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第四十六話 魔導杖2


「目的地が見えてきましたよ」


 フィリス様に言われて辺りを見回してみると、さっきみたいな目印となるシンボルはなかったが、周りが食べ物関連の店ばかりな中、看板に杖屋と彫られていたのですぐに分かった。

 店前に魔法薬のようなものが並んでおり、看板にはフレンドリーで皆さんが親しみやすさを売りにしていますと書かれている。

 フレンドリーなことを売りにしているというのが何なんだよって感じだからな。親しみやすさよりも値段とか品質を売りにしろよとツッコミを入れたくなる。

 フィリス様と一緒に来なかったら絶対にここを杖選びの場所として選ばなかっただろう。


「い、いらっしゃいませ」


 店に入ると、手のひらをこすり合わせながらこっちじゃなくて床を見ている青年が出迎えてきた。

 声も周りが静かだったので何を言っているのか分かるけど、といった小ささレベルの声量だった。

 全身真っ黒な服を着ており、目の下にあるクマとひょろがりで猫背なせいで看板に書いてあったようなフレンドリーさが見受けられない。むしろ人と関わるのが苦手そうだという印象だ。


「ど、どういったものを、お探しでしょうか?」


「えっと、魔導杖を探していて……、なるべく値段は控えめなものがいいです」


「そ、それですと、こちら側にある商品がおすすめですよ」


 店員さんは無理やり作っていることが簡単に分かってしまう笑みを浮かべて、俺から見て右側に杖が並んである棚を指す。


「お、お客様は、一年生の学生さんですよね?でしたら、これなんかは魔法の制御力が上がるので、とてもいいと思います」


 なんで俺たちが学生であることがともかく、一年生であることが分かったのだろうと疑問に思った。

 しかし、フィリス様の胸ポケットあたりある校章に星が一つしか描かれていないのが目に入り、星の数で学年が分かるようになっていることを思い出す。


「制御力……。それって、魔法を行使する際の制御が楽になるってことですか?」


「は、はい」


「あー……」


 杖なんて触れることがなかったから、いいのかどうかわからないな。

 もちろん魔法の制御がしやすくなるのはありがたいけど、どちらかというと魔力のコントロールは得意な方だから、魔法の威力を上げてくれる方が俺として嬉しいんだけどな。

 まあ適当な奴でもいいんだけど、せっかく買いに来たんだったらいいものが欲しくはなる。


 微妙な反応をしてしまったからか、店員さんは不安そうな目で俺のことを見ていることに気づく。


「他の杖だとどういった効果があるのでしょうか?」


 なんか気まずくなってどうしようかと悩んでいたところに、フィリス様がいい質問をしてくれた。


「えっと、お客さんはそもそも杖にどういった効果があるのか知っていますか?」


 俺とフィリス様は頭を振る。


「き、基本的な効果としては、魔法の制御しやすくする、魔力の消費量を抑えるといった効果があるんです。ほ、他にも刻印をしたり宝珠を埋め込むことによって、魔法の威力を底上げしてくれるものもありますがかなり値段が高いです。そもそもの話、杖とは術者の補助をするものであって、術者以上の魔法を使えるようにするものではないのです。杖とは物ですから、いつか経年劣化してしまいますし事故や緊急を要す場面で折れてしまうこともあります。もし急を要する場合に折れてしまうと、杖に頼っていた術者は思ったように魔法を使えなくてひどい目に合うことも珍しくないです。それに、メンテナンスをする際も杖が傷んでいるかどうかはすぐわかりますけど、宝珠は全く分からないですからね。だから、余計に事故が起きる確率が高く……」


 いきなり饒舌に話し始めた店員さんは話すのをやめ、こっちを見ると顔色を真っ青にして固まった。


「す、すみません!余計なことをしゃべりすぎました!」


「そんなことないですよ。私たちのような未熟な魔法師が杖に頼り切るのは良くないということがよく分かる、とてもためになるお話でした」


「そ、そうですか?」


「はい」


 びくびくしながらこっちのようすをうかがう店員さんに、フィリス様は柔和な笑みを浮かべて頷いた。


「あの、さっきおすすめしてくれた杖をください」


「わ、分かりました」


 杖について情熱を持っていそうな人のおすすめだから、いい物なんだろうと思い購入することにした。

 値段もリーズナブルだったし、あんなに熱心に説明する人のおすすめじゃないものを選ぶのはな……。

 何かされるわけでもないだろうけど、この店員さん自分が勧めたやつじゃないのを買われたことを露骨に落ち込むようなタイプに見えるし。


「あ、ありがとうございました!」


 扉を開けたタイミングで、ぼ、僕でもできるんだ、という小声が聞こえてきて、この店員さん大丈夫なのかなと心配を覚えながら店を出た。


「お付き合いありがとうございました、フィリス様」


「いえ、こちらこそ。私もセオドアさんと一緒にお買い物が出来て、嬉しかったですから」


 ……相変わらず人を勘違いさせるような発言をするな、この人は。

 ……いや、これは普通の挨拶か。フィリス様って顔がいいから、ちょっとプラスなことを言われるだけでそういう感じのものに聞こえちゃうんだよな。


「じゃあ、帰りましょうか」


「え、もう帰ってしまうのですか?」


「……まあ。目的のものは買えましたし」


「まだ日は沈んでいませんし、このまま帰ってしまうのはもったいないですよ。せっかくですから、もう少し遊んでいきません?」


「……分かりました」


 ここで断るとフィリス様に楽しくなかったのかなとか思われそうな気がして、若干疲れてきていたのだが頷いた。

 

 正直フィリス様がいてくれて助かった部分はあるから、断るのもちょっと悪いし。


読んでくださりありがとうございました。

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