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第六十七話 魔法2


「じゃあ、固有魔法というのは知っているか?」


「いえ」


「そうだな……。仮に毒を生成する毒魔法というのがあったとして、高位の魔術師と毎日のように毒について研究して服毒もしているが魔術についてあまり詳しくないやつ、どっちの方が強力な毒魔法を習得できると思うか?」


「……毒について詳しい人ですかね?」


「そうだ。理由としては、毒の知識やその効能に詳しい毒の研究者の方が毒のイメージがしやすいからだ」


「……でも、高位の魔術師が毒っていうのをなんとなくイメージをして、それっぽい魔法を使うとかで出来そうですけど?」


「まあ、習得は出来るかもしれないし、魔法を覚えることの慣れもあるだろうから習得するのは早いのかもしれない。だが、強力な毒を使えるのは間違いなく毒について詳しい奴だ」

 

 毒に詳しい奴の方が強力な毒魔法を使える理由か……。

 毒についてイメージできるからってことなんだろうけど、高位の魔術師が無理やり再現しようと思えばできるような気もするけどな……。


「魔法ってのはイメージが詳細であるほど、使用する魔力量が少なくてすむという特性がある。毒に詳しい奴は、どの器官にどういう毒が回ったら致死量に至るのか理解しているし、実際に服毒していることで体に出る影響や痛みも分かっていることでイメージが詳細だから少ない魔力量でしっかりとした毒を生成できる。逆に魔法を扱うのが得意ってだけだと、魔力の扱いや魔法に慣れているってだけだから、ちょっとした毒を魔法で再現するだけでもかなりの魔力量を食っちまうってわけだ」


「……なるほど」


 つまりはイメージが詳細であれば少量の魔力で済むが、漠然としていると大量の魔力が掛かってしまう。そして、魔力量に無理をいわせるよりもイメージが詳細な方がコスパがいいから、毒について詳しい人だと強力な毒魔法を使えることになるってことか。


「これで固有魔法というのはどういうことか分かったか?」


「……なんとなく。その人の得た経験によってでしか再現できない魔法があるということですよね」


「そういうことだ。他にも、人々からイメージされることによって発現される魔法とか先天的に使える魔法というのもあったりするんだが、そういうのはかなり特殊な例だな。あと、身体強化魔法や防御魔法っていうような無属性魔法も固有魔法ともいえる」


「……もともとはそういう魔法も固有魔法と分けられるものだったけれども、汎用的で使いやすい魔法だから無属性魔法という括りにされているってことですか……」


 面白いな。魔法というのはイメージした通りになるものだとは思っていたけれど……。

 イメージした通りになるものだとしたら、そりゃ発現させようとしている魔法について詳しい方が成功率とか効力が上がるか。


「結構ためになる話をしてやったんだから、今度はお前が返す番だな」


「……一応、陛下から指示されて指南受けるように言われたんですけど」


「そうか。だとしても、貴重な時間を割いてやったんだから見返りがないとおかしいと思わないか?」


 行き詰っていて暇だからみたいなことを言って来たくせに。

 でも、実際教えてもらったのに嫌ですとはさすがに言いづらいからな……。


「見返りって言われてもそんなたいしたものは持ってないですよ。お金はなくないですけど」


「いらねえよ、そんなもん。お前のアイディアが欲しいんだよ」


 住んでいる家の大きさとか皇帝陛下とつながりがあることからして、お金ではないんだろうなとは思っていたけど、アイディアか……。

 

「なあ、魔道具については詳しいか?」


「いえ。全くと言っていいほど何も知らないですね」


「……まあ、意外と素人の意見も役立つかもしれないか」


 魔道具についてのアイディアを聞きたいってことか。


「あの、アイディアを出すっていても、そもそも魔道具ってどういうものか知らないです」


「なんで知らないんだよ」


「あんまり触れる機会がないので」


「……そういえば、王国は魔法主義であんまり魔道具が使われてないんだったな」


 おっさんは頭を掻きながらため息をついた。


「そもそも魔石については知っているよな」


「あ、はい。魔物の第二の心臓と呼ばれているものですよね」


 魔物の体には体を動かすための心臓と魔力を使うための魔石という器官がある。魔石が壊されると魔力が使えなくなり、死んでいないにしても実質的にただの動物になってしまうため、第二の心臓と呼ばれているらしい。


「そうだ。魔道具っていうのはその魔石を媒介にして動いている。そして、魔石に魔法を刻印された箱に入れることによって魔道具となる」


 箱?


 一瞬魔道具は全て箱状になっているのだと思ったが、上につるされている魔電球が箱の形をしていないから違うということに気づく。


「……ああ。箱っていうのは、本当の箱に魔石を入れているというわけじゃないってことですか……。えっと、だから……、普通の矢を雷の矢に変換するクロスボウという魔道具がある場合、そのクロスボウ自体が入れ物というか箱っていう意味ですよね」


「そうだ。あと、魔道具には二種類あって常時発動型と手動型がある。効果は名前の通りで、常時発動型は常に効力を発揮して、手動型は任意で発動させるというものだ」


 常時発動型は、ずっと燃え続ける火を思い浮かべ、手動型というのは拳銃を思い浮かべた。


「……基本的には手動型のものが主流と考えてもいいんですかね?ずっと発動している魔道具とか見たことないですし」


「まあそうだな。常時発動型はまだ実験段階のものしかないから……、これ以上に説明してもあんまり意味ないし、本題に入るぞ。お前だったら、どんな魔道具があったら嬉しい?」


 欲しい魔道具か……。もともと物欲があんまりない性格だからこれってものはないんだけど……。 

 パソコンみたいなものがあれば便利だとは思う。ただ再現するのは難しそうだし、ゲームをやりたいだけだからパソコンである必要がないし……。

 なら、ゲーム機が欲しいということになるか。


「なんていえばいいのかな……。本の世界に入れるような魔道具が欲しいですね」


「は?いきなり結構な奴をぶっかましてきたな」


「……やっぱ難しいですよね」


「世界を作るような魔道具なんてS級の魔物から取れる魔石でさえ作れるかどうか……。いや待てよ。でかい敷地で、一つ一つ舞台措置を作っていけば出来なくはないのか?そうなると――」


 おっさんは自分の世界に入ってぶつぶつと独り言をしだす。

 独り言の内容的に、ゲームというよりもテーマパークに近いものを考えているような気がするが。


「うん、面白そうだ。……いや、面白そうなアイディアをありがとうな。じゃあもうやることがあるから、出てってくれ」


 やることがある、じゃなくて、やることが出来ただろ。


 俺はそんなことを思いながらおっさんに厄介払いされて家から追い出された。

 そして、改めて家の標識を見るとダーレン・ラルストンと書かれている。


 ……これが魔術の天才と呼ばれた、六天将の一人か。

 なんか、帝国の守護神様に無駄な労力と時間が掛かるものに興味を持たせちゃったような気がするけど、質問に答えただけだし……。

 他の人とか何をやらされているんだろうな。



お読みいただきありがとうございます

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