第十七話 町の現状2
「コボルトの討伐依頼を受けたフィリスさまですよね。何かお聞きしたいことでも?」
なんか見覚えがあるなと思ったけど、この受付の人、ディクソンさんに絡まれた時に依頼の受理をやってくれた人か。
「では、町の状況を教えてもらえますか?」
「分かりました。まず現状はアリ型魔物の対処自体は行えているのですが、出現量が多いこと、未確認であるために情報が不足していることから、根本的な問題解決は難しいと考えています。ただ、まだ街の方々には公にはしていないのですが、先ほど腕の立つ冒険者に隣街に救援要請を依頼し、二日、三日したら援軍が来る手筈となっています」
「なら問題ないんじゃないか?」
ハロルドさんが頭を傾げる。
「いえ、そういうわけにも。このギルドの休憩スペースとその周辺にある建物に町の方たちの避難場所にしている状況で、救援までの食料による問題はないのですが……。不満を言う人も出てきていて」
受付カウンターを見た限りだと、不満という言い方じゃ足りてないように見えるけど。
受付で説明する人達の疲れが見て取れるし。
大方、受付の人が言っている町の方たちって、ここに入ってきたときに見かけた多分冒険者っぽくない恰好をしている人達や受付カウンターにいる人達のことだろう。
ギルドの向かい側にある建物なんかにも見張りみたいなのが立っていたし、ギルド以外に収容されている街の住人はそこら辺に集められてるって感じかな。
いつ日常に戻れるのかという不安と、こんなところにぎゅうぎゅう詰めでいつ元の生活に戻れるのか分からないってなったら、そりゃ不満が出てくるわな。
受付カウンターに子供を探してほしいと訴えかけていた夫婦を見てわかる通り、魔物に襲われて身内とか友人が死んでしまって精神的な不安を抱えている人が多いだろうから、感情的になっているっていうのもあるだろうし。
「今回のニーレムさん達による調査で、もう安全だということになってくれればすぐに解決となってくれるはずだったのですが……」
受付の人は憂いを帯びた表情を浮かべる。
まあまだ魔物はうろうろ街中で蔓延っていたわけだからね。解決とはいかないだろうな。
「なら、不満を言ってくる奴らに二、三日で救援が来るって言ってやればいいじゃない」
クローディアさん、なんかイライラしているように見えるな。
クローディアさんって何もしないのに威張っているのとか嫌いそうだから、こういう時に色々と言ってくる奴らが不快みたいなことを考えていそう。
「そうしたいところなのですが、その予定も確定というわけではないので軽率に発表は出来ないんです」
「だとしても、言った方がいいと思うけど」
「……それは私では判断出来ることではないので。ただ、救援が来ることを公表すること、今起きている問題解決に向けての議論はしています。せめてあの魔物の出現方法にさえ分かれば、対処のしようもあるのですが……」
「ふーん」
どうにも納得いっていなさそうに見えたが、クローディアさんは口を閉ざした。
「市民の方々を守るためにここら一帯の守りが優先される都合上、問題解決のためにあまり人員を割くことが出来ませんので、援軍が来るまで待つというのが現実的な解決策となっています」
援軍が来るまで二日か、三日って言っていたよな……。
それなのに、まだ半日も立っていないのに街の人たちから不満の声が上がってきているわけか。
まあ、数人の街の人たちがなにか行動を移したところでどうとでもできそうではあるけれど、何も不満を抱いているのはここに住んでいる住人だけじゃないだろうからな。
どれくらいの報酬があるかは分からないけど、血の気が多い傾向にある冒険者が自分自身も不安を抱えながらここら一帯を守っているのに、庇護対象からからブーブ言われ続けたら、どういう行動を取り始めるのか。
そう考えると二、三日でも長いよなぁ。
「ご説明ありがとうございました。……そうなると、私たちに手伝えることはここの守備か根本的な解決ということになりますよね」
「はい。私個人の意見としては、ギルド周辺の警護に回っていただけるとありがたいですが……」
「あの」
背後から少女の声が聞こえて来る。
「やっぱり、村を見てきてもらうことは出来ませんか?」
「……申し訳ありません。今もまだ手が足りていない状況でして」
受付の人は年端もいかない少女に頭を下げた。
少女はしょぼんと頭をたらしながら、こっちにちらちらと視線を向けてくる。
「村を見てきてもらうというのは?どういうことかお聞きしてもいいですか?」
「はい!この町から南に歩いたところに私が住んでいる村があるんです。二日前に私はたまたま村のものを買い取ってもらうためにここへ来ていたんですけど魔物が現れて、私の村はミーゼルからそんなに遠くないから心配で。皆さん、冒険者さんなんですよね?様子を見てきてくれませんか!」
フィリス様が話を聞くと、少女は待ってましたと言わんばかりの勢いで説明する。
この子、もしかして俺たちをターゲットにして受付に相談に来たのか?わざわざ冒険者のいる受付カウンターに声を掛けてきたことからしてその可能性が高そうだな。……というか、勢いが凄いな。
フィリス様とか優しそうだし、ハロルドさんとか俺は威圧感ないし、クローディアさんも女性だからな。他の冒険者と比べたら話しかけやすいから、こんな感じで声を掛けてきたんだろう。
「いいですよ」
「ほんとですか!!」
少女は目をキラキラさせて体を前のめりにさせる。
こんな状況で村を見てきてほしいなんてお願いを聞くような酔狂な奴がいないことはこの少女も分かっているはずだ。
だからこそ、こんなすんなり了承されたからこんな反応がいいんだろう。元の性格とかもありそうではあるけど。
「でも、何というか……。報酬といえるものは何もなくて……」
目線を少し下げ人差し指同士でつんつんさせて、後ろめたいからか小声だった。
「必要ありませんよ」
「本当に?」
「ええ」
「ありがとうございます!!」
少女は勢いよく頭を下げる。
現金な奴だな、コイツ。
「お嬢様、ダメです」
「……何がダメなのですか?」
「そんな村に行くなんて危険なことをしたら駄目だと言っているんです。あたしの言うことは聞くという約束は覚えていますよね」
今回は許さない、そんな気概がクローディアさんから伝わってくる。
「……ディアは可哀そうだと思わないのですか?この健気な少女を」
「……ダメ、なんですか?」
少女は悲壮感を出しながら瞳をウルウルとさせて、クローディアさんのことを見つめた。
……健気な少女ねぇ。
「うっ……。分かりました、分かりましたよ!その代わり、危険だと思ったらすぐに引いてくださいね!」
クローディアさんの許可、下りちゃったか……。
ここからすぐ近くにある村……。せいぜい自衛団しかない無防備なところだと考えると、もしものことが起きていた場合はかなり厄介なことになっているだろうなぁ。
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