうなのに。
「なんです、やり合うつもり――」
「静粛に!話があまりにも脱線しすぎています!」
リンスコット様が大声を上げた。
グリーンフィールド様はキース様のことを一度見てからだるまおじさんの方を向き、
「やるつもりですか?」
「ひぃ!」
だるまのおじさんは尻餅をつき情けない悲鳴を上げた。まあ、普通だったらこうなる。
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