表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/146

第七十三話 蜘蛛の魔物1


 いつまでも川に浸かっているわけにはいかないので、目視できるところにある陸地を目指すことになった。

 水の流れがあったり寒かったりしてしんどい面はあったが、怪我をするような大きな問題が起きることもなく、陸地にたどり着く。

 ただ陸地についた後が問題だった。川に浸かっていたから服がびしょびしょに濡れているせいで、外の空気とか風が当たって体温が失われていくからだ。

 フィリス様は大丈夫なのかなと思い見てみると意外と平気そうだった。俺よりも身体能力が高いことが関係しているのかもしれない。

 そして、今俺たちはいったん腰を落ち着けるような場所はないかと探している。


「良さそうな場所が見当たりませんね」


「そうですねぇ……。この風をしのげるようなところがあるだけでもいいんですけど」


 焚火でもして体を温めたいんだけど、谷間風みたいなのが吹いているせいで火なんて起こせないだろうし。

 ……それにしても、寒い。


 寒さで体を抱えながらも辺りを見回していると、少し道なりに進んだところで妙にでかい――大体俺たちと同じぐらいの大きさをした茶色い体毛の蜘蛛がいた。

 デカ蜘蛛はこれまたでかい魚を背負いながらどこかに向かっているみたい最中なので、気づかれているわけではなさそうだ。


「あれって魔物ですよね……」


「はい。出来れば見つかりたくはないですが――」


 フィリス様が言葉をつづける前に蜘蛛が叫び声を上げた。

 特に遮蔽物があるわけじゃないからそりゃバレるかと思っていたら、ドコドコドコという足音のようなものが響き始めてきて。


「……これ、逃げた方が良さそうな気がしますけど」


「そうしたいところですがッ!」


 フィリス様はそう言い残して飛び上がる。

 どうしたんだろうと思って見上げると透明な液体が空から降り注ぎ、すぐ隣にデカ蜘蛛が真っ二つなった左右の死体が落ちてきた。


 うぅわぁぁ、この液体って……。


「まだ来ますよ!」


 透明な液体の正体に気づいて今すぐにでも洗い流したい衝動にかられるが、少し先にいるデカ蜘蛛の集団が見えてそんなことを気にしている場合じゃないと、顔が歪めながらも戦う覚悟を決める。


「クイックバレット」


 まず、一番近いデカ蜘蛛に魔弾を放ち倒すことが出来た。

 見た目の割に意外とたいしたことないのかと思いながら、もう一匹を狙ったら魔法障壁のようなもので防がれてしまう。


 この蜘蛛、魔法を使えるのか。厄介だな。


「後方は任せます」


 フィリス様はこっちの返事を聞かずに、すぐ近くにまで迫っているデカ蜘蛛たちの群れに向かっていった。

 後方ってことはもしかして、と思い振り向くと一匹のデカ蜘蛛がいた。

 

「イグニッションバレット」


 威力の高い弾丸を放ってみるが、魔法障壁が現れて防がれてしまう。

 

 ちっ、めんどうだ。

 でも、さっき魔法を直撃させたら倒せたわけだし、魔法障壁にさえ阻まれなければいけはするんだよな……。


「アーススパイク」


 デカ蜘蛛がいる地面に岩の三角錐状にしたものを作り出す。そして、その岩の杭でデカ蜘蛛を串刺しにした。

 思っていた通り、魔法障壁さえなければ攻撃が通ることを確信する。

 上手くいったことでちょっと油断をしていたら、殺したはずのデカ蜘蛛が粘液の糸のようなものを飛ばしてきた。

 

「あぶな!?」


 とっさに反応して避ける。

 糸を吐き出したデカ蜘蛛の様子を確認すると、ピクリとも動いていなかった。

 

 倒したと思ったのに、怖えなぁ。

 ……でも、とりあえずはこれ以上いなさそうかな?


 フィリス様がいない方向を確認して、不意を突かれたこともあって頭上を確認する。

 大丈夫そうだしフィリス様でも手助けに行こうかなと思っていたところで、さっきと似たような糸が事前に張っていた防御壁に絡みついてきた。

 糸の吐き出された先に視線を向けると、川の中からデカ蜘蛛が陸地に上がってくる。

 

「魚を背負っていたことを考えると、泳げてもおかしくないか!アーススパイク!」

 

 さっきと同じ要領で仕留めようとしたが効かなかった。多分、お腹に魔法障壁を張られて防がれたんだろう。


 学習しているってことは、水の中で息をひそめてさっきの戦闘を見ていたってことか!


 意外と様子見するような頭があることに驚いていたところでデカ蜘蛛のすぐ近くに魔法陣が現れ、その陣から糸が吐き出された。

 その糸は防御壁に巻きついて、俺は徐々にデカ蜘蛛がいる方に引っ張られてしまう。


「この糸、魔法で出来たものだったわけか!それならこの強度も納得だけど!フレイム!」


 炎の魔法を放ってみたが、糸は燃えそうにない。可燃性のものではないようだ。

 引っ張られないように何とか踏ん張ろうとするも、向こうの引き寄せる力の方が強い。

 

 このままじゃ不味いな……。でも、そんなに俺のことを引き寄せたいなら!


 踏ん張るのをやめ、わざと引っ張られるようにして地面を蹴る。

 

「クイックバレット」

 

 飛び上がったタイミングで頭上から魔弾を放った。

 デカ蜘蛛の頭上から魔弾を撃っただけなので防がれてしまうだろうが、


「アーススパイク」


 同時に放った岩の杭がデカ蜘蛛の胴体を貫いた。それにより、デカ蜘蛛は動かなくなる。

 宙に浮いている俺にヘイトを向かせてお腹を魔法で貫くという作戦は上手くいったのだが、喜べなかった。

 水辺にいるデカ蜘蛛に引っ張られるわけだから、必然的に川に放り込まれることになるわけで。


 バシャーン!


 頭から川に突っ込んだ。

 俺は必死に水を掻きわけて水面から顔を出して大きく息を吸い、クロールっぽい泳ぎ方で陸地にたどり着く。

 

「さみぃ……。ちょっと乾いてきていたのに、またびしょ濡れだよ。……結果的に、体液的なものを洗い流すことは出来たわけなんだけどさぁ」


 気分がどんよりと落ち込みながら両腕を組んで寒さをしのごうとしていたら、上からデカ蜘蛛を五倍ぐらいにした巨大蜘蛛がフィリス様と一緒に降ってきた。


お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ