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第六十六話 魔法1

途中までです


「えっと……、こっちでいいのかな?」


 俺は皇帝陛下からもらった地図を手にしながら、なれない街中を三十分ほど彷徨っていた。

 地図の書かれている通りに行ければ十分前ぐらいには目的地についているはずなのだが、初めての町であるというのとそもそも方向音痴であるため、さっきから同じところで首を傾げながら行き来している。


「なんでこんなことを……」


 思わず心からのボヤキが出てしまいながらも、このままではラチが明かないとまず自分がどこにいるかを把握しどこに行けばいいのかをしっかり考えてみることにした。


 この地図を見る限りだと……、大通りがここにあって、曲がり道が一個、二個、三個……。

 じゃあ、俺は曲がり道の二個目の手前にいるのか?


 地図をぐるぐると回しながら周りに見える道を見比べて三分、自分がどこにいるか理解する。


「じゃあ、まっすぐ行って右に曲がればいいのか」


 俺なりに理解した通りに歩いてみると、目的地らしき家が見つかる。

 

「……ラルストンって書いてあるし、多分あっているよな」


 本当に目的地で合っているのかを表札で確認してから、家の扉をノックした。

 しかし、誰かが出てくる様子はない。

 

 留守なのか?ただ、居留守をするって聞いたからな……。はぁ。面倒だしもう何もなかったことにして、帰りたいけど。


「あの、すみません!皇帝陛下からここに来るように言われまして!」


 先程よりも強く扉を叩きながら、中にいる人に皇帝陛下という無視できないであろうワードを口にする。

 これで返事がなかったら本当に留守または居留守を決め込むつもりなのだと判断して帰ろうと思っていたら、扉が開いてしまった。


「誰、きみ?レイからの使い?」


 出てきたのは、ぼさぼさの白髪と無精ひげを生やしており、無地の白いTシャツと短パンを履いた三十代ぐらいのおっさんだった。

 ただ、よくよく見ると精悍な顔つきをしているため、身だしなみを整えたらかなり見れる姿になることが予想つく。

 

 レイ?確か、皇帝陛下の名前がそんなのだったような……。


「いえ、そういうわけじゃなくて。皇帝陛下から腕の立つ魔術師がここにいるから、その魔術師に会いに行くといいと言われまして」


「ええ……。とりあえず、中に入って」


「失礼します」


 無精ひげを生やした男の人はいかにも面倒だといった感じで頭を掻いているが、中には入れてもらえるようだ。

 家の中は予想通りと言えばいいのか、物が散乱しており、いわゆる汚部屋というやつだ。

 ただ意外だったのが、食べ物の臭いとか腐ったようなにおいとか埃くさいといったことはなかったことだ。


 この人、整理整頓はできないけど魔術師だから魔法を使って部屋を清潔にさせることが出来るのか。

 まあ、こんな物が散らかっている部屋を清潔と表現するのは間違っているのかもしれないが。


「レイがここに寄こしたって言っていたけど、具体的にはどういう要件なの?」


「ここに住んでいる魔術師に師事してもらえと言われまして」


 どうせ時間はあるだろうからとも加えて言われたが、気を悪くするだけだろうから勿論口にはしない。

 そもそもこのおっさんに会わなければいけなくなった発端は、動く死体と出会った翌日、皇帝陛下に助けてくれたお礼として師を紹介すると言われたからだ。

 これは俺だけじゃなくて、フィリス様はトニー・ブラウン様に、ポールさんはキース・リンスコット様に、クローディアさんはエセル・グリーンフィールドという人が担当となるらしい。

 記憶が間違っていなければ、エセル・グリーンフィールドという人は六天将だった気がする。

 名前を聞いたときのクローディアさんの反応がブラウン様と会った時と全く同じ反応をしていたから、多分間違いないと思うけど。

 そんな中、俺はこのくたびれた三十代ぐらいのおっさんがあてがわれたわけだ。


「はあ……。ちなみに俺が誰なのかは聞いているの?」


「いえ、腕の立つ魔術師であるとしか聞いていません」


「……まあいいか。ちょっと行き詰っていたところだし。で、君は何を教わりたい?」


「……おじさんの得意魔法とかがいいですかね」


 修練するというのに程遠い性格をしているのだが、最近はいろいろと物騒なことが起きているため、フィリス様を手助けできるぐらいの実力が欲しいとは思っている。

 そうなると、フィリス様を守れるような魔法を使えるようになるとか、フィリス様をアシストできるような魔法を使えるようになるのがベストだと考えられる。

 ただ、そんな魔法を要求するよりも得意魔法を指南して欲しいということにした方がこのおっさんもやりやすいだろうと思い、そうお願いした。

 

「……とりあえず、魔法を使ってみろ」


「分かりました。クイックバレット」


 白髪のおっさんの言っている意味が実力を見せてみろという意味だととらえて、いつも使っている魔法を放ってみた。


「ほう、いい魔法だな……。クイックバレット」


 いや、ちょ!?


 白髪のおっさんが魔法名を唱えだして魔弾を俺に撃ってきたので、とっさに防御壁を張って防いだ。

 

「何のつもりですか!?」


「何が?」


「何が、って……。なんで突然こっちに向けて魔法を撃ってくるのかって聞いているんです!」


「いや、いい魔法だと思ってさ」


「だとしても、俺に無言で撃つのはおかしいでしょ!」


「……いや、わるいわるい」


 俺の訴えかけに白髪のおっさんは口を開けながら耳をほじくって一切悪いとは思っていなさそうだ。


「なあ、魔法がイメージをするだけで使えるものだっていうのは知っているか?」


「……まあ、一応」


 こいつ、完全に無視をして話を進めやがったな。


 そう思いはしたが、ここで話を停滞させても仕方がないので追及しないことにした。

 あと、こいつに何を言っても意味がなさそうだというのもあって。


お読みいただきありがとうございます

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