第九十一話 侵入者1
あの後、いろんなレストランが並んでいるエリアで食事を取った。今回はエリザベスさんが会計してくれて、値段を確認したところまあまあといった感じだった、それ相応の価値はある味だとは思うけど。
腹ごなしも済ませたからといって、あの武器紹介の続きとはならず、食品エリアやら衣類エリアやら、魔道具が取り揃えてあるところなどを巡り、さっきまでリアルバースというカードゲームを遊んでいた。
これが結構凄くて、まず、一部屋分ぐらいある筐体にカードを差し込む。その差し込んだカードのイラストのキャラクターたちが、筐体内にホログラムみたいに現れて戦わせるのだ。名前の通りぬるぬる動くしリアルタイム性だからかなりおもろい。
流行りそうだと思うのだが、遊ぶ当人たちの魔力が必要で、魔法を使いなれているような人間じゃないとまともに動かないという欠点がある。
エリザベスさんとかクローディアさんは最後まで動きがカクカクだったし、ポールさんでも最後はゲームになるぐらいにしか動かせていなかった。
俺は魔法以外にたいした取り柄がない人間ということもあって、結構ぬるぬると動かせたけど。
そんな感じで普通の人では遊べないようなゲーム性だから普及しづらいだろうし、このゲームを作るために結構費用が掛かって頭を抱えているのだと、エリザベスさんは嘆いていた。
なんでその感性があの武器達にも働かないのだろうと思いつつ、魔力の扱いが上手くないと動かせないのなら、魔法学校の教材にでもできそうだと考えなしに呟いた。けど、エリザベスさんは特に反応していなかったのでそんないいアイディアではなかったのだろう。
まあ、思いつきだし。
「そろそろいい時間ですわね。……皆さま、今日はここに止まりませんこと?」
エリザベスさんは俺たちに問い掛ける。
案内図を確認したときは宿泊エリアなんてなかったような気がしたけど、なんて考えながら、
「泊まるって、ここに宿泊場所があるんですか?」
「ええ。ここの隣に宿を建設中なのですわ。まだ、完成はしていませんが、最上階以外は完成していますので利用自体は可能ですのよ」
へぇ、すげえな。その宿に泊まれば、隣にこの商会があるわけだから衣食住のすべてがそろうってわけでしょ。
その宿の出来次第ではあるんだろうけど、利便性を考えたらかなり人気が出そうだな。
「あたしは帰らせてもらうわ。お嬢様のことがあるから」
「別に気にしなくとも問題ありませんこと?わたくしが帝国に向かう際に同行なさったモーガンさまが、フィリスさまにお付きになっているのでしょう?」
「そうだけど……」
クローディアさんは苦い顔をしながら歯切れを悪くする。
恐らくだけど、フィリスさんからも同じことを言われたんじゃないだろうか?クローディアさんってフィリスさんに対しては結構過保護なところがあるのに、行方不明になった次の日に付き添っていないのは違和感あるし。
「お嬢様!例の侵入者が!」
昨日、エリザベスさんに耳打ちしていた従業員らしき人物が、額に汗を浮かべながら駆け込んできて報告する。
え、なに?侵入者? ……例の?
「焦らず落ち着きなさい。それで数は?」
「一人です!」
「でしたら、わたくしの相手ではありませんわね」
何その謎の強者感……。学園でも別に成績がいい方ではなかったと記憶しているけど。
「お、ターゲット自らお相手してくれるのかよ。ここまで誰もいなかったし、そんなに俺とやり合いたかったのか?」
黒髪で男のような口調をしている少女が話しかけた。
頭には犬耳を生やしている。男っぽい荒い口調をしているのだが、可愛らしい見た目をしていた。
見た目だけで考えるなら、ちょっとカッコつけたいのかなって感じなのだが……。
「いえ、あなたのような可愛らしいお嬢さんを傷つけたりはしませんわよ」
「なぁ!?可愛らしいとか、お嬢さんとか言うんじゃねえ!俺にはアルテって名前があるんだ!戦士である俺をガキ扱いするな!」
「あら、申し訳ありませんわ、アルテさま。店前には休業中の立て札があったはずなのですが、どのような御用で?」
「……ふん。あんた、カーリン商会の跡取りだろ。親父にあんたのことを連れてこいって言われたからきた」
父親から帝国で一番大きい商会を襲えって……。どういう家庭環境なんだよ。
「素直に俺についてくるなら手荒な真似はしねえ。さっきは直々に相手するとか言って舐めた口を聞いていたけど、弱い者いじめはダセえからな」
「そんなことを気にせずともいい――へ?」
言い切る前に、黒髪の犬耳少女はエリザベスさんの頬を拳でかすらせた。犬耳少女は刃物を持っていないはずなのに、エリザベスさんには切り傷のような赤い筋が出来ている。
エリザベスさんは唖然とした表情で、少女の顔と自身の頬を傷つけた拳を交互に見て、
「ななななななな!?」
地面に尻餅をついた。
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