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第五十九話 人型の魔物


「マジックボルト」


「ファイヤーウォール」


 学園に戻ると教師や学生が、狼に人っぽい要素を足したような魔物や、蛇の見た目で二足歩行している魔物、鳥頭人間の魔物など、人の要素がそこかしこに見られる魔物と戦っているという光景が広がっていた。


 ねえ、俺、もうへとへとなんだけど……。


「……オウカさん」


「いや、これは拙者とは関係ないでござるよ!」


 俺が何を言いたいのか察したのかオウカさんは全力で否定する。


 まあ、関係ないか。俺を試すにしても、嫌がらせするにしても、あまりにも規模が大きすぎるし周りを巻き込みすぎだからね。

 いくら依頼だからといって、オウカさんがここまで悪辣なことはしないでしょ。

 

「関係ないということを証明する代わりに、拙者がこの件は何とかするでござるから。セオドア君は休んでいていいでござるよ」


 オウカさんはそう言い残すと、魔物がぞろぞろと歩いてくる発生源らしきところに向かっていった。





 学園のだれからも見えない位置についてからは魔物を狩りながら進んでいると、胸元に校章がついている破けた学生服を羽織っているゴリラの魔物と一人の男がいた。


「おぬしがこの騒動の元凶でござるかな?」


 耳にピアスをし、奇抜な髪形をしているチャラチャラした雰囲気の男が今回の首謀者であると確信を持って訪ねた。

 理由は魔物がその男のそばに控えるように立っており、付き従っているように見えるからだ。


「ん?ああそうだよ。それにしても、君みたいな可愛い子ちゃんにほとんどやられるなんて。てっきり、天才ショタ教師のヴィクター・ヤードリー君が活躍するんだと思ったんだけど」


「申し訳ないでござるな。ただ少し優秀なだけの学生がおぬしの魔物を倒してしまって」


 ……簡単に自身が首謀者であることを認めたでござるな。それに、この学園一番の実力者がヤードリー先生であることも気づいているのでござるか。

 ヤードリー先生が天才どころか、鬼才と言えるレベルの術者であることはあまり知られていないことだと思っていたのでござるが。


「そうだね、ちょっと反省してほしいけどさぁ。でも、あんたみたいな美少女が来てくれたんだったらむしろ役得って言えるかもな。色々と楽しめるだろうし」


 男は舐めまわすような視線で見てくるが、嫌悪感は湧かなかった。

 別にそういった視線に慣れているからというわけではない。男は確かに舐めまわして見てきてはいるのだが、そこに情欲がこもっているようには感じられなかったからだ。


「あ、もしかしてバレてる?」


「おぬしが拙者を女として見ていないということを、でござるか?」


「やっぱりバレてんだ。うーん、やっぱり演技は下手なのかな、俺」


「そんなことはないでござるよ。拙者は少し人よりも鋭いだけでござるから。演技だけでも食べていける実力はあると感じたでござるよ」


「はは、そういわれると嬉しいな。でも、せっかくなら君のような人の心を動かすような演技力が欲しいじゃん。……まあ、そんなことはこの場ではどうでもいいか。何の用かな?」


「今学園を襲っている魔物達を止めてほしいでござるよ」


「それは出来ないな。俺にはこいつらを止める手段を持ってないから。まあでも、そもそもできたとしても。今やっていることを辞めるつもりなんてないんだけどさ」


 男はやれと指示すると、そばに控えているゴリラに似た魔物がごつい見た目に反して風魔法を放ってきた。

 その魔法で家を二つか三つは吹き飛ばすことが出そうな暴風が吹き荒れる。


 魔物を止めるすべを持っていないでざるか……。たった今魔物に指示したように見えたでござるが。

 

「今の魔法を防げる防げないみたいなそういう次元じゃなくて、何もしなくてもびくともしないとか……。君、本当にただの学生じゃないのか!?」


 男は焦っているのか大きくのけぞり、驚いたような声を上げた。


「いや、拙者はれっきとしたこの学園の生徒でござる。ただ、少しだけ体を鍛えているというだけでござるよ」


 拙者はこの男との会話を楽しむつもりはないので、ゴリラの魔物の背後を取り魔法で作った刀で左胸に位置する場所を刺す。


「すまない」


 最近聞いた人が魔物になる薬、学園に襲い掛かって来ている人型の魔物、破れた制服を着ていることから、ゴリラの魔物の正体にうすうす気づきながらも印を結び体の内から燃やした。

 

「……え?何その強さ?……華麗ともいえるその身のこなしと黒髪の女剣士。もしか――」


 拙者は尻餅をつき後ずさりながらぺらぺらと喋る男の首を跳ね飛ばす。


 ……何から何まで演技くさくござったな。


「まあなんにせよ、これで騒動は収まるでござろう」


お読みいただきありがとうございます

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