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第三十三話 クローディアとのお出かけ2

前回の後編です


「じゃあ、あそこに売っているものでもいいですかね?」


「……あんたが武器を使ってるのを見たことがないけど」


「まあ、護身用として持っておくのもいいのかなと思いまして」


 武器を使う間合いになったとしても魔法で対応するだろうから、護身用としても役には立たないだろうなと思いながらも、クローディアさんを納得させるために欲しい理由を無理やり作り口にした。

 

「……そういうことならいいけど」


 どうにも納得いってなさそうなクローディさんと共に武器屋に入る。


「いらっしゃい」


 店には入る前はあんまり広くない店だと思ったが、入ってみると意外と多くの武器が並んでいるな。

 

「で、どれがいいのよ?」


「えーと、ですね」


 そんな使うわけじゃないだろうし、とりあえずはあまり値が張らなくて場所を取らなそうなものがいいよな。

 となると、短剣みたいなのがいいか。


 店を一周見回し終わり、短剣が並んでいた場所に足を向ける。


「これがいいですね」


 RPGで○○ダガーみたいな名前がついていそうな、刃の部分が三角形になっている短剣を指す。値段としては、並んでいる短剣で中の上ぐらいの値段だ。


 最初は別に使うわけじゃないから一番安いのでいいかと思ったんだけど、それだと遠慮している感じになっちゃうし、二、三番目ぐらいに安い奴だと一番安いのは避けたっていうふうに思われちゃいそうだと考えて止めた。

 そういう考え方だと、特に感想を抱かれそうのない中の上である短剣を選んだという理屈も出てきちゃんだけどね……。

 まあ、つまりは気分で決めたってことだ。

 あと、短剣が剣とか槍とかと比べると安めだから、ちょっといい奴でもそこまで高くないというのも決め手になった。


「本当にそんなのでいいの?あっちに、もっと良さそうな武器とか並んでいるけど」


「え?あんなの買ってもらってもいいんですか?」


 俺が思わずそう口に出てしまったのは、クローディアさんの指さしたところに並んでいる武器たちは、どれも十万以上はするものばかりだったからだ。


「じゃなきゃ勧めないでしょ」


「確かに。……だとしても、この短剣の方がいいです」


 いくらもらえるって言われても、十万以上もするものを貰っちゃったら使わないわけにもいかないしなぁ。

 それにあそこに並んでいるのはいろいろと優れている奴なんだろうけど、置き場所が困るし。

 さっき護身用って言っちゃったから持ち歩くことも考えると、かさばらない短剣の方がいいだろうからな。


「あ、でもこれって、買ってもいいんですかね?」


「どういう意味?」


「いやだって、今は学園から支給されたお金とギルドの依頼料金でやりくりしなきゃいけないわけじゃないですか」


 俺たちはヤードリー先生から実際の冒険者としての生活をするためにということで、元々持っているお金は使っていけないと言われている。

 学園から支給されている金額は俺たち五人が何もしなくとも、安宿に泊まって手ごろな飯を食べているだけなら一週間は過ごせるぐらいあるから、縛りとしてはそれほど厳しいものではないが。


「いいでしょ別に。これはあんたへのプレゼントってだけだし」


「まあ、確かに」


 それだとプレゼントと称していくらでも使えることになっちゃうけどな。

 まあでも学園の目に届かないところで活動しているわけだから、ヤードリー先生が言ったことを守らないで好き勝手している人とかもいるだろうし、これぐらい可愛いもんか。


 だれかに言い訳するわけでもなく自分を納得させるための理屈を考えていたら、クローディアさんは短剣を手に取っていた。

 

「じゃあ、これでいいのね?」


「あ、はい」


 買うものも決まったので、レジカウンターへ向かう。


「ねえこれ、そこにいる彼氏くんへの誕生日プレゼントなの?だとしたら、結構値が張るものを買ってあげるわね」


 レジをしているおばさんが会計する机の上にある短剣を見て、そして顔を上げるとクローディアさんを見ながら話しかけた。


「彼氏……?」


「なに誤魔化しているのよ!まだ若いのにそんな高価なものをプレゼントするなんて、彼氏彼女なんでしょうあなたたち!」


 さっきまでつまらなそうにレジに肘を乗っけていたおばさんは、水を得た魚のごとく生き生きとしだす。


 ……本当にいるんだな、こういう人って。


「……はあ?あたしとこいつが……?」


 クローディアさんは少し困惑した様子でこっちをちらっと見て、


「なわけないでしょ!!」


 顔を真っ赤にしながら怒鳴る。

 そんなクローディアさんの様子を見て、レジのおばさんは面白くて仕方がないといった表情をしていた。


 あーあ、食いついちゃったよ。

 こうなることはうすうす分かってはいたけどね……。


「どこをどう見たらこいつとあたしが付き合っているように見えるのよ!!」


「さっき言ったでしょ。こんな時間に男女二人で買い物なんて、デートしかないじゃない」


「違うわよ。……ただあたしはこいつの上司として」


「上司って、いくつなのよ、貴方。それに、もしそれが本当だとしても、まあまあ値の張るこれを買ってあげるなんて彼に気があるんじゃないの?」


「な、なな!?あ、あんたもなんか言いなさいよ!!」


 ……久しぶりだな、この理不尽な感じ。

 まあ今回に限っては、顔を真っ赤にして否定しているクローディアさんのことを可哀そうだから何とも思わないけど。


「あの、よく考えてみて下さい。付き合っている二人が武器屋をデートする場所として選ぶわけがないと思いませんか?」


 クローディアさんから指示されたという理由だけではなく、自分が話をまとめないと長くなりそうだと思ったので、付き合っているわけがないという理屈の部分で否定した。


「まあ普通はそうだけど、あんたたちみたいな冒険者カップルなら、武器をプレゼントっていうのはありえない話じゃないでしょ。それにそこの彼女、見た目はいいのにどこか素直じゃなさそうだから、デートを意識するような場所だと恥ずかしくてこういう場所を選んでもおかしくなさそうだし」


「いやまあ……」


「なに納得されそうになっているのよ!あんたは!」


「……すみません」


 いやだって、ありえそうだと思っちゃんだもん。

 もちろん俺のことを意識しているという意味じゃなくて、クローディアさんってそういうことをしそうだなという意味で。


「とにかくこれを買いますから!会計をお願いします!」


「はいはい」


 店員のおばさんは分かってますよという雰囲気を出しながら会計をする。


「お幸せに」


「違いますから!」


 おばさんの余計な一言にクローディアさんが反応するという一幕があった後に店を出た。


「もう何なのよ、あの店員……。あんたももっと否定しなさいよ!」


「一応しましたけど」


「それはあたしが否定しろって言ったからでしょ!」


「そうですけど……。だって、ああいうのってたぶん反応した方が向こうとしては面白いだろうし。だから、自分も否定しだしたらもっと向こうが喜ぶことになりそうだと思って」


「そんなことは、ないこともないかもしれないけど……。はい、これ!」


 クローディアさんはイラつきをぶつけるかのように、俺に向かってプレゼントを投げつけてきた。


 あぶな!

 鞘に入っていても短剣自体が硬いものだから、当たり所によっては怪我してもおかしくなかったよ、今の。

 俺だから大丈夫だと思って、投げてきたんだろうけどさ。


「ありがとうございます」


 思ったことを言って不機嫌になられても困るので、お礼を口にした。


「買ってあげたんだから、ちゃんと使いなさいよ」


「はい。……用途的に使う場面は少ないとは思うので、だいたいは持ち歩くだけになるとは思いますけど」 


お読みいただきありがとうございます。


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